転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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09.一日目終了

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 副団長。
 そう呼ばれる人がこちらへ近づいてくる。

「もう、相変わらずね二人は」

「「も、申し訳ございません、ヴェルリール副団長!」」

 頭を同時に下げ、同時に謝罪する。
 兄妹らしく息ぴったりな所に少しクスッとなってしまった。

「あら、そちらの方は?」

 今度は俺の方へと話題はシフトする。
 面と向かって見ると物凄く綺麗な瞳をしている。
 まるで宝石のように艶やかで奥深い瞳。
 いざ向けられると、少し緊張してしまうくらいだ。

「俺はゼナリオと言う者です。本日はこちらに見学をさせていただくべくお邪魔させていただきました」

 そんな瞳を見ながらもなんとか冷静に自己紹介を済ませる。

「あ~、そういえばさっき城内にいる巡回兵が見覚えのない不審な輩がいるとかなんとかコソコソ話していたわね。それってもしかして……」
「い、いやそれは……」

 いきなり不審者扱いですか。それもかなり真剣な顔をして。
 まぁ確かに事情知らない人からすれば外部の者が平然と城内をうろついていればそう捉えられてもおかしくはないけど。

「ヴェルリール副団長、お言葉ですがこの方は不審者では……」

 俺が一言言う前にセシアが即座にフォローする。
 だが彼女はそんな俺たちの姿を見て笑いながら、

「冗談よ、じょーだん。話はリーリアから聞いているわ」
「そ、そうでしたか。良かったです……」
「も、もう! 副団長は真剣マジな顔をしてそういうこと言うから心臓に悪いです!」

 確かにあんな険悪なムードを醸し出しながらああいうこと言われたらビクッとしてしまう。
 あの真剣な顔からの落差ある笑顔はギャップの塊ともいえるべきものだった。

(あ~、俺多分この人苦手だわ)

 まだ顔を会わせて数分にも関わらず、そう悟る。

「あ、そういえばまだご挨拶がまだだったわね。私はヴェルリール、バンガード王国直属騎士団の副団長を務めている者よ。よろしくね」
「よろしくお願いします」

 彼女ははめていた白い手袋を外し、手を差し出してくる。
 俺も手を差し出し、ガッチリと握手する。

「じゃあ、私はまだ仕事があるからいくわね。もし入団が決まったらその時は宜しくね、ゼ・ナ・リ・オくん」
「は、はぁ……」

 なんか余計な色気を炸裂させながら去って行った。
 見た目が確かに一級品だけど中身があれで副団長とか大丈夫なのか……?

「ごめんなさいね、ゼナリオさん。副団長はいつもああいうノリなの」
「そうなんですか」
「でも技量は確かですよ。なにせ団の細かな事務作業や裏方作業を全て自分一人でこなしてしまうくらいなんですから」
「それはすごいですね」
 
 やはり人は見かけによらないということがよく分かった。セシアの事も団長であるリーリアのことも。
 どうやらここでは俺の生前時に得た常識とやらは通用しないようだ。

「ではゼナリオさん。次からは再び私が案内をさせていただきますね」
「は、はい」
「しっかりやりなさいよね。私はそろそろ戻るわ」
「分かってるよ。お前こそサボるなよ」
「は、はぁ? おにぃに言われたくないし!」

 まーた始まった。
 だがさすがに今回は長引かずにすぐに終わり、俺たちはセシアと一旦別れて再度ベールに城内を案内してもらうことにする。

「どうでしたか、騎士団見学は」
「とても良い所だなと。それに色々と知ることもできたので」
「左様ですか。それは良かったです」

 ホント、色々知ることが出来た。この騎士団の崩壊寸前の現象、そして圧倒的高齢化による組織の弱体化。
 幹部衆が今の所皆若いという事実から察するに、リーリアが軍部強化のために集めてきた者のみが上層部にいるというところだろうか。
 
 中年兵の人たちの身体の一部には剣で切り裂かれたような傷や鈍器などによる打撃を浴びた傷などが見受けられた。
 恐らく話にあった先の大戦の生き残りだと推測できる。
 
 二時間ちょっとくらいの視察だったが思った以上に地盤がゆるゆるだということが分かった。
 ベールも恐らくそれを理解しているからこそ俺をスカウトしたんだろうな。

(でも、俺は……)

 来世で生きることが許されるなら剣だけに縛られない人生を送りたいと思っていた。
 一度味わいたかったんだ。普通に暮らして、普通に仕事して、普通に遊んで、普通に家族を作ってという普通の人生を。
 
 生まれた瞬間に両親を失い、そのまま軍の養成施設で育てられた俺はその瞬間から軍人として生きることを余儀なくされた。
 まだ物心つく前に銃の扱い方を教わり、剣の扱い方を教わり、魔法の使い方を教わった。
 
 まさに戦争のための人間兵器として英才教育を受けさせられたのだ。だから俺は戦地で戦うこと以外の生き方を良く知らない。
 ある程度の知識は戦友との会話や本で得ることができたものだけ。

 軍の施設の外には戦地に赴く時以外出ることは許されなかったのもあって本当に自由な時間というのはほぼ皆無に等しかった。
 
 おかげで力は得た、誰にも負けない無敗の力を。
 
 でも、それでも俺は――

「どうかしましたかゼナリオさん?」
「えっ? ああいえ、ちょっと考え事を」
「そうですか……何かありましたら遠慮なく言ってくださいね」
「あ、ありがとうございます」
 
 気が付けばもう夕暮れ。今日の見学は一旦これで終了ということになった。
 ちなみに見学期間は五日間ということで話がまとまっている。
 とりあえず五日間この城に滞在し、最終日に結論を出すという寸法だ。

 さすがに一日で全部を見れるほどそう甘くはない。王城の見学もしたいしね。
 というわけで今はベールさんに俺が滞在するための部屋へと案内してもらっている。

 そして考え事をしている内にすぐに部屋の前へと辿り着いた。

「こちらです。滞在期間中はこの部屋を好きに使ってくれて構いません。何かありましたら私か近く巡回兵にお尋ねください」
「こんな豪勢な部屋を借りてしまって大丈夫なんですか?」
「一応来客用に用意したお部屋なのですが、当分ご無沙汰でありまして……何か問題等が?」
「いやいや、むしろ恐れ多いくらいですよ。こんないい部屋を独り占めだなんて」

 まるで王室を思わせるような豪勢な装飾で彩られた室内。生前に住んでいた薄汚い軍用仮設住宅と比べてみるととんでもない差がある。
 仮設住宅と言っても狭い一部屋に数人が泊まるという形式でそんなにたいそうなものではなかった。
 
「では、私はそろそろこの辺で。お食事の際にまたお迎えに上がりますのでそれまでごゆっくりとなさってください」
「何から何までありがとうございます」
「いえ、それが私のお仕事ですから」

 ベールは一礼すると静かに部屋から出ていく。
 
 そして彼がこの部屋の前から去っていくのを確認すると――

「うっひょーーーーー! すっげぇふかふかだ!」

 思わずベッドへとダイブ!
 そのふかふかとした肌触りのキングサイズベッドを縦横無尽に転がりまわる。
 
「やっばいなこれ。まるで天国のようだ」

 こんな子どもようにはしゃいだのは初めて。というのもあまりの快適さに感動が抑えきれなかったからだ。
 
「転生当初は正直戸惑ったけど……」

 生前よりも断然こっちの方が生きていて楽しい。
 こんなこと感情が心の底から湧き上がって来るなんて今までなかった。

「ふぅ……気持ちいい」
 
 そうこうしている間に段々と眠たくなってくる。
 朝から動きっぱなしだしまだこの身体に慣れ切っていないためか疲労の溜まり具合も早かった。

「うっ……もうダメだ」

 前の身体だったら正直一睡もしなくてもバリバリ稼働で来たのに……
 
 だけど今は別。何せ身体は少年だからね。

 そう思いながらも俺は襲い掛かる睡魔に見事負けてしまい、そのまま眠りについてしまったのだった。
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