無能と蔑まれし魔術師、ホワイトパーティで最強を目指す

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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1巻

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 序章 ブラックパーティ


「はぁ~。ホント、なんであんたはいつもそうなの!?」

 依頼を終え、ギルドへ帰ってきた途端とたんおれ、マルクは罵倒ばとうされた。
 相手は俺が所属する冒険者パーティ【黒鉄闇夜ブラリオン・ダークネス】のリーダーであり、幼馴染おさななじみのリナだ。

「なんで怒っているんだよ。今日はお前の言う通りにしたはずだが?」
「してないわよ! なんであんな低レベルのザコモンスターごときに手間取ったの? 有利属性まで教えてあげたのに。あんたがモタモタしていたおかげで、せっかくの獲物えものを取り逃がしちゃったじゃないの!」

 リナが怒っている原因は、依頼中の俺の行動にあったらしい。
 俺たちパーティは、とある大型モンスターの調査依頼を受けていた。
 調査自体は無事に終了したのだが、その大型モンスターを取り逃がしたため、リナは怒っているようだった。
 彼女いわく、その理由というのは、俺が一匹の中型モンスターに時間をかけていたせいだとか。

「無茶言うなよ。お前にとっては低レベルかもしれないけど、俺にとってはそこそこの相手なんだよ。それに、そこまで言うんだったら先にモンスターを追っていれば良かっただろ」
「は? なに? この私に口答えするの? リーダーに口答えするだなんて、随分と偉くなったものね、マルク」

 出た、毎度お決まりのセリフ。
 自分にとって都合が悪くなると、百パーセントの確率で飛び出す言葉だ。
 何度聞いたか分からないこの言葉に、俺は怒りを通り越してあきれてしまった。

「はいはい。すみませんね、リーダーさん」

 相手にするのも面倒なので適当に謝っておいた。
 これ以上下手なことを言えば、リアルファイトになりかねないからな。パーティ設立から二年間、こうして乗り切ってきたわけだし。
 そもそもの話、今回の依頼内容はあくまで調査であって討伐ではない。大型モンスターの情報さえつかめれば良かったのだ。だから取り逃がしたって何の問題もないんだが……

「全く……せっかく私の知名度を更に上げるチャンスだったのに。ゴミ虫のせいで予定が狂ったわ」

 クセっ毛赤髪を揺らしながら、いつものように吐かれる暴言。
 そしてリナは共に戦った他のメンバーをねぎらうこともなく、報酬金を受け取りにスタスタと受付の方へ向かう。
 聞こえるように言っているのはわざとなのかそうでないのか知らんが、心からの言葉なのだろう。
 この女の頭には、自分が有名になることしかない。
 実際のところ、リナは昔から魔法の才能があった。
 今では上位魔術師ウィザードという魔法職では上位の職業で、パーティランクも上から二番目のAランクと、平凡な冒険者からしたらだれもがあこがれる華々しいキャリアを歩んでいた。
 ちなみに、ランクというのはギルドに所属するパーティや冒険者の格を示す、ギルドから与えられるものだ。最上位はSで、その下はA、B、C……と続いていく。
 Aランクというのはそうそう到達できるものではなく、容姿端麗ようしたんれいで何でもそつなくこなす彼女は、本性を知らない人からすれば羨望せんぼうの的だ。
 まさに、非の打ち所がない完璧かんぺき超人ちょうじんとして君臨していた。
 俺みたいな下位魔術師ボトムキャスターとは天と地ほどの差だ。
 だが、彼女が完璧なのはあくまで外の部分だけ。中身はやたらとプライドの高いただのパワハラ女だった。
 おかげで今まで俺を含み、どれだけの人間が被害にあってきたことか。
 最初は三十人近くいたパーティメンバーも、今や十人以下。しかもそのメンバーの一部は、陰で俺がリナの代わりに土下座をしまくって、なんとか留まってもらった人たちなのだ。
 もちろん、土下座しても去っていったメンバーは山ほどいる。
 そしてその一部のメンバー以外は、新規に入ってきたメンバーだ。
 新規の人は大丈夫なのか? と思うかもしれないが、流石さすがのリナもパーティが過疎化かそかしていくのは把握はあくしており、新規で入ってきたメンバーには優しくしていた。
 だから、リナの本性を知るのは、俺を含めた本当に一部のメンバーだけ。
 そして鬱憤晴うっぷんばらしのサンドバックになるのも、その俺たち――というのが、今のパーティの裏事情だ。
 何も言わなければ憧れの存在であるリナに近づこうと、パーティには必然的に人が集まってくる。
 ぶっちゃけ、俺たちのパーティが有名なのは、リナの存在があるからである。

「くそっ、俺の努力も知らずに調子に乗りやがって……」

 彼女の耳に届かないであろうことを確認してから、俺はそう陰口かげぐちたたく。
 俺は依頼以外の部分でも、パーティのために貢献こうけんしてきたつもりだ。誇れることではないが、土下座の回数なら自分でも覚えてないくらいである。
 もちろん、好きでやっていたわけじゃない。パーティ存続のためだ。
 この二年間、理不尽極まりない暴君のせいでパーティがつぶれないよう、プライドを捨ててまで俺は土下座に徹していた。
 彼女を……リナを見捨てないでほしいと。
 なんでそこまでするのかと誰もが思うだろうが、理由があった。
 それは幼馴染として……というのもあるが、一番の理由は可能性を信じていたからだ。
 いつかリナが、昔のような優しい女の子に戻ってくれるかもしれないと。
 かつてのリナは、あんな横暴な性格ではなかった。
 男勝りなところはあったが、優しくて気配りができる子だったのだ。
 だがいつからか、突然豹変ひょうへんした。
 身に付けてはいけないパワハラスキルを次々と手にして、現在のようなパワハラモンスターに至ったというわけだ。
 それでも、俺は我慢し続けていた。
 いつか、昔のようなリナに戻ってくれる日が来ると……そう信じていたから。
 だが、それは幻想にすぎなかったと認識する出来事が起こる。


 その日の夜。
 家のソファでくつろいでいると、突然リナから呼び出しがあった。
 部屋の窓の隙間すきまに、手紙が刺さっていたのだ。おそらく、リナが魔法で飛ばしてきたのだろう。
 内容は、今すぐ酒場まで来いとのこと。
 既に入浴も済ませて、さぁ休もう! って時だってのに……あの暴君にとってそんなことは関係ないのだろう。
 前にも何度か、こういったことはあった。
 それどころか、酷い時には深夜に寝ているところを叩き起こされたこともある。
 正直、死ぬほど行きたくないのだが、呼び出されたからには行かないといけない。
 でないと、後で色々と面倒なことになるからだ。俺がなじられるだけならいいが、他のパーティメンバーがリナからの八つ当たりを受けることもあった。
 だから俺に拒否権なんてものはなかった。

「あ、マルくん。これからお出かけ?」
「はい。少し酒場へ行ってきます」

 玄関を出ようとしたところで、カレアおばさんが声をかけてきた。
 カレアおばさんは、俺が住むこの家の主で、親代わりとも言える存在。
 十三年前、両親が未知の感染症でこの世を去った後、俺を引き取ってくれた唯一の家族だ。

「あら、そうなの。もうお外は真っ暗だから気を付けて行くんだよ~」
「ありがとうございます。できるだけ早く帰ってくるようにします」

 俺は既に寝間着姿になっていたおばさんに一言告げると、夜の街に繰り出したのだった。


「遅い! いつまで私を待たせる気よ!」

 酒場の扉を開けるやいなや、早速怒号どごうが飛んでくる。
 まだ呼ばれてから十五分くらいしか経っていないのに、遅いとはあんまりだ。
 いきなり呼ばれた身にもなれと言いたいが、更にだるいことになるのでここはグッとこらえる。

「悪い、リナ。それで、俺をこんなところに呼んだ理由は?」
「理由? そんなもん決まってるでしょ? 飲みに付き合ってもらうのよ。もちろん、あんたのおごりね」
「はぁ?」

 いきなり呼び出しておいて、飲み代を奢れとか。
 何を言っているんだ、こいつは。
 報酬金のほとんどをリナこいつがかっさらっていくせいで、ただでさえ財力に乏しいというのに。

「そんなもん自分で払えよ。俺のふところに余裕がないことくらい知ってるだろ」
「は? なにその態度。あんた、今日のことまだ反省してないわけ?」

 今日のこと? ああ、あのよく分からない理不尽説教のことか。
 ぶっちゃけ俺としては、自分が悪いとは微塵みじんも思っていないのだけれど。

「今日のこと、まだ根に持っているのか?」
「当然よ。だからこそ、あんたを呼んだんじゃない。びを入れてもらうためにね」

 それで、飲み代を奢れってことか……なんて傲慢ごうまんな女なんだ。
 別に俺は、人に何かを奢ることそのものに対して、忌避感きひかんを抱いている訳ではない。
 ただ単に、奢る理由がない相手に奢りたくないだけだ。
 リナみたいに自分中心に世界が回っていると思っている奴のために金を使うのは、正直なところ、ドブに捨てるのと同等の行為だと思っている。
 少ないお金をそんなことに使うのなら、生活費やカレアおばさんへの親孝行に全て費やしたい。

「お前は金なら腐るほど持っているだろ? たまに飯を奢ってもらったりしているしさ」

 こいつには、美貌びぼうというこの上ない武器がある。
 黙っていれば何もせずとも、おバカな男が勝手に近寄ってきて、みついでくれるのだ。

「ええ、お金ならいっぱい持っているわ。色々な人が私に投資してくれるもの。でも、それは無限じゃない。私はその辺のバカとは違って、無駄むだなお金は使わない主義なの。常に先を見据みすえて生きているのよ」

 その『先を見据えて生きている』を実現するために、どれだけの犠牲ぎせいが出ていることやら。
 騒ぎにならないってことは上手い具合にやっているんだろうけど。

「ということで、今日はあんたの奢りね。もちろん、拒否権はないわ」

 リナはそう言いながら、ジョッキ片手にゴクゴクと酒を飲む。
 かたわらにはもう既に、空のジョッキが数個置かれていた。
 それを見て呆れていると、リナがいらついた調子で話しかけてくる。

「ねぇ、あんた。いつまでそこに立っているつもりなの? 他の人に迷惑だから早く座ったら?」
「……ッ!」

 他の人に迷惑だとか、こいつにだけは言われたくない言葉をかけられ、思わず顔に出てしまいそうになる。
 ……が、ここは我慢して「悪い」とだけ言って静かに着席した。
 リナはその途端に、さっきまで以上の調子で、グイグイと酒を体内に流し込んでいく。
 容赦ようしゃなど全くなかった。
 人の金で飲む酒はさぞ美味いんだろうな。
 ちなみに俺は酒なんて飲める気分じゃなかったので、水しか飲んでいない。
 だがリナはそんなことなど気にも留めずに酒を飲み続ける。

「はぁ~ホント、うちのパーティは無能ばかりで困るわ。ま、私が有名になるためのコマに過ぎないからいいんだけど」

 流石に勢いよく飲みすぎたのか軽く酔ってきたようで、そんな罵詈雑言ばりぞうごん躊躇ちゅうちょなく放たれた。
 目の前に俺が――そのパーティメンバーの一人がいるっていうのに。
 突っ込むと余計に面倒なことになるので黙っていると、リナは更に言葉を続けた。

「あんたもあんたで無能の極みだし。幼馴染のよしみとして特別に可愛がってあげてはいるものの、情けなくて涙が出てくるわ」

 俺も情けなくて涙が出てくるよ。パーティの現状も何も知らないお前に。
 内心ため息をついていたら、リナの口からとんでもない言葉が飛び出した。

「天国のご両親もさぞ悲しんでいるでしょうね。おじさんとおばさんはすっごい魔法の才能があったのに、実の息子は才能のさの字もない有様ありさま。親代わりのカレアおばさんもよく引き取るなんて選択をしたものよ。私から言わせたら、バカげた選択ね」
「……なっ!」

 この瞬間しゅんかん
 俺の中にあった何かの糸がプツンと切れるのを感じた。
 別に俺だけならいい。
 でも俺を産んでくれた両親やカレアおばさんをバカにするのは……許せない。
 絶対にだ。

「まぁ~、有能な私には関係ない話だけどねぇ~」

 リナは余裕綽々よゆうしゃくしゃくの笑みを浮かべながら、再び酒を飲み始める。
 だが俺の怒りは、ほぼ頂点に達していた。

「……ゴミ女が」
「……は?」

 つい口走ってしまった一言に、リナがこちらを見る。
 二年間耐え続けてきたストレスが、ここに来て言葉として表れてしまった瞬間だった。
 でも今の俺には、そんなことなどどうでもよかった。

「黙っていればいい気になりやがって。あまり調子に乗るなよ、おい」

 俺がそう言うと、リナは眉根まゆねを寄せた。

「は? あんた今、誰に向かって言っていると思っているの? これ以上、生意気なこと言ったら……パーティから追い出すわよ」

 この一言で俺の怒りは爆発。
 速攻で返答した。

「あ、そ。じゃあもういいわ」

 逆に、リナのこの一言が俺の救いにもなった。
 何故なら……
 今まで何度も考えてきたこと。
 その決意を固めることができたからだ。
 俺はスッと立ち上がると、お金をテーブルの上に置く。

「お前とは今日限りで絶縁だ。俺はパーティを抜けさせてもらう」
「は、はぁ……? あんた、なに言って……」
「じゃあな」

 俺はリナの言い分も聞かず、その場から立ち去ろうとする。
 が、突然の俺の行動に流石のリナも焦り出したようで、その場で立ち上がった。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「はい? まだ何か御用ごようで?」
「ほ、本気なの? パーティを抜けるって……」
「本気ですけど? それがなにか?」
「な、なんでよ! 確かにさっきはああ言ったけど……」

 振り返って淡々たんたんと喋る俺に、リナの焦りは高まっていく様子だ。
 だが俺は容赦なく、自分の言葉をぶつけた。

「でも俺は無能の極みなんだろ? そんなやつがパーティにいてもお荷物になるから、抜けた方がお前の負担にならないし、パーティのためにもなると思うんだ。どうだ、いい案だろ?」
「そ、それは……」

 よどみ、否定はしないということは、つまりそういうこと。
 俺は再びリナに背を向ける。

「ってことで、今日限りで俺はパーティを抜けます。今までお世話になりました。あばよ!」
「あばよってちょっ……! マルク! 待ちなさいよ、マルク!」

 何度も呼び掛けてくるリナ。
 そんな叫びが酒場内に響く中、俺は一度も振り返らず、颯爽さっそうと酒場を去った。
 こうして、俺はリナのパーティから――【黒鉄闇夜ブラリオン・ダークネス】から抜けることになった。
 そして同時に、心に誓った。
 いつかこの女を超えるほどの力を手にしてやると。




 第一章 人生の転換


 次の日の早朝。
 俺は清々すがすがしい気分と共に目が覚めた。
 昨晩あの後、俺はすぐにギルドに行って、パーティ脱退の手続きをした。
 受付の人には驚かれたが、何があったかを話すのも面倒なので適当な理由をつけておいた。
 これで正真正銘しょうしんしょうめい、俺はパーティを抜けたってわけだ。

「なんか今日は朝からいい気分だな……」

 今日からもうあのパーティに顔を出さなくていいと思うと、心も身体も楽になる。
 何せあのパーティでは、ありえないくらい朝が早いからな。
 もちろん、それもリーダーであるリナの意向だ。
 あいつはなぜか異様に朝に強かったから、俺たちパーティメンバーは、朝っぱらから振り回されるのが日常だった。

「メンバー……か」

 ふと思い出す、パーティメンバーのこと。
 実を言うと昨日から、一つだけ心残りなことがあった。
 そう、俺の土下座で渋々しぶしぶ残ってくれていたメンバーのことだ。
 当の俺がパーティを抜けてしまった結果、彼らを残すことになってしまった。
 勢いで決めてしまったから、俺が抜けたのは誰も知らないはず。

「今日中に言っておかないとな。下手したら、トラブルになりかねないし」

 今日やるべきことが一つ増えた。
 俺が顔を洗い、着替えてダイニングルームに行くと、カレアおばさんは朝食を作っていた。

「おはようございます」
「あ、マルくん。おはよう~」

 俺も隣に立ち、朝食作りの手伝いをする。
 俺にとってはこれがいつもの日常だ。
 二人で一緒に朝食を作って食べてから、カレアおばさんは家事を始め、俺はギルドに行く。
 朝のルーティーンはこんな感じ。
 でも今日から、そのルーティーンは大きく変わる。
 毎日ギルドに行くということがなくなるからだ。
 あ、ちなみにパーティは抜けたが、冒険者を辞める気はさらさらない。毎日ギルドに行くのは、それがパーティのルールだったからというだけである。
 これからどうしようかということについては、昨日の夜からずっと考えている。
 一人で冒険者をするという選択肢もあるが……
 そもそも、パーティクエストの方が報酬金は高く設定されている。
 それになんだかんだ言って、俺が入っていたパーティは世間様から見れば有名パーティの部類だったからな。受けられるクエストもそれなりに大きいものばかりで、報酬金も普通の依頼とは比べ物にならないくらい。
 ほとんどがリナの懐に入っていったが、それでも生活費はそれなりに稼げていた。
 したがって普通に冒険者、しかも一人で活動するとなると、稼ぎはだいぶ減ることになる。
 それに、今後のことを考えるなら、忘れてはならないこともある。
 俺にはもう一つ夢が増えたのだ。
 あの女を……リナを超える存在になるって夢が。
 本来なら、これまで過ごしてきたこの街――ブルームを離れて、辺境の街にでも行って、細々と稼ぎながら武者修行でもしてきたいくらいだ。
 でも、ここにはカレアおばさんがいる。
 自分勝手な考えで彼女を一人にするのは、流石に今までの恩に背くような気がしてならない。

「はぁ……」
「あら、マルくん。朝からため息なんて珍しいわね。何かあったの?」
「まぁ……色々とありまして」
「悩めるお年頃ってやつね。私も若い頃はいっぱい悩んだわ」

 そういえば、カレアおばさんも昔は冒険者だったらしい。
 うちの両親が率いるパーティの参謀さんぼう的な役割だったとか何とか。
 両親の冒険者としての役職は、二人とも魔術師。
 しかも当時では数少ないSランク冒険者という、冒険者カーストでは最上位の立場にあり、それはもう、とてつもないほどの強さを持った夫婦だったらしい。
 だがある日、両親はなぞの感染症にかかった。
 どの医者にてもらっても原因は不明で、結局は死を待つのみという悲しい現実を突きつけられたという。
 それは俺がまだ五歳の頃だった。
 両親が他界した後、二人と一番親しい間柄だったカレアおばさんが俺を引き取ることになった。
 カレアおばさんもちょうどその時に夫を亡くし、未亡人となっていた。
 にもかかわらず、俺を引き取り、女手一つでここまで育ててくれた。
 ホント、感謝してもしきれない。
 今は生活費を稼いだり、家事を手伝ったりと少しずつ恩返しをしているが、まだまだ足りないと思っている。
 だから、気軽に遠い街に行くなんて言えないのだ。

「相当、深刻なこと? よければおばさん、相談に乗るよ?」

 俺があまりに深刻そうな顔をしていたのか、カレアおばさんが心配そうにこっちを見てくる。

「いえ、大丈夫です。すみません」
「何かあったら言ってね? おばさん、力になるから!」
「はい、ありがとうございます」

 産んでくれた両親は亡くなってしまったが、カレアおばさんのことは本当の親と呼べるほど信頼を寄せている。
 こう言うのも恥ずかしいけど、俺にとっては最高のお母さんだ。


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