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第二章【越】
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■■■■
小岩川和子の成長を目の当たりにした部員の中には、考えさせられる者達がいた。
六条舞鳥もその一人だ。
ブッケンはここ最近伸び悩んでいた。
練習ではまひると海香に勝てないのは勿論、乃百合や桜にも勝てない日々が続いている。
乃百合や桜の実力が上がったと言うのもあるが、ブッケン自体の成長が緩やかになりつつある事を自分自身感じ取っていた。
その原因の一つにプレースタイルがある。元々活発で押せ押せな性格をしている乃百合は前陣速攻が合っているが、控えめで保守的なブッケンには合っていない。乃百合の真似ばかりしていては、この先置いていかれるのは目に見えていた。
「どうしたの? 考え事?」
「うん。ちょっとね」
部活の帰り、二人並んで歩くブッケンの様子に乃百合が気づいた。
「なに? 私に出来ることなら力になるよ」
「ありがとう、乃百合ちゃん。実はね──、」
ブッケンは乃百合に今日の試合を見た感想を述べた。和子が自らのスタイルを手に入れたように、自分も自分に合ったスタイルを手に入れなければならない。そういう時期に来ているんじゃないか、と。
「そっかー。じぁあさ【カットマン】に挑戦してみたら?」
「カットマン?」
「そう! ブッケンの我慢強さや粘り強さってカットマンに向いてると思うんだよね。私もブッケンのそういう所好きだし、尊敬してる。私には絶対に勝てない部分だと思うんだよね」
「乃百合ちゃん……カットマン、か」
乃百合に褒められたブッケンは頬を赤く染めた。
カットマン。確かにブッケンにピッタリのスタイルだと思うが、前陣速攻からいきなりのカットマンへの転向。正直不安も大きい。
「ブッケンなら出来るよ! やるだけやってダメならまた元に戻せばいいんだし」
「……そうだよね。わかった! ちょっとやり方調べてくるね!」
「あ、そうだ! カットマンの事なら翔子先輩に聞いてみようよ。あの人ならきっと教えてくれるからさ!」
「うん! そうだね」
■■■■
──次の日──
二人は早速三年生の教室を訪れた。
三年生の居るフロアは一年生の乃百合達にとっては凄く大人な世界だ。歩くだけで心臓が大きく脈打った。
「た、確か二人ともC組だから、ここ……だよね?」
「う、うん……行こう」
「ちょっブッケン、押さないでよ……」
「だ、だって……」
入口の前でそんな押し問答を繰り広げていた二人は、後ろから声をかけられた。
「何してるの? あなた達」
「いえっ別に怪しい者では──、」
「──って、翔子先輩」
入口で揉み合う二人を見兼ねて翔子から声を掛けてきたのだ。
翔子は二人の話を聞くとこう切り出した。
「なる程ね。確かにそれもあるわね。だったら、私なんかより南に聞いた方がいいかも」
「南先輩ですか?」
「そう。私はただ守って耐えるだけしか出来ないもの。ただスタイルを変えたら強くなるって言うのはちょっと違うと思うんだ。今までやって来た事を活かしながらカットマンをやる。これが一番いいと私は思うな」
「速攻を活かしたカットマン? ですか」
「そうね【カット攻撃型】ってやつかな。カットで耐えて、隙を見て攻撃にも転じる、攻撃型のカットマン。ブッケンにはこれが一番向いていると思うの。そう言った意味で、私じゃなく南の方が適任かなって」
「なる程……」
二人が納得した様子を見せた為、翔子は教室の奥で本を読む南を呼び出した。
二人の前に現れた南は、相変わらずツンとした雰囲気を出しており、少々気後れしてしまう。
「──、という訳なんです。南先輩、どうか私にカットマンの事教えてください!」
「あの、私からもお願いします。ブッケンにカットマンのやり方を教えてあげて下さい」
頭を下げる二人に対し、南はメガネを指で直すとこう告げた。
「あなた達、そういう事は──、」
「そ、そうですよね受験前ですもんね……」
「何言ってんのよ。遠慮しないで言いなさいって言ってるのよ。今日の部活後、ちょっと時間ある? 私は図書室で勉強してるから、終わる頃に見に行くね」
乃百合とブッケンはお互い顔を見合わせた後、南の手を取りお礼を言った。
そしてこの日より、ブッケンのカットマン転向作戦が始まるのだった。
■■■■
──そんなある日──
いつもの様に乃百合とブッケンが仲良く並んで学校の廊下を歩いている時だった。
丁度職員室の前を通りかかった際、同じ部員で一年生の田中深月が職員室から出てきた所に出くわした。
「あ、深月ちゃーん! やっほー」
「乃百合ちゃん」
「どうしたの? まさか呼び出し?」
「ううん。違うの」
「そっかー。今日の部活、また一緒にサーブ練習やろうね」
乃百合は深月の表情からこれ以上詮索するのは良くないと判断し、話を部活に切り替えた。
「あのね。乃百合ちゃん……」
「ん?」
「私…………辞めるの。部活」
「えっ…………」
田中深月もまた、和子の試合を見て考えさせられた一人だった。
小岩川和子の成長を目の当たりにした部員の中には、考えさせられる者達がいた。
六条舞鳥もその一人だ。
ブッケンはここ最近伸び悩んでいた。
練習ではまひると海香に勝てないのは勿論、乃百合や桜にも勝てない日々が続いている。
乃百合や桜の実力が上がったと言うのもあるが、ブッケン自体の成長が緩やかになりつつある事を自分自身感じ取っていた。
その原因の一つにプレースタイルがある。元々活発で押せ押せな性格をしている乃百合は前陣速攻が合っているが、控えめで保守的なブッケンには合っていない。乃百合の真似ばかりしていては、この先置いていかれるのは目に見えていた。
「どうしたの? 考え事?」
「うん。ちょっとね」
部活の帰り、二人並んで歩くブッケンの様子に乃百合が気づいた。
「なに? 私に出来ることなら力になるよ」
「ありがとう、乃百合ちゃん。実はね──、」
ブッケンは乃百合に今日の試合を見た感想を述べた。和子が自らのスタイルを手に入れたように、自分も自分に合ったスタイルを手に入れなければならない。そういう時期に来ているんじゃないか、と。
「そっかー。じぁあさ【カットマン】に挑戦してみたら?」
「カットマン?」
「そう! ブッケンの我慢強さや粘り強さってカットマンに向いてると思うんだよね。私もブッケンのそういう所好きだし、尊敬してる。私には絶対に勝てない部分だと思うんだよね」
「乃百合ちゃん……カットマン、か」
乃百合に褒められたブッケンは頬を赤く染めた。
カットマン。確かにブッケンにピッタリのスタイルだと思うが、前陣速攻からいきなりのカットマンへの転向。正直不安も大きい。
「ブッケンなら出来るよ! やるだけやってダメならまた元に戻せばいいんだし」
「……そうだよね。わかった! ちょっとやり方調べてくるね!」
「あ、そうだ! カットマンの事なら翔子先輩に聞いてみようよ。あの人ならきっと教えてくれるからさ!」
「うん! そうだね」
■■■■
──次の日──
二人は早速三年生の教室を訪れた。
三年生の居るフロアは一年生の乃百合達にとっては凄く大人な世界だ。歩くだけで心臓が大きく脈打った。
「た、確か二人ともC組だから、ここ……だよね?」
「う、うん……行こう」
「ちょっブッケン、押さないでよ……」
「だ、だって……」
入口の前でそんな押し問答を繰り広げていた二人は、後ろから声をかけられた。
「何してるの? あなた達」
「いえっ別に怪しい者では──、」
「──って、翔子先輩」
入口で揉み合う二人を見兼ねて翔子から声を掛けてきたのだ。
翔子は二人の話を聞くとこう切り出した。
「なる程ね。確かにそれもあるわね。だったら、私なんかより南に聞いた方がいいかも」
「南先輩ですか?」
「そう。私はただ守って耐えるだけしか出来ないもの。ただスタイルを変えたら強くなるって言うのはちょっと違うと思うんだ。今までやって来た事を活かしながらカットマンをやる。これが一番いいと私は思うな」
「速攻を活かしたカットマン? ですか」
「そうね【カット攻撃型】ってやつかな。カットで耐えて、隙を見て攻撃にも転じる、攻撃型のカットマン。ブッケンにはこれが一番向いていると思うの。そう言った意味で、私じゃなく南の方が適任かなって」
「なる程……」
二人が納得した様子を見せた為、翔子は教室の奥で本を読む南を呼び出した。
二人の前に現れた南は、相変わらずツンとした雰囲気を出しており、少々気後れしてしまう。
「──、という訳なんです。南先輩、どうか私にカットマンの事教えてください!」
「あの、私からもお願いします。ブッケンにカットマンのやり方を教えてあげて下さい」
頭を下げる二人に対し、南はメガネを指で直すとこう告げた。
「あなた達、そういう事は──、」
「そ、そうですよね受験前ですもんね……」
「何言ってんのよ。遠慮しないで言いなさいって言ってるのよ。今日の部活後、ちょっと時間ある? 私は図書室で勉強してるから、終わる頃に見に行くね」
乃百合とブッケンはお互い顔を見合わせた後、南の手を取りお礼を言った。
そしてこの日より、ブッケンのカットマン転向作戦が始まるのだった。
■■■■
──そんなある日──
いつもの様に乃百合とブッケンが仲良く並んで学校の廊下を歩いている時だった。
丁度職員室の前を通りかかった際、同じ部員で一年生の田中深月が職員室から出てきた所に出くわした。
「あ、深月ちゃーん! やっほー」
「乃百合ちゃん」
「どうしたの? まさか呼び出し?」
「ううん。違うの」
「そっかー。今日の部活、また一緒にサーブ練習やろうね」
乃百合は深月の表情からこれ以上詮索するのは良くないと判断し、話を部活に切り替えた。
「あのね。乃百合ちゃん……」
「ん?」
「私…………辞めるの。部活」
「えっ…………」
田中深月もまた、和子の試合を見て考えさせられた一人だった。
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