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24.パーティーとその夜
しおりを挟む「騎士ゼナリオよ。汝に問う。誉れ高きバンガードの騎士として我に忠義を示し、その剣(つるぎ)と共に身を捧げることを誓うか」
「誓います」
「よろしい。では、誓い剣を掲げよ」
アリシアの言葉で腰に差していた真新しい剣を天高くへと突き上げる。
鉄の刃が照明の光を帯び、輝きだす。
こうして、俺は正式にアリシアの騎士となった。
そしてその晩、予定通り歓迎会は始まった。
のだが――
「ゼナリオ殿、これからよろしくたのんまっせ!」
「ゼナリオさん、あの巨王を一人で相手にしたって本当ですか!?」
「リーリア団長とアリシア陛下とはどのようなご関係で?」
「い、いやそれはその……」
叙任式の後に行われた歓迎会で俺は質問攻めに遭っていた。
まぁ、こうなることは予想できた。
なんて言ったってリーリアの一存で全ての騎士試験をパスして団に入団。挙句の果てにはアリシアの願いでまだ子供の身でありながら直属の側近騎士へと一気に大出世を果たしてしまったのだから。
周りの兵たちからすれば不思議でしょうがないだろう。
でもリーリアが言った通り、悪い風には思ってはいないらしい。
むしろ俺に興味を持って接してくれていた。
でも……
(質問をいっぺんに言うのは止めてくれ……)
一つ解答する間に次の質問が降り注いでくる。まるで質問の嵐と言った感じ。
フレンドリーに接してくれるのは嬉しいのだが、正直身が持たない。
(何とかこの状況から脱しなければ……)
「あ、あの……ちょっとトイレに行ってきても……」
「なら自分がご案内いたしましょう!」
「いやいや、自分がゼナリオさんを」
「いやいやいや、自分が――!」
トイレに行くという大義名分を掲げて逃げようとするもさらに悪化。
よく分からない争いが始まりだす。
(な、なんでこうなるんだ……)
俺はその後、数十分間に渡り、逃げられない質問攻めにあったのだった。
♦
「や、やっと解放された……」
ドッと疲れが底から湧き上がってくる。
そしてその疲れを少しでも癒そうと、俺はある場所に来ていた。
「ふぅ、やっぱここから見える景色は格別だな」
ある場所というのは先ほどアリシアに連れてこられた空中庭園のこと。
まだ数時間前に初めて来たばかりの場所だが、結構気に入ってしまった。
特に今の時間は夜景が綺麗だろうと思い、行ってみたら期待通りの絶景が広がっていた。
「疲れを癒すのには最適だな」
そう呟きながら辺りを歩いていると、丁度いい位置にベンチがあるのを見つける。
俺はよいしょとそのベンチに腰をかけ、身体を休める。
「はぁ……なんかこの世界に来てから色んなことに巻き込まれている気がするな……」
まだこっちへ来て一か月も経っていないというのにこの有様。
一国を守る騎士となり、片やその国のお姫様を護衛する側近騎士にまで職を広げた。
生前の人生よりも充実し過ぎていて逆に恐怖を覚えるくらいだ。
「いきなり王女様の騎士か……俺に務まるのだろうか」
ぼーっと、星が輝く夜空を見上げながらそんなことを考えていたその時だった。
「こんなところにいらしたのですね」
突然耳に聞き覚えのある透き通った声が入って来る。
すぐに振り向くとそこにいたのは、
「だ、団長……」
「こんばんは、ゼナリオさん。歓迎会は楽しんでもらえてますか?」
「え、ええ……まぁ」
色々えらいめには遭いましたけど……
「団長はどうしてここへ? それともよくこの空中庭園に来られるとか?」
リーリアに問いを投げかけると、彼女は首を横に振る。
「違いますよ。ゼナリオさんのことを探して城内をまわっていたらここに行きついただけです」
「俺を探してって、まさか何か問題が……?」
「そういうのわけではないです。個人的なお話というやつですよ」
リーリアから個人的なお話……? 一体何の……
少々緊張感を持ちながら、身構えているとリーリアが、
「あ、お隣よろしいですか?」
「へっ? あ、はい。大丈夫です」
俺は急いで右半分を開け、どうぞと手を差し出す。
「失礼致します」
リーリアはコクリと頭を下げると、開けたベンチの右半分に腰を下ろす。
「綺麗ですね。やはりここから見る空と街は絶景です」
「そう、ですね。自分も同感です」
二人で座ってみると意外と狭かった。
俺の右腕とリーリアの左腕が触れ合う。
そして、何より感じたのは……
(め、めっちゃいい匂いがしてくる……)
すごく爽やかなで嫌味のない香り。
彼女の凛々しいイメージにぴったりと言えるくらいの匂いだった。
もっと言うのならば思わず匂いに――
「ゼナリオさん? どうかなされましたか?」
「……ッッ!」
ドクンと俺の心臓が悲鳴を上げ、身体がピクリと動く。
やばい……匂いに浸っているのがバレたか?
完全に油断していて数秒前の記憶がない!
俺は慌てて、
「お気になさらず。な、何でもないっすから!」
「はぁ……なら良いのですが」
どうやら怪しまれてはいないようだった。良かった……
「……ゼナリオさん」
「はい?」
ホッと一息ついていた時、リーリアは真剣な顔を向け、俺の名を呼ぶ。
その表情は紛れもなく、何か重要なこと言ってくる前触れと言った感じだった。
俺はゴクリと唾を飲み込み、何でも受け答えられるよう構える。
そして彼女は話した。
「単刀直入にお聞きいたします。ゼナリオさん、貴方は……もしかして剣聖の血を引いてはいませんか?」
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すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
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