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しおりを挟む「知ってたんでしょ?僕の記憶が消えるって……」
悲しげに笑うアイゼイアに、エヴァリーの胸は締め付けらる。
「——……不思議な話で。でも、私が好きな人の側に居るのは良くないって。 思いが通じても、触れ合えないし、記憶が消えた相手の近くにいるにのも、私が魔女に支配されてしまう、とか……そんな前時代の話を、——っ先輩は信じれますか?」
エヴァリーがそう言うと、アイゼイアは呆れたように小さく溜め息を吐く。
「エヴァの話なら、信じたよ……」
「……解決する方法も無かったので––––先輩から離れて、この場所もっ––いろんな場所を転々とするしか無いって……」
「通りでこれだけ街に来てても会わない訳だ……一度すれ違ったよね?僕も卒業しちゃったし。エヴァもこの辺りに居なかったんだね……」
アイゼイアの言葉に、エヴァリーは申し訳無さが込み上げて来る。
幾らアイゼイアとユウリが特別な関係であっても、先輩後輩として記憶を消す了承は取るべきだったのだろうか––と……
「じゃあ記憶が戻ったって事は、もうこうして触れられるね」
アイゼイアはそう言って身を屈めて、エヴァリーを抱き起こそうとした。
「ダメです––っ!」
エヴァリーは両手を前に出して、それを制する。
「なぜ?また記憶が消えるかもって?……それって、まだ僕を好きって事でいい?」
アイゼイアは揶揄うような妖しい笑みを浮かべてエヴァリーの顔を覗き込む。
前髪が、サラッとアイゼイアの目にかかった––––
大学生になったアイゼイアは男性の魅力を遺憾無く発揮している。
エヴァリーは、途端に顔を真っ赤に染めた。
「……もし、そうだとしてもっ……弁えてます–––。先輩には、ユウリ会長がいるって––––」
エヴァリーは、顔を逸らして、片手で自分の顔を隠した。
「会長?ちょっと待って、勘違いして無い?あの人は腐れ縁っていうか小さい頃から家族ぐるみで付き合いがあって……っ周りが盛り上がってただけだ……」
アイゼイアが慌ててそう言うが、エヴァリーは確かに見たのだ。
慰労会の日、夕陽に照らされる教室の中で……––––
「キス、してましたよね?慰労会の日……」
その言葉に、アイゼイアはギョッとする。
「する訳ないよ!自分じゃ目薬がさせないとか言っていつも僕に目薬ささせてたんだよ、あの人!……あんな人使い荒い人ごめんだよ。確かに尊敬してるけどね––……」
じゃああれは……見間違い……?
なんだかいろんな記憶が一気に呼び起こされて、エヴァリーは血の気が引いて行く。
「すみません……てっきり、アイゼイア先輩とユウリ会長は、恋人同士なのかと……」
「とんでもない事してくれたね、僕にちゃんと確かめなかった上に、僕の許可も無く記憶を消すなんて……––––
それで良いと思った?好きだから触れないってだけ言って……でも爪が甘いな、パーベル・アビーのエヴァリー。写真を残すなんて––––」
アイゼイアはそう言って両手を腰に当てる。
「僕は怒ってる、だから早く言ってよ。
もう一度、僕の手を初めて握った時に言った事」
エヴァリーが覆っていた手をずらして、アイゼイアを見ると、アイゼイアはまたイタズラっぽく笑みを溢す。
そして、アイゼイアがエヴァリーの手を握ると勢いよく立ち上がらせて、そのまま抱きしめた。
「先輩……!また消えちゃうかもしれません!」
そう言って離れようとするエヴァリーをアイゼイアは胸の中でキツく抱きしめ続ける。
「ようやく捕まえたんだ。もう少しこうさせて」
アイゼイアがエヴァリーの耳元でそう囁いても、エヴァリーは気が気では無い。
「ダメです!––忘れたら……!」
エヴァリーの目から自然と涙が溢れる。
「忘れてほしくない?大丈夫、忘れて無い……。何度も思い出すよ。だって君が何度も思い出させるから——」
そうくしゃっと笑って、アイゼイアはエヴァリーを見た。
だが段々とまた表情が変わっていく。
幾らエヴァリーがアイゼイアを呼んでも、反応は無く沈黙したままだ。
「先輩…?先輩……?」
エヴァリーは不安に顔を一層歪めた。
それでも、アイゼイアの表情は変わらない。
エヴァリーの目からまた涙が溢れそうになった時、アイゼイアは眉を下げて微笑む。
「——っ初めまして」
「え?––」
アイゼイアは揶揄うようにイタズラっぽく笑う。
「ごめんごめん。でもこのくらいのおふざけは許してよ。僕も君をずっと探してたんだんだから」
アイゼイアはそう言うと、エヴァリーの顔を見つめる。これ以上無いほど、嬉しそうに––。
「久しぶりだね、エヴァリー。会いたかったよ、ずっと。だからお願い、もう一度言って……––––」
アイゼイアはエヴァリーにそう囁く。
エヴァリーは意を決して、少し爪先立ちになる。
真っ赤にした顔を更に赤くして、アイゼイアの耳元に近づいた。
そっと、アイゼイアにしか聞こえない声で––––
いつかも言った言葉を、またアイゼイアに繰り返す––––
アイゼイアはそれを聞くと、満面の笑みを浮かべて、真っ赤になったエヴァリーを、また強く抱きしめた。
「僕もだ、エヴァ——僕も君が大好きだ——」
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