好きな人に触ると、その人私の事忘れちゃうんですけど!

七瀬 巳雨

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 そもそも、なぜブライトンに明らか関係の無さそうなエヴァリーとオースティンが入り込めるのかと言うと、正真正銘の入校許可証があるからだ。
 
 
 
 リリアンを始めとした雨漏りの被害にあった部活は、改修工事の間ブライトンに行かなくてはならないと聞いてどよめいた。
 怒る生徒、あからさまに嫌がる生徒、いろいろあったが、冷静な幾人かの生徒は思った。
 
 
 リリアン…––リリアンを、ブライトンに…––?
 
  
 そもそもリリアンの性格は外見とは真反対。その中身を知れば6割型抱いた幻想を吹き飛ばされ、残り4割はその漢前さに更に魅了される。
 根性もあり、向上心も強いリリアンを尊敬している生徒は多かった。
 
 
 
 それを踏まえても、フェンシング部の部長のティムは冷静に考えた…––––
 
 パーベル・アビーではリリアンの周りにいつも…オースティンとエヴァ?エバリン?––が居るので秩序を保てているのに…––––
 もし、ブライトンの連中がリリアンを見て、何か問題が起きたら…––
 乱闘騒ぎどころでは無い––
 
 相手は国内有数の金持ちの子息や令嬢…揉めれば大変な事になるのは火を見るよりも明らかだ…–––
 
 
 
 ティムは機を伺って顧問にこの不安を打ち明けた。
 
 
 意外にも、顧問である初老のケット教授も同じように揉め事を呼ぶのでは無いかと危惧していたので、2人は熟考の末エヴァリーとオースティンが一緒にブライトンに行く様に手配した。
 
 そしてエヴァリーがどう忍び込むかウンウンと唸る間も無く、入校者がエヴァリー手元に舞い降りた訳だ。
 
 
 
 リリアンが使う施設は予め教えて貰っていた。
 
 大きな3階建ての建物…警備を見つけるたびにエヴァリーとオースティンは疑われながらも正真正銘の入校証で突破していく。
 リリアン達が居るのは三階だ。
 
 辿り着いた三階のフロアは、大きなスペースをネットで区切り、他の部活動をする生徒も使用している。
 
 
 
「あーあ…」
 オースティンが声を漏らした先には、人だかりができている。
 だがきゃーとかわーと言うよりも、興味津々で眺めている、そんな感じだ。
 
 勿論、その先には俊敏な動きで足を踏み込むリリアンが居た。
 
 
 
「すいません、フェンシング部です、マネージャーなんで…退いてください」
 エヴァリーが適当なことを言いつつ、人だかりを掻き分ける。こんなやる気のなさそうなマネージャー居ないだろ、とオースティンが小声でエヴァリーを小突いてエヴァリーに続いた。
 
 
 フェンシング部の面々と合流し、エヴァリーとオースティンは床に座り込む。
 
 
 リリアンが動けば、大衆もそれを追う。
 リリアンがマスクを被ればなんだか熱気が引いて、マスクを取ればまたモワモワとした人の熱気が練習場に籠った。
 
 本当は皆リリアンが気になって仕方ない。だが、そんな片鱗をパーベル・アビーに見せるのはブライトンのプライドを傷付ける。
 
 
 
 街でも何処でも偉そうなブライトンが、なんとも言い難い顔でリリアンを見ているのは正直清々しいとエヴァリーは思った。
 
「良かった、リリアン集中してるね」
 エヴァリーが隣に座るオースティンに声を掛けると、オースティンもコクっと頷く。
 
 ずっと見ていてもエヴァリーとしてはなんだか手持ち無沙汰なので、持ってきた恋愛小説を取り出した。
 
 部長のティムからは大人しくしててくれさえいれば何をしても良いと言われたので、エヴァリーはその言葉通り自由にさせていただく。
 
 
 
「……また恋愛もの?」
 オースティンが声をかけても、エヴァリーは視線を小説から離さない。
 
「勿論。私にとったら夢物語、本物の空想だからね。恋愛相談ならいつでも乗るよ、多分誰よりも的確に助言出来る」
 
「…誰よりも分かってないだろ、エヴァは」
 その言葉を最後に聞くと、暫しエヴァリーは空想の世界へ旅立った。
 
 
 
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