しぇいく!

風浦らの

文字の大きさ
37 / 96
第二章【越】

選択肢

しおりを挟む
    ■■■■

    小岩川和子の成長を目の当たりにした部員の中には、考えさせられる者達がいた。
    六条舞鳥もその一人だ。
    ブッケンはここ最近伸び悩んでいた。
    練習ではまひると海香に勝てないのは勿論、乃百合や桜にも勝てない日々が続いている。
     乃百合や桜の実力が上がったと言うのもあるが、ブッケン自体の成長が緩やかになりつつある事を自分自身感じ取っていた。
    その原因の一つにプレースタイルがある。元々活発で押せ押せな性格をしている乃百合は前陣速攻が合っているが、控えめで保守的なブッケンには合っていない。乃百合の真似ばかりしていては、この先置いていかれるのは目に見えていた。

    「どうしたの?    考え事?」
    「うん。ちょっとね」

    部活の帰り、二人並んで歩くブッケンの様子に乃百合が気づいた。

     「なに?    私に出来ることなら力になるよ」
     「ありがとう、乃百合ちゃん。実はね──、」

     ブッケンは乃百合に今日の試合を見た感想を述べた。和子が自らのスタイルを手に入れたように、自分も自分に合ったスタイルを手に入れなければならない。そういう時期に来ているんじゃないか、と。

    「そっかー。じぁあさ【カットマン】に挑戦してみたら?」
    「カットマン?」
    「そう!    ブッケンの我慢強さや粘り強さってカットマンに向いてると思うんだよね。私もブッケンのそういう所好きだし、尊敬してる。私には絶対に勝てない部分だと思うんだよね」
     「乃百合ちゃん……カットマン、か」

    乃百合に褒められたブッケンは頬を赤く染めた。
    カットマン。確かにブッケンにピッタリのスタイルだと思うが、前陣速攻からいきなりのカットマンへの転向。正直不安も大きい。

    「ブッケンなら出来るよ!    やるだけやってダメならまた元に戻せばいいんだし」
    「……そうだよね。わかった!    ちょっとやり方調べてくるね!」
     「あ、そうだ!    カットマンの事なら翔子先輩に聞いてみようよ。あの人ならきっと教えてくれるからさ!」
    「うん!   そうだね」

    ■■■■

    ──次の日──

    二人は早速三年生の教室を訪れた。
    三年生の居るフロアは一年生の乃百合達にとっては凄く大人な世界だ。歩くだけで心臓が大きく脈打った。

    「た、確か二人ともC組だから、ここ……だよね?」
    「う、うん……行こう」
    「ちょっブッケン、押さないでよ……」
    「だ、だって……」

    入口の前でそんな押し問答を繰り広げていた二人は、後ろから声をかけられた。

    「何してるの?    あなた達」
    「いえっ別に怪しい者では──、」
    「──って、翔子先輩」

    入口で揉み合う二人を見兼ねて翔子から声を掛けてきたのだ。 
    翔子は二人の話を聞くとこう切り出した。

     「なる程ね。確かにそれもあるわね。だったら、私なんかより南に聞いた方がいいかも」
     「南先輩ですか?」
     「そう。私はただ守って耐えるだけしか出来ないもの。ただスタイルを変えたら強くなるって言うのはちょっと違うと思うんだ。今までやって来た事を活かしながらカットマンをやる。これが一番いいと私は思うな」
     「速攻を活かしたカットマン?    ですか」
     「そうね【カット攻撃型】ってやつかな。カットで耐えて、隙を見て攻撃にも転じる、攻撃型のカットマン。ブッケンにはこれが一番向いていると思うの。そう言った意味で、私じゃなく南の方が適任かなって」
     「なる程……」

    二人が納得した様子を見せた為、翔子は教室の奥で本を読む南を呼び出した。
    二人の前に現れた南は、相変わらずツンとした雰囲気を出しており、少々気後れしてしまう。

    「──、という訳なんです。南先輩、どうか私にカットマンの事教えてください!」
    「あの、私からもお願いします。ブッケンにカットマンのやり方を教えてあげて下さい」

    頭を下げる二人に対し、南はメガネを指で直すとこう告げた。

    「あなた達、そういう事は──、」
    「そ、そうですよね受験前ですもんね……」
    「何言ってんのよ。遠慮しないで言いなさいって言ってるのよ。今日の部活後、ちょっと時間ある?    私は図書室で勉強してるから、終わる頃に見に行くね」

     乃百合とブッケンはお互い顔を見合わせた後、南の手を取りお礼を言った。
     そしてこの日より、ブッケンのカットマン転向作戦が始まるのだった。

    ■■■■

    ──そんなある日──

    いつもの様に乃百合とブッケンが仲良く並んで学校の廊下を歩いている時だった。
    丁度職員室の前を通りかかった際、同じ部員で一年生の田中深月が職員室から出てきた所に出くわした。

    「あ、深月ちゃーん!    やっほー」
    「乃百合ちゃん」
    「どうしたの?    まさか呼び出し?」
    「ううん。違うの」
    「そっかー。今日の部活、また一緒にサーブ練習やろうね」

    乃百合は深月の表情からこれ以上詮索するのは良くないと判断し、話を部活に切り替えた。

     「あのね。乃百合ちゃん……」
     「ん?」
     「私…………辞めるの。部活」
     「えっ…………」

    田中深月もまた、和子の試合を見て考えさせられた一人だった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

処理中です...