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第二十七話 美少女、再び
しおりを挟む波乱な出来事ばかりの初日から気がつけばもう三日が経過していた。
まだまだ不慣れなことは多いが、着々と新生活にも慣れて友人も少しずつ増えて行った。
もう既にクラスの人の名前は全員把握したし、スタートダッシュは成功したと言えよう。
まぁ、その代わりにちょっと変わった奴に目をつけられてしまうことになったが――
「失礼するよ、Aクラスの諸君!」
(あ……噂をすれば)
突然教室の扉がガバッと開き、中に入ってきたのはBクラス委員長のジーク・フリットだった。
そして教室を鋭い目つき見渡し、俺の姿を発見すると、
「あっ、ユーリくん。これはこれはごきげんよう」
「あ、ああ……」
ごきげんようなどと言っているが、このやり取りは今日これで3回目になる。
そう、授業の合間に挟む休み時間ごとに彼は俺に会うためだけにわざわざやってくるのである。
「むむっ、今回は読書ですかな?」
「読書というか前の授業の復習しているだけだが……」
「ほう、復習ですか。さすがは我が親友、志が高い!」
「そりゃ、どうも。ていうかずっと思ってたんだが、何で毎時間のようにクラスに来るんだ? 特に用もないだろ?」
「ん? 用がなければ来てはいけないのか?」
「……いや、そういうわけじゃ」
そう言い返されると何と説明すればいいか分からない。
だけど正直に言うと鬱陶しかった。
悪い奴ではないんだ。
初めて会った時の印象は最悪だったが、あの模擬戦以降から俺の中での彼の評価がガラリと変わった。
だけど問題はそこからだった。
毎時間のようにクラスに赴かれてはその度に注目の的になる。
初めは何かあるのかなと思って黙っていたが……
「でも一応何か理由があってクラスに来ているんだろう? 昨日の合同授業だって陰からコソコソと俺のことを見ていたようだし」
「おお、流石は我が親友。気ついていたか」
「気がつくも何もあんな熱い眼差しを向けられたら誰でも気づくっての。それに最近、学園帰りに俺の後をつけてたりしてただろ?」
「おおっ! なんとそこまで気がついていたとは……流石だ!」
「いやそれ、歴とした犯罪だから」
という会話を挟み、中々本題へと移れなかったので、
「で、理由なんだけど」
ざっくりと一言で理由を求める。
するとジークは、
「理由? そんなの一つしかないじゃないか、親友よ」
「は? どういうことだ」
「僕はあの時、君から学んだんだ。自分の才能だけでは決して到達できない領域があるということをね」
「うん、それで?」
「だから僕はあれから必死に考えてある結論へと至った。そう、それは自分だけでは昇ることのできない階段があるのなら人を頼ればいいんじゃないかってね」
「なるほど。だから俺を常日頃観察し、その領域に達するためのヒントを得ようとしたってわけか?」
「その通り! さすがは我が親友だ。理解が早いね!」
そういうことだったのか。
それならまぁ仕方がない――わけないだろ!
「理由は分かった。でも流石にそれは――」
その時、ちょうど授業五分前の予鈴が鳴り、俺の言葉は遮られる。
そしてその予鈴を聞いたジークは、
「おっと、そろそろ僕は戻らないと。では親友よ、また会おう! はっはっはっは!」
「お、おいちょっと待っ……行っちゃった」
結局、肝心なことだけが言えなかった。
「はぁ……疲れるなぁ」
机に突っ伏しながら再度魔術書を開く。
すると前に座っていたジンの笑い顔が視界に入り、
「なにニヤニヤしてるんだよ、ジン」
「いや、お前も苦労してるなって思ってな」
「そう思ってたなら止めてくれよ。ホント、疲れるんだからな」
「でもまさかジーク様があそこまで一人の人間に固執するなんてな。お前もしかして惚れられたんじゃね?」
「まさか」
「でも可能性はゼロじゃないだろ? ビジュアルだけだったら結構お似合いだと個人的には思うけどな」
「冗談はやめてくれ。俺はそっち系の趣味人じゃない」
仮に俺が女だとしてもジークのような男はご免だな。
何か色々とめんどくさそうだし。
普通に友人くらいがちょうどいい。
「あ、あのぉ……ここにユーリ・フリージアくんっていらっしゃいますか?」
再び。
教室の扉が開き、誰かの声が聞こえてくる。
また誰かが教室に来たようだ。
俺は机に突っ伏していたので顔は見えなかった。
でも一つだけ分かるのは今度もまた俺の名前が……って、待てよ?
(ジークはさっき帰ったよな? まさか戻ってくるはずもないし、声的にもジークの声じゃ……)
「お、おいおいマジかよ……」
机に顔を委ねる中、隣で驚くジンの声が聞こえてくる。
周りのクラスメートたちも何だかざわつき始め、明らかに様子がおかしかった。
(ど、どうなってるんだ)
俺は気になってゆっくりと顔を上げてみる。
と、視界に映ったのはジーク……ではなくまさかの人物だった。
「ふぃ、フィアット……!?」
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