この歴代最強の新米魔王様、【人間界】の調査へと駆り出される~ご都合魔王スキルでなんとか頑張ります!~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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第25話:魔王様のお仕事

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 学園生活が始まる数日程が経った。
 あの一件以来、俺は学園でとある職につくことになった。

 それが……

「……あ、来たわねイブリスくん。今日もよろしく~」
「あ、はい……」

 金髪揺れるその美女はこの学園のヒエラルキートップ、一部の人の間では女神とまで呼ばれているメイア・ドラグナ―生徒会長だ。
 そしてその隣には血縁違いの兄、ソリダス副会長の姿があった。

「どうでしょうか生徒会の仕事は。少しは慣れましたか?」
「いや、まぁぼちぼち……」

 苦笑いをしながら答える。
 そう、俺の学園内での職とは学園を動かすための中枢とも呼べる組織……総じて生徒会という所に入ることとなったのだ。
 
 しかしとある条件付き、ということで期間は3か月ほどという話にまとまっている。

 俺が生徒会に誘われた理由は大きく分けて二つだ。
 まず一つは人気度と認知度。彼らの話によるとどうやら俺は学園内で一定の人気があり、とくに女生徒には支持が厚いとのこと。
 そしてもう一つは元々所属していた生徒会役員の代理人をしてほしいとの頼み。元々生徒会メンバーは全員で4人。下っ端は数百人ほどいるとのことだが実質生徒会室で仕事をするのは会長、副会長、会計総長、書記総長の4人だと言う。

 その中の会計総長にあたる人物が今とある事情で学園に来ることができないとのことだった。
 俺はその代理としての責務をどうか果たしてくれないか、というのがソリダスが言う二つ目の理由だった。
 
 交渉の際、俺は数十分にも渡って悩み続けたが俺の決断を採取的に決定にまで持ち込んだのはその”とある条件”に魅かれたからだ。
 そのとある条件というのは非常に単純なもので任期が終わった暁にはなんでも一つだけ望みを聞く……というものだった。
 
 それでも初めは躊躇したが冷静に考えてみるとこれはチャンスなのではと思った。その理由としてこの学園の後ろ盾をしているのはなんとこの国の一等王族でホルン一族が一人、ミランド・エン・グラナバナース・ホルン第一王子とのこと。
 なので普段から王族や貴族、その他重要人物との関わりが非常に多いという。
 
 これが何を意味するかは簡単なことだ。この場所はこの国の内部を知れるいわば認められた者しか入れないという絶対領域。その裏側はこの国、いや我々にとっては人間界とはどのようなものかを一挙に知ることができる情報の宝庫ということを指す。

 我々魔王軍が欲するものは金でも武器でもない。人間界に纏わる情報、データベースだ。
 俺とリリンもそれらを集めるべくグシオンの提案によってここへ送り出された。

 と、なれば……

(この国のみならず人間界自体の重要な情報を知れるチャンス……)

 と、考えたわけだ。
 
 我らにとって些細なことでも大きな情報として扱う。先の戦いで集まった人間界のデータはほとんど消えてしまったのでこの状況は上手く利用さえすればとんでもない利益へと変わる。
 
(それに次いでで勇者に関する情報も得たい)

 そんな意図が頭を過り、俺は彼の頼みを受け入れることにしたわけだ。
 
(少しの間だけ、調査が多少遅れてしまうが仕方なしだな)

 とりあえず今はこの環境に慣れるべく仕事に専念をする。情報集めはそれからだ。
 

 ……と、思っていた俺がバカだった。

 どうやら俺は生徒会という仕事をかなり甘くみていたようだ。
 それも……

「辛い……! 辛すぎる……!」
「お、おい……いきなり大声出してどうしたんだよ。生徒会に入ってからお前可笑しいぞ」

 机に突っ伏しながらそういう俺を心配するザック。ザックに可笑しいと言われるということは相当重症なのは間違いない。
 でも本当に辛いんだって!
 
(あの仕事量は殺しにかかっている……放課後6時間ぶっ通しで仕事だなんてどういうことだ!)

 これなら魔王やっていたほうが全然楽。その上慣れない仕事からか覚えることも非常に多かった。
 
「うぅ……悪夢だ」
「……なんかご愁傷さまです。イブリスさん」

 ザックごときに合掌される現魔王。
 だがもう日々の疲れで思考は停止しつつあったので何も言い返す気力すらなかった。
 
(これが後3か月……人間界支配の前に俺がくたばりそうだ……)

 そんな心身ともに疲れている時であった。

『イブリス、ちょっといいかしら』
 
 リリンから脳波を伝ってテレパシー信号が送られてくる。
 我々魔王軍の一部の能力者は互いに顔を合わせずともテレパシーでの意思疎通が可能なのだ。

『ああ、リリンか。悪い今ちょっと身体的問題が……』
『大変です。今、魔王様不在の魔界で何やら一つ事件が発生したと現地からの通達がありました。どうやら例の部族が反旗を翻したとのことで』
『例の部族……? まさかあいつらが?』
『はい。恐らくは魔王不在を狙っての所業かと。とにかく今魔界では現地にいる者だけでは対処できない状況とのことです。グシオン軍令総統からもたった今連絡が……』

 マジかよ……こんな時に。
 だが自分の世界の内政にひびが入りそうであらば仕方のないこと。調査任務中とはいえ俺は魔王だ。
 その責務はしっかりと果たさなければならない。

『分かったすぐに行く。まずは魔王城へ向かう。ゲートを用意しておけ』
『かしこまりました』

 さて……そうと決まれば、

「……ザックよ、悪いが俺は午後の授業は休ませてもらう。生徒会にも今日は出れないということを伝えておいてくれ」
「えっ、ちょっとイブリスお前……!」
「じゃ、頼んだぞ」
「お、おい!」

 俺は制服を羽織り、スクールバックを肩にかけるとそのまま教室を飛び出していった。
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