転生伯爵令嬢は2度死ぬ。(さすがに3度目は勘弁してほしい)

七瀬 巳雨

文字の大きさ
25 / 106

叫び ※R15 暴力的な表現が続きます。苦手な方はお控え下さい。

しおりを挟む


 
 

 ああまただ…
 嫌な予感がする。
 
 またここだ。
 
 真夜中で、カーテンからは月明かりが漏れて…
 
 でもなんだか今日は違う。
 本当に眠ってるみたいだ。目は開いてないのに、意識はしっかりしてる。
 
 心臓がバクバクと音を立てて、何かしらの衝撃に耐える様に体を強張らせる。
 
 
 
 なんだこれ…
 下の上にトロリと甘ったるい液体を感じた。
 甘い…甘いけれどどこか…
 
 ゴホっと思わず咽せる。
 
 
 
「なんだ…?アレシアじゃない!?妹の方じゃないか!」
 聞き覚えの無い声がする。
 男の声だ。
 誰?一体何が起きてる?
 
 目がグルグルと回る。気持ちが悪い…
 
 
「クソッ、あの役立たずが」
 声だけが聞こえる。体に力が入らない。
 
 体の上に、覆い被さった人影がある。 霞む目なのに、はっきりと映った。
 まさか、部屋に入り込んだのか?
 
 逃げなければ
 と動かぬ体を何とか動くよう、めちゃくちゃに手足に力を込める。
 
 チッと舌打ちが聞こえた。
 
 すると、顔に人の吐く息がかかった。
 顔を片手で鷲掴みにされる。
 
 月明かりに照らされて、霞みながら揺れる視界でも、その瞳が大きくはっきりと見えた。
 何色なのだろう、瞳の色は分からない。
 
「騒ぐな。騒げば、次はお前の姉だ」
 
 涙が勝手に溢れて止まらない。
 息が止まりそうだ。
 むしろ、止まってくれとさえ願った。
 
 もう片方の手がザイラの夜着に手を掛け、胸元から一気にザイラの肌を晒す。
 
「…醜いな。やはり双子とは種違いなのか」
 
 その手を払おうと、思い切り力を込めたが、その手は男の手を掠めただけだった。
 
 助けて
 誰か助けて
 どうか助けて
 
 まだ反抗するザイラに苛立ったのか、男は両手をザイラの首にかけ力を込める。

 けたたましい金切り声が響き渡る。
 重かった体は軽くなり、すぐさま耳を塞いだ。
 
 解放感を感じて思い切り目を開ける。
 
 静かだ。
 誰かの泣きじゃくる声がはっきり聞こえる。それ以外は聞こえない。
 
 
 見開いた目と鼻の先に泣きじゃくったザイラが居た。
 激しい息遣いが風となって顔に触れる。
 
 
 
「…っあぁ…っお姉様を守ってっ!!!」
 
「あいつをっ!…あの男をっ…殺してっ!!!」
 
 
 力の限り泣き叫ぶ、ザイラの慟哭が耳の鼓膜を震わせて、傷をつける様にしっかり刻み込まれた。
 
 
 やっと、…声が聞けた
 
 ザイラを目の前にして思ったのは、そんな単純なことだった。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん
恋愛
「ヤ。それはちょっと困りますね……。お断りします」  呪いが人々の身近にあるこの世界。  小さな街で呪いを解く『祓い師』の仕事をしているレイラは、今日もコレが日常なのである。嫌な依頼はザックリと断る。……もしくは2倍3倍の料金で。  まだ15歳の彼女はこの街一番と呼ばれる『祓い師』。腕は確かなのでこれでも依頼が途切れる事はなかった。  そんなレイラの元に彼女が住む王国の王家からだと言う貴族が依頼に訪れた。貴族相手にもレイラは通常運転でお断りを入れたのだが……。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...