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2巻
2-2
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俺たちはその場を出発すると、順調に森の奥、第二調査区域に向かって進んでいた。
「なぁ、マルク」
「どうした?」
道中、カイザーがちょいちょいと俺を手招きしてくる。
「さっきからずっと気になっていたんだがよ、後ろの二人組、さっきから一言も会話してなくないか?」
チラッと後ろを横目で見ながらカイザーがそう耳打ちしてきた。
後ろの二人組というのは、俺たちのすぐ後方を歩くローブ姿の冒険者のことだ。
「確かに話しているような素振りはなかったな」
ずっと無言だったので気になってはいた。
その上二人ともローブを着てフードを被っているから、素顔すら分からない。
「怪しいよな~、しかもあの二人組で一つのパーティなんだぜ」
「余程の実力者なんじゃないのか?」
分からんけど……
「余程どころか、あの二人はギルドに勇者級と認められている冒険者たちだよ」
そんな会話をしていると、エリーがそっと俺たちに教えてくれた。
「ゆ、勇者級!? マジですか!?」
「お、おい声が大きい!」
驚くカイザーを必死に止める。
さっきもそうだけど声が大きいんだ、お前は……叫びたい気持ちは分かるけども。
「本当なのか? あの二人組が?」
「うん。でなければ、たった二人に班の最後尾を任せたりしないよ」
よくよく考えてみれば、エリーの言う通りだ。
今回みたいに複数のパーティで行動する場合、突然の奇襲などに備えるため、その最後尾には必ず実力のある冒険者を配置することになっている。
特にこういった重要任務では決まりと言っても過言ではない。
俺も前のパーティで何度か経験しているから、そのことは知っていた。
そう考えると、彼らが勇者級とまで言われる猛者だというのも納得だ。
どうりで異様な貫禄があるわけだな……
「わたしたちの班だけ少人数での調査になったのも、彼らがいるからよ。厳密には要望があったみたい」
「要望?」
「そ。少数精鋭で調査をしたいって申し出を、あらかじめギルドにしていたらしいよ」
「だからか……」
エリーの言う通り、二つに分けられた調査団のうち、西班は五パーティで編制されているところ、俺たち東班は【黄昏の使徒】と【聖光白夜】、そしてあの二人組の三パーティでの編制だった。
初めは疑問に思っていたんだが、今の話を聞けば納得がいく。
「ちなみになんていうパーティ名なんだ?」
「それがわたしも知らないの。誰も知らないし、名前がないんじゃないかって言われてるわ」
「パーティ名がないって、そんなことあり得るんですか?」
「ええ、カイザーくん。本来ならばパーティ設立と一緒に名前も決めないといけないんだけど、特例でそうなっていてもおかしくないわ」
確かに勇者級パーティなら特例扱いされているってのはおかしな話ではない。実際、待遇面は普通の冒険者の比にならないらしい。
でも、名前がないっていうのはさすがにどうなんだろうか。
「ま、何でもいいや。どちらにせよ周りは猛者だらけなんだ。今回は楽できるな、マルクよ」
「カイザー、お前なぁ……」
周りが強者ばかりだから、全否定はしないけど。
「さっきまで弱音を吐いてた人間のセリフじゃないな」
「さっきはさっき。今は今だ」
相変わらず、調子の良い奴だ。
切り替えが早いという点ではいいのかもしれないけど。
「周りが強かろうが、俺たちもやれることはしないと。楽してたら俺が怒るからな」
今回も【聖光白夜】の代表メンバーとして調査に来ているのだ。
そのことを考えて行動しないとエリーや他のメンバーの顔に泥を塗ることになる。それだけは絶対にダメだ。
「冗談だって! 俺もモテるために更に成長しないとだからな!」
はははっと笑い飛ばすカイザー。
動機は相変わらずだな。むしろ平常運転で安心するよ。
「マルクも楽すんじゃねぇぞ~」
「しないから!」
少なくとも何らかの役割は絶対にこなす。依頼が終わるまで一瞬たりとも気を抜くつもりはない。
復帰戦だからとかいう言い訳もしたくないしな。
「……段々不気味になってきたな」
第二調査区域の近くまで来た。
森というのは不思議なもので、進むにつれて暗くなってくる。まだ午前中だというのに、まるで夕暮れのような暗さだ。
「お、ビビっているのか?」
「そ、そんなことないわい! ルーキーじゃあるまいし」
俺のからかいに、カイザーは動揺しつつ否定する。
冗談のつもりだったんだが、割とマジでビビっているのでは?
「結構深いところまで来たな」
時間的にそろそろ目的地付近につく頃合いだ。
「皆、一度ここで止まってくれ」
先頭を行くエルガさんから指示が飛んできた。
そしてエルガさんは俺たちの方を向くと、静かに口を開いた。
「ここから先が第二調査区域になる。皆、気をつけて進むように。突然の出来事にも対処できるよう、武器の装備は今の内にしておけ!」
エルガさんの指示に、俺たちは頷く。
「それと、これは当然なのだが、ここはもう森の深部だ。一度はぐれると面倒なことになるから、できる限りパーティごとに固まって動け。もしはぐれた場合は、各自渡しておいた魔法指針を頼りにしろ。共鳴魔法の類は途中で使えなくなる可能性が高いからな」
エルガさんは一人一人の顔に目を配る。
共鳴魔法とは、遠隔での意思疎通が可能となる魔法のことだ。空気中の魔力を伝って情報をやり取りするのだが、空気中の魔力濃度が高いと、上手く繋がらなくなる。
前回は高濃度の魔力によって共鳴魔法が阻害されたのだが、それと同じ状況が起きると予想しているのだろう。
注意事項を聞いたところで、俺たちは更に先へと進む。
進むにつれて、覚えのある感覚が肌に感じられるようになってきた。
「段々と魔力濃度が高くなってきているな」
「そうなのか?」
「うん。前回もすごかったけど、今回は桁違いだね」
俺の言葉にカイザーが首を傾げていると、エリーも頷いていた。
エリーも同様に不快感を抱いたみたいだ。
俺も前までは分からなかったけど、前回の一件から少しだけ魔力濃度を身体で感じることができるようになっていた。
しかし、今回は本当に凄いな。エリーの言う通り、前回の比じゃない。
「なんか相棒が遠くに行っちゃった気分だぜ」
「え、なんで?」
「別にぃ~」
理由は分からないが、なぜかカイザーがむっとしている。
あ、もしかして……
「自分だけ分からないことに嫉妬しているとか?」
「ち、違うわアホ! 俺は物理職だから魔力濃度? なんてもん分からなくて当然だし!」
ああ、やっぱりか……分かりやすいな、相棒よ。
「んっ、この感じは……」
突然エリーが歩みを止めると、周りの人たちも同時に足を止めた。
俺もすぐに異変を感じ取った。
それは、明らかな殺気だった。
それも隠すつもりも一切なしの明確な殺意だ。
「魔物の臭いだな」
「ああ……」
カイザーも戦士の勘が働いたようで、既に剣を抜き構えていた。
その直後、先頭を行くエルガさんから指示が飛んでくる。
「全員、戦闘準備! お客さんのお出ましだぞ!」
その掛け声で、他の冒険者たちも瞬時に臨戦態勢を取る。
数秒後、前方から複数の魔物が姿を現した。
「来るぞぉっ!」
魔物たちの目は紅く輝いている。前回の調査の時と同じだ。
とはいえ、こっちは精鋭たちで結成された部隊。魔物ごときに遅れをとるはずもなく、前方部隊が敵集団を蹂躙していく。
先頭を行くエルガさんの活躍も目覚ましい。
「おぅ、あのおっさんやるなぁ……」
カイザーの言う通り、確かにあれが商人というにはパワフルすぎる気もするな。
「マルくん!」
「ああ、こっちも来たようだな……」
前方部隊が戦っている中で更なる殺気を感じ取る。
今度は背後からだ。
「流石に前方からしか仕掛けてこないなんてことはなかったか」
魔物も人族ほどではないが、多少の知恵はあるからな。
「横にもいるな……」
チャンスを窺っているのだろうか? 向こうもすごく慎重なようで、顔は見せているが、すぐに飛び出してくることはない。
「みんな、陣形を崩さないで。円陣で対抗するよ!」
エリーの指示でメンバーが動く。
だが次の瞬間だった。
側面にいた魔物たちが次々と倒れていく。
まさに刹那の速さと言っていいだろう。
音も立てることなく、ひっそりと……血しぶきが舞い、気付けば魔物たちは掃討されていた。
「な、なんだ。どうなって……」
「あの二人ね」
「あの……?」
俺が困惑していると、エリーが視線で示す。
その先には二人の人物がいた。例の勇者級の二人組だ。
「まさか今の攻撃って……」
「影術の一種だね。自らを影に変化させ、奇襲する技だよ」
影術か……どうりで視認できなかったわけだ。
しばらく見ていたが、二人の実力は噂通りだった。
魔物たちは俺たちに攻撃することなく、撃滅されていく。
「これはあの二人の動きに合わせましょうか」
エリーは振り返ると、メンバー全員に指示を出した。
「みんな陣形を解除! あの二人に続いて魔物を討伐するよ!」
作戦変更、勇者組の開いた道に沿うように、俺たちも魔物討伐を開始するのだった。
◆ ◆ ◆
マルクたちが奮闘している中、西側から調査に当たっていた冒険者たちも魔物と接敵していた。
「陣形を緩めるな! 常に二人一組の状況で対処するんだ!」
そう言うのは西班の案内役、【餓狼の民】のリーダーのシンだ。
彼もまたSランクパーティを率いる実力者である。
「シン殿! こっちは片付きました!」
「それなら後方支援に回ってくれ。数が足りてないみたいだ」
「了解です!」
こちらも魔物の数は相当なもので、ただでさえ人数が多いため戦場が広くなる。
そのため、二人一組の状況を作って魔物の対処に当たらせていた。
「異常発生とはいってもここまでなんてねっ……!」
剣を振りながら魔物たちを蹂躙していくシン。
一振りするごとに他の冒険者からも驚嘆の声が上がっていた。
「流石はシン殿だ」
「俺たちもシン殿に続くぞ!」
グループの士気は上々。それに比例するように倒れた魔物の数が増えていく。
「流石はシン殿。『餓狼の剣聖』の名は伊達ではないということですな」
そんな戦いの中、同じように魔物を撃退しながらシンに近寄ってくる者がいた。
同じくSランクパーティ【烈火迅雷】のリーダー、ゼファイド。まだ若いシンとは違い初老の男で、経験の豊富さが感じられる。
「ゼファイドさんこそ、素晴らしい采配です。手薄になっていたところをピンポイントに補強してくれたおかげで討伐が一段と楽になりました」
「それが私の役目ですからな。ほっほっほ」
彼もまた、実力者の一人だった。
今回は主にシンと同じく、指揮官的な立場を担っている。
「後方はどうなってますか?」
「鎮静化しつつあります。魔物の勢いも収まってきているみたいですな」
「なら一気に――!」
シンが喋りかけた、その時だった。
突然後方から、爆発音が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
「私が行きましょう。シン殿はここで」
ゼファイドが様子を見に行く。
そしてしばらく経った後、ゼファイドから共鳴魔法が送られてきた。
『シン殿! 緊急事態だ。遂にヤツが現れた!』
少し震えたような声だった。
経験豊富なゼファイドのその反応に、シンは異常を察する。
「すまない。少しの間、ここの指揮を頼んでもいいかな?」
「は、はい! お任せを!」
シンはメンバーにその場の仕切りを託し、すぐに後方へと走るのだった。
◆ ◆ ◆
「とりあえず終わったか」
一時間ほど経っただろうか。魔物の猛攻を凌いだ俺たちは、しばしの休憩に入っていた。
「やっぱり人数が多いと、討伐もスムーズだな」
「ま、元々強いメンツにあんなバケモノ二人を加えれば敵なしだよな」
カイザーはそう言いながら、勇者級パーティの二人組を見る。
「あれは異次元だな」
「ああ。しかもさっきから座りもしてないぞ。疲れ知らずか?」
例の二人組は木の陰でひっそりと佇んでいる。
誰かと話す素振りもなく、他の冒険者もその圧で誰も近づくことはなかった。
「でもなんか寂しい感じだよな。孤高の戦士的な」
「単に関わり合いを好まないんじゃないか?」
そういう人は一定数いるだろうし。
「ちょっと俺、話しかけてこようかな?」
「やめとけ。下手すれば首を落とされるかもしれんぞ」
空気感的に何となく分かる。多分、あの二人は人と関わることをあまり良しとしていない。
俺も学生の時は似たような感じだったし……ボッチの勘がそう言っているのだ。
「おい、マルク。お前、今悲しい過去を思い出していたろ?」
「なぜそう思う?」
「背中からどことなく哀愁が漂っていたからな!」
そんなにか? 確かに良い思い出ではないけど。
「お前は冒険者をやめて占い師にでもなった方が稼げるかもな」
「え、なんで!? あ、まさか本当に……って、いたたたた!! 耳をつねるなぁぁ!」
それ以上は言ってはいけないということで、制裁を下す。
その間、パーティメンバーの視線は俺たちへと向けられていた。
レックスさんが楽しそうに笑う。
「うむ、仲が良くて結構結構! ガハハハッ!」
「前から思っていましたが、お二人は本当に仲が良すぎますね。やはり付き合っていたのですか?」
「いやハクア、そんな関係じゃないからっっ!!」
てかなに「やはり」って。
前々からそんな関係匂わせていたみたいなこと言わないで!
「えっ、それって本当の話だったの?」
「ダメだ、エリー! ハクアに乗せられるな!」
ハクアの爆弾発言に誘導されそうになるエリーを引き留める。
「いやぁ、バレちゃいましたか~、実は俺とマルクは――」
「カイザー、お前はもう喋るな!」
「え、でもこの前突然俺の部屋に来て――」
「おい、それ以上捏造してみろ。その頬を抉ってやるからな!」
「い、いきなり乱暴だなんてそんな……」
「コロス!!」
問答無用、俺はこのお調子者を処すべく、少しキツめの鉄槌を食らわせる。
そんな茶番を交えつつも、休憩を終えた俺たちは更に森の奥へと進んでいた。
「魔力濃度がさっきよりも濃くなってきてるね」
「ああ、これは異常だな……」
前回来たときはここまでではなかった。
やはりこの森にはまだ何か秘密があるのだろう。
「でも、面白い情報を掴むことができたのは幸運だったかも」
「面白い情報?」
エリーの言葉に首を傾げると、その情報とやらを説明してくれた。
「エルガさんたちが調べてくれたんだけど、魔物のコアに人為的な細工の跡があったらしいの」
「コアに?」
「うん。魔法陣が書き込まれていて、そこから神経系を刺激するような物質が出たらしくて」
「ってことは、つまり……」
「この一件は誰かが意図的に起こしているってことだな」
カイザーが俺の言いたかったことを横からズバッと言ってきた。
コアというものは、魔物の体内にある結晶のようなものだ。
一般的にこのコアに魔力を溜めることで、魔物は生存していると言われている。
なのでどんなに致命傷を負っても、コアさえ破壊されなければ魔物は生きながらえることができる。逆に破壊されれば、即死に至るので、人間で言えば心臓に近いと言えるだろう。
ちなみに魔物のコアは武具の鍛錬素材として高値で売れることが多く、より上質なものほど値は上がる。上位の魔物ともなれば、それこそとんでもない額になるそうだ。
だから冒険者たちの中には、魔物のコア目的に魔物狩りをしているものも多い。
今回は調査だから、魔物のコアとかはギルドや研究施設の方に送られるらしいけど。
しかし――
「じゃあ、この森全体に広がる魔力侵食も怪しくなってきたな」
「だね。ここまで異常に広がっているのを見れば、可能性は高いかも」
誰かが意図的にやっているなら、ここで起きている異常事態は全てそいつの仕業だと考えることもできる。
それはつまり、前回の一件も同様のものだったということだ。
もしそうだとしたら、その黒幕を捕まえない限り、不毛な戦いになるな。
そんなことを話しながら歩いていると、前方からエルガさんの大声が聞こえてきた。
「お、おいどうしたっ!? 返事をしろっ!」
その声にエリーがすぐに駆け寄る。
「どうしたんですか?」
エリーの問いにエルガさんは答えた。
「西班が……魔物に襲われて壊滅状態にあるらしい」
「壊滅? でも一体何が……」
「分からない。共鳴魔法が途中で途絶えてしまったからな。だが、相当マズイことになっているのは確かなようだ」
エルガさんは「くっ」と肩を落とすと、俺たちの方へと振り向いて、新たな指示を出した。
「皆、作戦変更だ。これより西班の救援へと向かう!」
◆ ◆ ◆
「順調なようだな」
「はい」
影の中で、冒険者たちが倒れて行くさまを二人の人物が見守っていた。
「あれを出したのか?」
一人がそう言うと、片方が返した。
「予想以上に抵抗が激しかったものですから」
「ふん、相手もそれなりの連中を出してきたということか。試運転も兼ねて一時的にあれを放出したのを勘付かれたか……侵食化の方はどうなのだ?」
「そちらも今のところ、順調です。ですが、ご希望通りになるにはまだ時間がかかるかと」
意味深な会話が続いた後、しばらく沈黙が続く。
それから少しして、先ほどから質問を重ねていた一人がその沈黙を破った。
「まぁいい。私は一度本営へと帰還する。後は貴様次第だ」
「はい」
力なく返事をする相手に、耳元でそっと囁く。
「いいか? 総裁の寵愛を受けたければ、必ず成功させることだ。もし次また失敗すれば……分かっているな?」
「存じ上げております」
「本当だな? ただでさえ、貴様は第一フェーズを失敗している。大量の捕虜を獲得できたことでそのことは総裁が大目に見てくれていたが、次はないと思え」
「はい……承知しております」
「ならば、直ちに成果を見せよ。貴様はその為だけに生かされているんだからな」
それだけ言うと、影は姿を消した。
「行かないと……」
細い声でそう呟くと、その者もまた、暗闇から姿を消すのだった。
「なぁ、マルク」
「どうした?」
道中、カイザーがちょいちょいと俺を手招きしてくる。
「さっきからずっと気になっていたんだがよ、後ろの二人組、さっきから一言も会話してなくないか?」
チラッと後ろを横目で見ながらカイザーがそう耳打ちしてきた。
後ろの二人組というのは、俺たちのすぐ後方を歩くローブ姿の冒険者のことだ。
「確かに話しているような素振りはなかったな」
ずっと無言だったので気になってはいた。
その上二人ともローブを着てフードを被っているから、素顔すら分からない。
「怪しいよな~、しかもあの二人組で一つのパーティなんだぜ」
「余程の実力者なんじゃないのか?」
分からんけど……
「余程どころか、あの二人はギルドに勇者級と認められている冒険者たちだよ」
そんな会話をしていると、エリーがそっと俺たちに教えてくれた。
「ゆ、勇者級!? マジですか!?」
「お、おい声が大きい!」
驚くカイザーを必死に止める。
さっきもそうだけど声が大きいんだ、お前は……叫びたい気持ちは分かるけども。
「本当なのか? あの二人組が?」
「うん。でなければ、たった二人に班の最後尾を任せたりしないよ」
よくよく考えてみれば、エリーの言う通りだ。
今回みたいに複数のパーティで行動する場合、突然の奇襲などに備えるため、その最後尾には必ず実力のある冒険者を配置することになっている。
特にこういった重要任務では決まりと言っても過言ではない。
俺も前のパーティで何度か経験しているから、そのことは知っていた。
そう考えると、彼らが勇者級とまで言われる猛者だというのも納得だ。
どうりで異様な貫禄があるわけだな……
「わたしたちの班だけ少人数での調査になったのも、彼らがいるからよ。厳密には要望があったみたい」
「要望?」
「そ。少数精鋭で調査をしたいって申し出を、あらかじめギルドにしていたらしいよ」
「だからか……」
エリーの言う通り、二つに分けられた調査団のうち、西班は五パーティで編制されているところ、俺たち東班は【黄昏の使徒】と【聖光白夜】、そしてあの二人組の三パーティでの編制だった。
初めは疑問に思っていたんだが、今の話を聞けば納得がいく。
「ちなみになんていうパーティ名なんだ?」
「それがわたしも知らないの。誰も知らないし、名前がないんじゃないかって言われてるわ」
「パーティ名がないって、そんなことあり得るんですか?」
「ええ、カイザーくん。本来ならばパーティ設立と一緒に名前も決めないといけないんだけど、特例でそうなっていてもおかしくないわ」
確かに勇者級パーティなら特例扱いされているってのはおかしな話ではない。実際、待遇面は普通の冒険者の比にならないらしい。
でも、名前がないっていうのはさすがにどうなんだろうか。
「ま、何でもいいや。どちらにせよ周りは猛者だらけなんだ。今回は楽できるな、マルクよ」
「カイザー、お前なぁ……」
周りが強者ばかりだから、全否定はしないけど。
「さっきまで弱音を吐いてた人間のセリフじゃないな」
「さっきはさっき。今は今だ」
相変わらず、調子の良い奴だ。
切り替えが早いという点ではいいのかもしれないけど。
「周りが強かろうが、俺たちもやれることはしないと。楽してたら俺が怒るからな」
今回も【聖光白夜】の代表メンバーとして調査に来ているのだ。
そのことを考えて行動しないとエリーや他のメンバーの顔に泥を塗ることになる。それだけは絶対にダメだ。
「冗談だって! 俺もモテるために更に成長しないとだからな!」
はははっと笑い飛ばすカイザー。
動機は相変わらずだな。むしろ平常運転で安心するよ。
「マルクも楽すんじゃねぇぞ~」
「しないから!」
少なくとも何らかの役割は絶対にこなす。依頼が終わるまで一瞬たりとも気を抜くつもりはない。
復帰戦だからとかいう言い訳もしたくないしな。
「……段々不気味になってきたな」
第二調査区域の近くまで来た。
森というのは不思議なもので、進むにつれて暗くなってくる。まだ午前中だというのに、まるで夕暮れのような暗さだ。
「お、ビビっているのか?」
「そ、そんなことないわい! ルーキーじゃあるまいし」
俺のからかいに、カイザーは動揺しつつ否定する。
冗談のつもりだったんだが、割とマジでビビっているのでは?
「結構深いところまで来たな」
時間的にそろそろ目的地付近につく頃合いだ。
「皆、一度ここで止まってくれ」
先頭を行くエルガさんから指示が飛んできた。
そしてエルガさんは俺たちの方を向くと、静かに口を開いた。
「ここから先が第二調査区域になる。皆、気をつけて進むように。突然の出来事にも対処できるよう、武器の装備は今の内にしておけ!」
エルガさんの指示に、俺たちは頷く。
「それと、これは当然なのだが、ここはもう森の深部だ。一度はぐれると面倒なことになるから、できる限りパーティごとに固まって動け。もしはぐれた場合は、各自渡しておいた魔法指針を頼りにしろ。共鳴魔法の類は途中で使えなくなる可能性が高いからな」
エルガさんは一人一人の顔に目を配る。
共鳴魔法とは、遠隔での意思疎通が可能となる魔法のことだ。空気中の魔力を伝って情報をやり取りするのだが、空気中の魔力濃度が高いと、上手く繋がらなくなる。
前回は高濃度の魔力によって共鳴魔法が阻害されたのだが、それと同じ状況が起きると予想しているのだろう。
注意事項を聞いたところで、俺たちは更に先へと進む。
進むにつれて、覚えのある感覚が肌に感じられるようになってきた。
「段々と魔力濃度が高くなってきているな」
「そうなのか?」
「うん。前回もすごかったけど、今回は桁違いだね」
俺の言葉にカイザーが首を傾げていると、エリーも頷いていた。
エリーも同様に不快感を抱いたみたいだ。
俺も前までは分からなかったけど、前回の一件から少しだけ魔力濃度を身体で感じることができるようになっていた。
しかし、今回は本当に凄いな。エリーの言う通り、前回の比じゃない。
「なんか相棒が遠くに行っちゃった気分だぜ」
「え、なんで?」
「別にぃ~」
理由は分からないが、なぜかカイザーがむっとしている。
あ、もしかして……
「自分だけ分からないことに嫉妬しているとか?」
「ち、違うわアホ! 俺は物理職だから魔力濃度? なんてもん分からなくて当然だし!」
ああ、やっぱりか……分かりやすいな、相棒よ。
「んっ、この感じは……」
突然エリーが歩みを止めると、周りの人たちも同時に足を止めた。
俺もすぐに異変を感じ取った。
それは、明らかな殺気だった。
それも隠すつもりも一切なしの明確な殺意だ。
「魔物の臭いだな」
「ああ……」
カイザーも戦士の勘が働いたようで、既に剣を抜き構えていた。
その直後、先頭を行くエルガさんから指示が飛んでくる。
「全員、戦闘準備! お客さんのお出ましだぞ!」
その掛け声で、他の冒険者たちも瞬時に臨戦態勢を取る。
数秒後、前方から複数の魔物が姿を現した。
「来るぞぉっ!」
魔物たちの目は紅く輝いている。前回の調査の時と同じだ。
とはいえ、こっちは精鋭たちで結成された部隊。魔物ごときに遅れをとるはずもなく、前方部隊が敵集団を蹂躙していく。
先頭を行くエルガさんの活躍も目覚ましい。
「おぅ、あのおっさんやるなぁ……」
カイザーの言う通り、確かにあれが商人というにはパワフルすぎる気もするな。
「マルくん!」
「ああ、こっちも来たようだな……」
前方部隊が戦っている中で更なる殺気を感じ取る。
今度は背後からだ。
「流石に前方からしか仕掛けてこないなんてことはなかったか」
魔物も人族ほどではないが、多少の知恵はあるからな。
「横にもいるな……」
チャンスを窺っているのだろうか? 向こうもすごく慎重なようで、顔は見せているが、すぐに飛び出してくることはない。
「みんな、陣形を崩さないで。円陣で対抗するよ!」
エリーの指示でメンバーが動く。
だが次の瞬間だった。
側面にいた魔物たちが次々と倒れていく。
まさに刹那の速さと言っていいだろう。
音も立てることなく、ひっそりと……血しぶきが舞い、気付けば魔物たちは掃討されていた。
「な、なんだ。どうなって……」
「あの二人ね」
「あの……?」
俺が困惑していると、エリーが視線で示す。
その先には二人の人物がいた。例の勇者級の二人組だ。
「まさか今の攻撃って……」
「影術の一種だね。自らを影に変化させ、奇襲する技だよ」
影術か……どうりで視認できなかったわけだ。
しばらく見ていたが、二人の実力は噂通りだった。
魔物たちは俺たちに攻撃することなく、撃滅されていく。
「これはあの二人の動きに合わせましょうか」
エリーは振り返ると、メンバー全員に指示を出した。
「みんな陣形を解除! あの二人に続いて魔物を討伐するよ!」
作戦変更、勇者組の開いた道に沿うように、俺たちも魔物討伐を開始するのだった。
◆ ◆ ◆
マルクたちが奮闘している中、西側から調査に当たっていた冒険者たちも魔物と接敵していた。
「陣形を緩めるな! 常に二人一組の状況で対処するんだ!」
そう言うのは西班の案内役、【餓狼の民】のリーダーのシンだ。
彼もまたSランクパーティを率いる実力者である。
「シン殿! こっちは片付きました!」
「それなら後方支援に回ってくれ。数が足りてないみたいだ」
「了解です!」
こちらも魔物の数は相当なもので、ただでさえ人数が多いため戦場が広くなる。
そのため、二人一組の状況を作って魔物の対処に当たらせていた。
「異常発生とはいってもここまでなんてねっ……!」
剣を振りながら魔物たちを蹂躙していくシン。
一振りするごとに他の冒険者からも驚嘆の声が上がっていた。
「流石はシン殿だ」
「俺たちもシン殿に続くぞ!」
グループの士気は上々。それに比例するように倒れた魔物の数が増えていく。
「流石はシン殿。『餓狼の剣聖』の名は伊達ではないということですな」
そんな戦いの中、同じように魔物を撃退しながらシンに近寄ってくる者がいた。
同じくSランクパーティ【烈火迅雷】のリーダー、ゼファイド。まだ若いシンとは違い初老の男で、経験の豊富さが感じられる。
「ゼファイドさんこそ、素晴らしい采配です。手薄になっていたところをピンポイントに補強してくれたおかげで討伐が一段と楽になりました」
「それが私の役目ですからな。ほっほっほ」
彼もまた、実力者の一人だった。
今回は主にシンと同じく、指揮官的な立場を担っている。
「後方はどうなってますか?」
「鎮静化しつつあります。魔物の勢いも収まってきているみたいですな」
「なら一気に――!」
シンが喋りかけた、その時だった。
突然後方から、爆発音が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
「私が行きましょう。シン殿はここで」
ゼファイドが様子を見に行く。
そしてしばらく経った後、ゼファイドから共鳴魔法が送られてきた。
『シン殿! 緊急事態だ。遂にヤツが現れた!』
少し震えたような声だった。
経験豊富なゼファイドのその反応に、シンは異常を察する。
「すまない。少しの間、ここの指揮を頼んでもいいかな?」
「は、はい! お任せを!」
シンはメンバーにその場の仕切りを託し、すぐに後方へと走るのだった。
◆ ◆ ◆
「とりあえず終わったか」
一時間ほど経っただろうか。魔物の猛攻を凌いだ俺たちは、しばしの休憩に入っていた。
「やっぱり人数が多いと、討伐もスムーズだな」
「ま、元々強いメンツにあんなバケモノ二人を加えれば敵なしだよな」
カイザーはそう言いながら、勇者級パーティの二人組を見る。
「あれは異次元だな」
「ああ。しかもさっきから座りもしてないぞ。疲れ知らずか?」
例の二人組は木の陰でひっそりと佇んでいる。
誰かと話す素振りもなく、他の冒険者もその圧で誰も近づくことはなかった。
「でもなんか寂しい感じだよな。孤高の戦士的な」
「単に関わり合いを好まないんじゃないか?」
そういう人は一定数いるだろうし。
「ちょっと俺、話しかけてこようかな?」
「やめとけ。下手すれば首を落とされるかもしれんぞ」
空気感的に何となく分かる。多分、あの二人は人と関わることをあまり良しとしていない。
俺も学生の時は似たような感じだったし……ボッチの勘がそう言っているのだ。
「おい、マルク。お前、今悲しい過去を思い出していたろ?」
「なぜそう思う?」
「背中からどことなく哀愁が漂っていたからな!」
そんなにか? 確かに良い思い出ではないけど。
「お前は冒険者をやめて占い師にでもなった方が稼げるかもな」
「え、なんで!? あ、まさか本当に……って、いたたたた!! 耳をつねるなぁぁ!」
それ以上は言ってはいけないということで、制裁を下す。
その間、パーティメンバーの視線は俺たちへと向けられていた。
レックスさんが楽しそうに笑う。
「うむ、仲が良くて結構結構! ガハハハッ!」
「前から思っていましたが、お二人は本当に仲が良すぎますね。やはり付き合っていたのですか?」
「いやハクア、そんな関係じゃないからっっ!!」
てかなに「やはり」って。
前々からそんな関係匂わせていたみたいなこと言わないで!
「えっ、それって本当の話だったの?」
「ダメだ、エリー! ハクアに乗せられるな!」
ハクアの爆弾発言に誘導されそうになるエリーを引き留める。
「いやぁ、バレちゃいましたか~、実は俺とマルクは――」
「カイザー、お前はもう喋るな!」
「え、でもこの前突然俺の部屋に来て――」
「おい、それ以上捏造してみろ。その頬を抉ってやるからな!」
「い、いきなり乱暴だなんてそんな……」
「コロス!!」
問答無用、俺はこのお調子者を処すべく、少しキツめの鉄槌を食らわせる。
そんな茶番を交えつつも、休憩を終えた俺たちは更に森の奥へと進んでいた。
「魔力濃度がさっきよりも濃くなってきてるね」
「ああ、これは異常だな……」
前回来たときはここまでではなかった。
やはりこの森にはまだ何か秘密があるのだろう。
「でも、面白い情報を掴むことができたのは幸運だったかも」
「面白い情報?」
エリーの言葉に首を傾げると、その情報とやらを説明してくれた。
「エルガさんたちが調べてくれたんだけど、魔物のコアに人為的な細工の跡があったらしいの」
「コアに?」
「うん。魔法陣が書き込まれていて、そこから神経系を刺激するような物質が出たらしくて」
「ってことは、つまり……」
「この一件は誰かが意図的に起こしているってことだな」
カイザーが俺の言いたかったことを横からズバッと言ってきた。
コアというものは、魔物の体内にある結晶のようなものだ。
一般的にこのコアに魔力を溜めることで、魔物は生存していると言われている。
なのでどんなに致命傷を負っても、コアさえ破壊されなければ魔物は生きながらえることができる。逆に破壊されれば、即死に至るので、人間で言えば心臓に近いと言えるだろう。
ちなみに魔物のコアは武具の鍛錬素材として高値で売れることが多く、より上質なものほど値は上がる。上位の魔物ともなれば、それこそとんでもない額になるそうだ。
だから冒険者たちの中には、魔物のコア目的に魔物狩りをしているものも多い。
今回は調査だから、魔物のコアとかはギルドや研究施設の方に送られるらしいけど。
しかし――
「じゃあ、この森全体に広がる魔力侵食も怪しくなってきたな」
「だね。ここまで異常に広がっているのを見れば、可能性は高いかも」
誰かが意図的にやっているなら、ここで起きている異常事態は全てそいつの仕業だと考えることもできる。
それはつまり、前回の一件も同様のものだったということだ。
もしそうだとしたら、その黒幕を捕まえない限り、不毛な戦いになるな。
そんなことを話しながら歩いていると、前方からエルガさんの大声が聞こえてきた。
「お、おいどうしたっ!? 返事をしろっ!」
その声にエリーがすぐに駆け寄る。
「どうしたんですか?」
エリーの問いにエルガさんは答えた。
「西班が……魔物に襲われて壊滅状態にあるらしい」
「壊滅? でも一体何が……」
「分からない。共鳴魔法が途中で途絶えてしまったからな。だが、相当マズイことになっているのは確かなようだ」
エルガさんは「くっ」と肩を落とすと、俺たちの方へと振り向いて、新たな指示を出した。
「皆、作戦変更だ。これより西班の救援へと向かう!」
◆ ◆ ◆
「順調なようだな」
「はい」
影の中で、冒険者たちが倒れて行くさまを二人の人物が見守っていた。
「あれを出したのか?」
一人がそう言うと、片方が返した。
「予想以上に抵抗が激しかったものですから」
「ふん、相手もそれなりの連中を出してきたということか。試運転も兼ねて一時的にあれを放出したのを勘付かれたか……侵食化の方はどうなのだ?」
「そちらも今のところ、順調です。ですが、ご希望通りになるにはまだ時間がかかるかと」
意味深な会話が続いた後、しばらく沈黙が続く。
それから少しして、先ほどから質問を重ねていた一人がその沈黙を破った。
「まぁいい。私は一度本営へと帰還する。後は貴様次第だ」
「はい」
力なく返事をする相手に、耳元でそっと囁く。
「いいか? 総裁の寵愛を受けたければ、必ず成功させることだ。もし次また失敗すれば……分かっているな?」
「存じ上げております」
「本当だな? ただでさえ、貴様は第一フェーズを失敗している。大量の捕虜を獲得できたことでそのことは総裁が大目に見てくれていたが、次はないと思え」
「はい……承知しております」
「ならば、直ちに成果を見せよ。貴様はその為だけに生かされているんだからな」
それだけ言うと、影は姿を消した。
「行かないと……」
細い声でそう呟くと、その者もまた、暗闇から姿を消すのだった。
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