転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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57.企み

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「俺たちの変装を初めから暴いていたってのか?」

 ようやく事の重大さに気づいたレオス。
 さっきからそう言っているのに理解するのが遅過ぎである。

「そういうこと。なぁ、おじさん」
「……ああ、まぁな」

 男はコクリと頷き、静かにそう言った。

「ま、マジかよ。じゃ、じゃあ……」
「おい待て、レオス」
「ぜ、ゼナリオ……?」
「後は俺が話す。お前は黙ってろ」

 レオスが次の言葉を言う前に俺が男に問う。
 相手が自分たちの身分を知っているのであれば、あまり下手なことを話すわけにはいかないからな。

 すまないが、レオスには少し静かにしてもらうことにする。

「わ、分かった……」

 レオスも俺の表情を見て察したのか、一歩後ずさり、黙り始めた。

(悪い、レオス)

 心の中でそう謝罪し、瞬時に気持ちを入れ替える。

「……それで、さっきの続きなんだが、なぜ俺たちを助けたんだ? その様子だと初めて会した時点で気がついていたようだが……」

 眉間にシワを寄せ、少し圧をかけつつそう聞く。
 と、男は表情一つ変えず、

「ああ、気がついていた。どうも見ても挙動不審だったからな。すぐに分かった」
「どう見ても? ……ということはあんたは俺たちが気づく前から存在に……」
「鋭いな坊主、そういうことだ」
「えっ、なに? どゆこと?」

 レオスだけ会話についてこられないのはもうお決まり。
 とりあえず彼が理解できるように一から説明するのは面倒なので、話を続けることに。

「でも、そうと知ったのならなぜあの場で殺らなかったんだ? 貴方には俺たちのような”ねずみ”を生かしておく理由もメリットもないはずだ」

 そう……本来なら俺たちはあの時点で殺されていてもおかしくはなかった。
 家屋にねずみが侵入してくると人はそれを駆除するようにね。

 だがこの男は俺たちを殺すばかりか、わざわざ声をかけてまで俺たちと接触してきた。
 その上、演技であること全て承知の上でこの有様だ。

(何か……企んでいるというのか?)

 もしそうだとすれば考えられることは主に三つ挙げられる。
 
 一つ目は俺たちを捕虜として捉え、尋問するなりして軍の情報を暴かせようとしているか。
 二つ目はそれ以外の方法で情報を得るべくわざと生かさせておいているか。
 
 そして三つ目は単なるこの男の独断専行なのか。

(まぁ普通に考えて三つ目の可能性は限りなく低いだろうが……)

 まさか意味もなくこの状況を作ったわけでもあるまい。
 わざわざ敵国の兵士に食糧まで与えたんだ。

 何かあるに違いない。

「何を企んでいるんだって目つきだな坊主よ」
「当然だ。食を与えてもらっといてあれだが、俺はあんたのことを信用していない」

 少し声を低くし、ドストレート発言を飛ばして相手を威嚇。
 と、同時にいつでも戦闘態勢に入れるように少し腰を上げて身構える。

「まぁ無理もない。俺たちは敵同士、予想はできていた」
「なら何故俺たちをここへ連れてきた? あんたは一体何を考えている」
「……」

 男は黙り始める。
 それも決して目を合わせず、ただ下を向き、何かを考えている様子だった。

 俺もレオスも何も話さず、ただじっと男の方を見つめて時間を消費していく。

 そして数分経った時だ。
 ようやく無の時間は終焉を迎え、男の口が小さく開き出した。

「……信じるも信じないのもお前たちの勝手だが、俺はお前たち二人を殺す意思はない、むしろその逆だ」
「逆だと? それはどういうことだ?」

 身を乗り出し、威嚇する姿勢は変えることなく男に迫る。
 すると今度はしっかりを目線を合わせ、俺たちにこう言い放った。

「言葉通りだ。俺は……お前たちをつもりでここへ連れてきたんだ」
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