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79 さよなら、マチョリダ
しおりを挟む「そこに、相手への思いやりはありましたか?」
「もちろんです!! 私は、天使様のことを思って……!」
「わたくしのことを思っていただいていたのに、どうして、幼いわたくしの意見を受け入れてくださらなかったのでしょう?」
眉をハの字に押し下げ、瞳を潤ませる。
うわぁ……すげぇ、ルシーファのヤツ、罪悪感をガリガリと搔き立てる迫真の演技じゃねーか!
……迫真の演技、だよ……ね?
横に立ってる俺までもっと早く来てやればよかったな……とか頭によぎるくらいだから、真正面に立つマチョリダはたまったもんじゃ無いだろうな……
マチョリダだけじゃなくて、近くの神官達まで「う……」とか声を詰まらせて冷や汗を流している。
その時、後ろの方から「自分が正しいと言い張るのはアブラタンク殿と同じじゃねーか!」というヤジが飛んだ。
と、同時に、「そうだ、そうだ」の賛同の声が上がる。
「ふざけるなッ!! 私は誰よりも己を律し、真面目に修行に励んで来た!! その私のどこがあの腐敗しきった男と同じなのだ!! 正しいのは私だ!! 私の方だ!! 私の修行で音を上げるような中途半端なヤツは信仰心が足りないのだ!!」
「……では、スゴピカ様の指示でこちらへ赴いたわたくしが『もうやめてほしい』と言ったのは、信仰心が足りないために出た物だとおっしゃるのでしょうか?」
「ッ……!」
ルシーファの静かな問いかけに顔色を失うと、そのまま、膝から崩れ落ちるマチョリダ。
コイツ、自分が強靭な体質なのを棚に上げ、同じ事を他人に強要するからウザがられるんだよ。
しかも、中途半端に理屈が通っている分、タチが悪い。
神官の中には虚弱体質なヤツだっているだろうに。
世の中そんなに、奇麗に白と黒に分かれているはず無いのになー。
「皆さま、勘違いしないでください」
崩れ落ちたマチョリダを後目に、ルシーファは、他の神官たちに向かって言葉を紡ぐ。
「スゴピカ様の教えは確かに書物に記され、神殿に記録されているでしょう。しかし、偉大なる神は常にそこにおわします」
先ほどまでの悲し気な表情から、ふわり、と花がほころぶような笑顔を浮かべた。
と、同時に、全身から、柔らかな光を溢れさせる。
「そして、無限の力を持つということは、神に限りはありません。限りが無いということは、神には外側がありません。なぜなら、限りの無い力は限られた器に入りきらないからです。そのため、わたくし達は、皆、等しく神の内側にあり、皆さま方の中にも等しく神はいらっしゃるのです。故に、お互いを思いやり、尊重しあうということこそが、神を愛するということなのです!」
「「「おおおおおおお……!!」」」
神官達はどよめいているけど、ルシーファのヤツ、ぶっちゃけそろそろ演説をお開きにしたくて、何となくそれっぽい事を言い始めやがったな。
だが、その目論見は大成功らしく「天使様万歳」「勇者様万歳」と、燃え尽きたマチョリダ一派を除いて、はげしく盛り上がっている。
結局、その茶番劇は大成功に終わった。
あの後、すぐにルシーファのヤツはタイムリミットで元のチビ天使にもどったのだが、アブラタンク派は一掃され、マチョリダ派はその考え方を天使様自ら疑問視された、という事実が重くのしかかり、神殿運営の主流派からは外される事となったらしい。
そこそこ中庸な考え方をする中肉中背の地味な神官が、中央神殿の立て直しを図っている。
俺たちは、というと、正式にルシーファを勇者=俺の守護天使と認めさせたことで、自由に連れ出すことが可能になった。
また、聖剣エクスナンタラーとか言う剣を貰った。
俺は使わないので、これはありがたく、ウチのダンジョンの不用品再利用箱にぶち込ませて貰おう。
ん? 勇者としての名声? 責務? ははははは……知るか! そんなもんッ!!
今後数年は、中央神殿になど、絶対近寄らないッ!! 絶対に、だ!
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黒歴史!!
あーーー、もう! 恥ずかしいッ!!
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