41 / 160
41.ソフィアの過去2
しおりを挟む「ソフィアに妹が……!?」
初耳だった。
でも前に俺はソフィアにこんな質問をしたことがあった。
ソフィアが第一王女になるのなら、第二、第三の王女がいるのか……と。
(そういう……ことだったのか)
あの時、ソフィアが見せた悲し気な一面。
あれは妹であるロゼッタのことを思い出しての表情だったわけだ。
その時に一瞬だけだったが、国王陛下の顔も一気に険しくなっていた。
当初は疑問だったが、これでようやく納得できた。
「妹……いや、ロゼット様は今どこに?」
「王城にある自室です。ただ、動くことも話すこともできないので常時使用人が付いておりますが」
「そうですか……」
――解離性昏迷
専属の医師の話によれば、人として生きるための生命機能は動いているものの、精神的苦痛や絶望を感じた時に生じる解離性障害によって重度の昏睡状態に陥ってしまう病気とのこと。
よくは分からないが、ロゼットの病はそういうものらしい。
「原因は何ですか? 精神の病となると、やっぱり……」
「ランス様のお察しの通りです。ソフィア様だけでなくロゼット様のお母様でもあるエスメラルダ様の死が原因です。ロゼット様はソフィア様以上にエスメラルダ様の死を悲しんでおられました。それも一週間以上も自室に引きこもってしまうほどに……」
「一週間も……」
そうしてロゼットの心は人と接することを拒絶し、日を重ねていくごとに暗闇の奥底へと沈んでいった。
それがこの病を招いた原因ではないかと、医師は言ったらしい。
「そんな過去があったなんて……」
あの時に俺が何気なく言った言葉はソフィアたち家族にとって思い出したくもない出来事だったのだ。
知らなかったとはいえ、俺の心には罪悪感が芽生えていた。
「方法は……ロゼット様の病気を完治させる方法はないんですか?」
「……はい。未だに完治方法は見つかっていません」
俺の質問にアリシアさんは力なく頷く。
場の雰囲気は一気に沈み、俺も返す言葉がなかった。
「ソフィア……」
眠る彼女を見ると、何故か悲しさがこみあげてくる。
辛い現実の中を生きてると知ってなお、あの笑顔を思い出すと特にだ。
そして彼女は辛い現実を糧にして、王女としての責務を果たそうとしている。
妹であるロゼットの想いも込めて。
「アリシアさん、俺……ようやく自分が今、何をしているのかが分かりました」
「ランス……様?」
今まで俺はただソフィアに冒険者のことを世界のことをよりよく知ってもらえればそれでいいと思っていた。
それがソフィアの願いであり、全てだと思い込んでいたからだ。
でもソフィアの目指す先はもっと奥深いところにあった。
アリシアさんの話によれば、ソフィアは実の母であるエスメラルダさんがこの世を去り、妹のロゼットが病になってしまった時から世の中のことについて深く考えだしたという。
これは恐らく自分が何とかしなきゃいけないという使命感が強く出た結果だろう。
そして今、ソフィアはその第一歩を冒険者となってスタートさせた。
その中で俺はその指導役という重役を任されることになった。
ということは俺の教えによってソフィアの今後を左右し得る可能性があるってこと。
それは恐らく自分が考える以上に責任重大なことだ。
もしかしたら俺の考えすぎなのかもしれない。
でも、今回の話を聞いて今自分のしていることがどういうことなのかを見直すきっかけになったのは事実。
今までも別に適当にやっていたわけじゃないが、今後はさらに責任という二文字を強く心に刻む必要があるということが分かった。
要は俺が今していることはこの国の今後を変えるかもしれないと言っても過言ではないということ。
(もっと責任を持ってやらないと。ソフィアの為にも……妹さんのためにも……)
俺はギュッと拳を握ると、片方の手をソフィアの手の上に重ねる。
すると……
「……ん、んん……」
ソフィアの瞼がゆっくりと開き、その奥深く水晶のように綺麗な碧眼が露わになる。
ソフィアが目を覚ましたのだ。
28
あなたにおすすめの小説
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
追放された『修理職人』、辺境の店が国宝級の聖地になる~万物を新品以上に直せるので、今さら戻ってこいと言われても予約で一杯です
たまごころ
ファンタジー
「攻撃力が皆無の生産職は、魔王戦では足手まといだ」
勇者パーティで武器や防具の管理をしていたルークは、ダンジョン攻略の最終局面を前に追放されてしまう。
しかし、勇者たちは知らなかった。伝説の聖剣も、鉄壁の鎧も、ルークのスキル『修復』によるメンテナンスがあったからこそ、性能を維持できていたことを。
一方、最果ての村にたどり着いたルークは、ボロボロの小屋を直して、小さな「修理屋」を開店する。
彼の『修復』スキルは、単に物を直すだけではない。錆びた剣は名刀に、古びたポーションは最高級エリクサーに、品質すらも「新品以上」に進化させる規格外の力だったのだ。
引退した老剣士の愛剣を蘇らせ、村の井戸を枯れない泉に直し、ついにはお忍びで来た王女様の不治の病まで『修理』してしまい――?
ルークの店には、今日も世界中から依頼が殺到する。
「えっ、勇者たちが新品の剣をすぐに折ってしまって困ってる? 知りませんが、とりあえず最後尾に並んでいただけますか?」
これは、職人少年が辺境の村を世界一の都へと変えていく、ほのぼの逆転サクセスストーリー。
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる