この歴代最強の新米魔王様、【人間界】の調査へと駆り出される~ご都合魔王スキルでなんとか頑張ります!~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第22話:副会長

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「―――で、あるからしてこの魔法術式の発動条件は……」

 ふむふむ、なるほど。人間界の学問は興味深いな。魔法の術式一つで様々な定義が存在するとは……

 すかさず大事な板書は自前のノートブックで書き写す。
 本格的にカリキュラムごとに授業が分かれ、専門的な内容も入ってきた。ようやく本当の学園生活が始まったというべきだろう。
 そして俺が板書写しに熱心になっている中、隣人の男が覗きこむようにしてノートを見てくる。

「お前は熱心だよなぁ……俺は板書を書くという概念自体が存在しないからノートすら持ってきてないっていうのによ」
「いや……まぁお前の机を見れば一目瞭然だけどせめてテキストくらいは置いた方が……」

 ザックの机には真っ新でノートどころか何も置かれていなかった。自分のやる気のなさを言動で伝えなくても体現できるというなんとも言えない状況が構築されていた。
 学生は勉学が本業……と思っていたのだが彼を見ていると間違いに思えてくるので不思議だ。

 それほど平然な顔をし、授業には出席しているものの実質上のボイコットが隣で起きていたわけだ。
 本当にこの男がなぜSクラスに入れたのかという問いを学園側に突き付けたいくらいだった。

「あぁーーー、早く終わらないかなぁ……やることがセレスちゃん観察以外なくて退屈だ」
「それはやるのか……」
「あったりまえだろ! そうでもしないとやってられないぜ」

 本当に謎である。
 せっかくあの初老の魔術講師が良いことを言ってくれているのに勿体ない。
 ま、この世界に生きる者にとってはこれが普通なのだろうか? 俺は学校に通ったことが今までで一度もない。それ故にこういった集団で学問を学ぶ機会は一切なかったのだ。だからこそ新鮮かつ別世界の知識に触れると自身の奥深くに眠る好奇心が黙っちゃいない。
 
 だが人間界の者にとってはそれが普通であり、新鮮さを感じることはない。その差が今の現状を生み出しているのだと推測できる。
 
(ザックみたいに堂々とサボっているのもどうかとは思うがな……常識的な問題で)

 板書は次々と書かれていき、授業の進む速さも段々と速くなってくる。
 するとここでザックがとある話を切り出してくる。

「あ、そういえばイブリス。次のセレスちゃん計画の話なんだけどさっき良い案を思い出したんだよ」
「またやるのか……それ」

 しかも今度はターゲットを限定してるし。お友達計画から一気に範囲が狭まったぞ?
 
「でさ、今度はもっとより計画的に動こうと思っていて……」
「おいそこの後ろの席、何話してるんだーー?」
「あ、やべ……」

 初老の魔術講師はザックの方を指さしピンポイントで注意をする。
 ザックは小声で話しても声量が大きい方だ。
 いつかはバレるとは思ったが……

「そこの席は……ザックくんでいいのかな?」
「あ、はい……そうです」

 嫌な予感がザックを襲う。隣にいた俺でも危機感を感じたくらいだ。
 そういえば確かこの講師……授業前に私語について言っていたような……

「授業前に言った通り、私の授業で私語をしたものは罰が与えられる。それは承知の上かな?」
「え? あ、ああ……はい分かってます」

 反応的に分かっていないなこりゃ。
 だがストレートに慈悲なき言葉をかけるとすれば自業自得。擁護するには難しい状況だ。
 それに……

「そういえばさっきから気になっていたのだが君はノートはおろかテキストすら出していないみたいだけど何をしていたのかね? そこまで授業の参画度が悪いのは何か理由があってのことかな?」

 ああ……これは辛い。
 彼にとって最も痛い所を突かれてしまった。というか気が付いていたのかあの人……
 
 ザックの額には汗で濡れており、焦っているのが分かる。
 
「じゃあザックくん、君にはこの問題を解いてもらおう」

 そう言って初老の魔術講師は問題を黒板に書き出す。
 ザックはこちらをチラチラと見てくる。露骨なSOSサインだ。
 
 だが下手に喋ると俺まで巻き込まれる可能性もある。みる限りあの魔術講師の目はごまかせそうにない。
 
 打つ手なしだ、すまんザック!

『おいイブリス! 俺を見捨てる気か……!』

 そんな風に訴えかけているようにも思えるその眼差しをみて気の毒に思うもただ罰せられる友人を脇で見ているだけしかできなかった。
 
 そして授業後、ザックは机に向かい勉学に励んでいた。

「……こんな量の課題を明日までやれとか無理があるだろ……最悪だ」

 無残にも嘆きながらプリントとにらめっこをするザック。
 あまりにも堂々としたやる気のなさにあの魔術講師も怒りを成したのだろう。束のように重ねられた問題プリントがザックの机に置かれていた。

「助けてくれぇイブリス~」
「頑張れザック、俺は応援しているぞ」
「そ、そんなぁ……」

 必死に課題をやっているザックを鼓舞していたときだった。
 
「―――おいあの人って……」
「―――ああ、副会長だ……でも何でこんな所に」
 
 周りの視線を一気に白髪蒼眼を持つ男が持っていってしまう。
 俺とザックも周りのざわつき具合からすぐに気が付き、その男の方を見る。
 見覚えのあるあのイケメン……生徒会副会長のソリダスさんだ。

「おいイブリス、あれって……」
「ああ、生徒会の副会長さんだな」
「でもそんな学園で重要人物と言われる人が護衛もなしに一体何用だ……?」
「さぁ……」

 唐突の生徒会副会長登場にクラス内は緊張感で包まれる。
 やはりあの人物は遠くから見ても威圧感があり、周りの者とは一変した何かを感じた。
 
 そして彼はクラス全体をゆっくりと見渡しながら、

「このクラスにイブリス・エルタード殿がいるとお聞きしたのですが……どなたでしょう?」

 その華美で奥深い白髪を揺らし、ソリダスはこう言った。
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