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第24話:謎
しおりを挟む生徒会……そのように呼ばれるその組織は学園生たちの長である生徒会長を筆頭に構成された、いわば学園内の一切を仕切る自治組織だ。
構成員は生徒会長、それを補佐する副会長、学園内の財務を主に担当する会計総長、そして生徒会の活動及び学園内のあらゆる出来事を記録として残す書記総長と呼ばれる4人の人物から構成されており、各々が的確に仕事をこなすことによって学園の運営をすることができるという重要な役割を持った人たちだ。
そんな学園の中枢とも呼んでも過言ではない場に俺はいた。
「生徒会に勧誘!? そんなこと聞いてないわ」
「まぁ皆さんには伝えていなかったですからね。私の独断専行です」
「でも予め言ってくれないと困ります! 一般生徒はこの建物には入れるなって学長に厳しく言われてるんですから!」
厳しい対応をするこの生徒会長こそ俺が入学式の時に出会ったメイア・ドラグナーその人だった。
その赤いフレームのメガネは彼女をより知的な、そして厳格さをより際立たせていた。
と、ここでソリダスがこちらの方を向き、
「申し訳ないです、私の身内がいきなり……」
「お、お気になさらず」
「ありがとうございます。それはそうとお二人は知り合いか何かで?」
知り合いというより一瞬だけ話した間柄なのですが……
俺がそう事情を説明しようとした時、
「私のある秘密を知った唯一の生徒ですよお兄様」
「……なにっ!?」
メイアの一言でソリダスは驚きの表情を見せてくる。焦り……に近いような感じだ。
「そ、それは本当なのかメイア!」
「え、ええ本当よ。あと学園内での名前呼びはやめて」
「ぬおぉぉぉぉぉ……なんということだぁ……」
その場で崩れ落ちるソリダス。まるで先ほどのようなカリスマやら上に立つもののオーラというのが今の彼にはまるで感じない。
(人が変わったようだ……)
ソリダスは下を向き嘆くと次は俺の肩に手を乗せ、
「本当にすまない……すまなかったイブリス殿!」
「え、ええ!? な、何がです?」
「メイ……いや生徒会長が何かしなかったでしょうか? 会長はメガネを外すともう手が付けられないほどになってしまうので……」
「ちょっとそれどういう意味ですか!」
いや気持ちは分からないでもない。あの人の変わり用は確かに何かあるとは思っていた。
だが今の副会長の話を聞いて確信したことがある。
(生徒会長は二重人格者……それもトリガーはあのメガネか)
魔界でも複数の自我を持つ魔物は実際存在する。天魔大幹部にも一人、多重人格を持った諜報のプロがいるが……
(まさか人間界でも複数の己を持つものがいるとは……)
まぁ副会長の驚きを見るようではあの入学式の出来事はほんの一端でしかないのだろう。
俺は「大丈夫」とソリダスに告げると、少しホッとしたような仕草を見せる。
「それよりお兄様、彼にまだ言わないといけない話が山ほどあるのでは?」
「ん? ああ、そうでした。まだイブリス殿の問いに答えていませんでしたね。時間を奪ってしまっているのに申し訳ないです。会長、申し訳ないのですが席を外してはくれませんか?」
「分かった。でも話がまとまったらしっかりと報告してくださいね」
「はい、必ず」
ソリダスはそういうと会長を外に出てもらうようお願いし、再度二人だけの環境を作る。
頭を掻き、息をふぅーっと吐くとソリダスは、
「思わぬ乱入者が入ってしまいましたね。申し訳ないです」
「大丈夫です。でもお二人って……」
「ああ……兄妹なんですよ。ああ見えても」
「ご、ご兄妹だったんですか!」
薄々気づいてはいたがあたかも気づいていなかったような素振りをする。
けど兄妹にしては容姿的な差異があれだな。生徒会長は綺麗な金髪で優雅さがあふれ出ているのに対し副会長の方は少し鼠色の入った格式と大人しさを感じさせる銀髪。
兄妹とはいえそこまで違うものなのか……?
「まぁ、腹違いな兄妹ですけどね。なので私の本名はソリダス・ドラグナーです。訳あってその名は名乗ってはいませんが……」
なるほど、解決した。
その理由だったら多少容姿が違えど納得がいく。
「お二人は仲がよろしいのですね」
「まぁ、色々ありましたからね……特にお家問題で……」
そういうとソリダスの表情は次第に沈んでいく。先ほどまではの彼には想像もつかないくらい暗く悲しげな顔だった。
「そ、ソリダス副会長……?」
問いかける。するとソリダスはハッとすぐさま顔を上げ、
「も、申し訳ございません! 私としたことが客人の前で不快をさせるようなことを……」
「不快だなんてそんな……自分は全然気にしてないですから!」
頭をペコペコと下げるソリダスを必死に宥める。
そして少しの間落ち着くよう提案し、ソリダスはそっと頷き紅茶を口に含む。
「……話がだいぶ脱線してしまいましたね。もう大丈夫です。本題に移りましょう」
そういうとソリダスは息をつく間もなく口を動かし、話し始める。
「私があなたを生徒会役員へとお誘いしたいのは大きく分けて二つございます。まず一つはこの前に起きた第7階位級モンスター発生事件のことです。一応あなたにお聞きしたいのですがあなたがあのモンスター二体を討伐した……というのは事実なのでしょうか?」
「それは……はい、事実です。自分が二体のモンスターを討伐しました。あのままではより多くの被害を被る可能性があると判断したためです」
「……そうですか。間違った情報でなくよかったです。多くの生徒の証言にあなたの名が出てきたものですから」
「そ、そんなにですか?」
「はい。イブリス殿は既にお気づきかもしれませんが、入学当初から結構な人気がありまして特に女生徒からの人気がすごいとお聞きしました」
「え、ああ……そ、そうみたいっすね!」
なにそれ初めて聞いたんですけど! 俺が人気? んなバカな。
今までそんな心当たりは……いや、一つあった。
自分ではあまり気にしてはいなかったのだが人の視線をすごい感じることが多々あった。それは副会長の言うとおり入学当初からだ。
だがそれはてっきり自分の容姿が珍しくて見られているだけなのだと思っていた。俺はこの国では珍しい漆黒の髪とまるで飲み込まれるかのような黒い瞳の持ち主だ。明るい髪色が主流のこの国では黒く暗い髪を持つ者は人々の視線を集めるとリリンが言っていた。
だがそれでは潜入調査がしにくいということから髪色を変えようと模索をしていたそんな時期にこのような話が舞い込んできたわけだ。
(俺が……人気だと? どういうことだ。人気の出るようなことをしたか?)
いや、していない。というか周りの生徒とは関わりすらないはず。関わりがあるのはリリンやセレス、そしてサーシャ、かろうじてザックくらいだ。
どう考えても人気の出るような要因は見当たらない。
(どこから注目を浴びるようになったのだ? それにしても……)
謎だ……
「と、いうのがまず一つ目の理由となります。そして二つ目が……イブリス殿?」
(いや待てよ。確か魔王一族に伝わる伝承で人を魅了できる力を持った一族がいたって話を聞いたことがある。そうだと仮定すればもしかすると……)
「あの……イブリス殿ーーー?」
語り掛けるソリダスに俺は一切の反応を示さなかった。頭の中は注目を浴びた原因を探ることで一杯で周りの言葉など介入できる余地すらなかったのだ。
(分からん……全然分からーーーーん!)
深まるばかりの謎に俺はただ心中で叫ぶことしかできなかった。
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