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第二章【越】
目覚めるライジング
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乃百合が暗闇の中で見つけた物。それは──、
──走ってる……あっ、ぶつかった。可愛いな──
その視線の先には、大慌てで会場に飛び込んで来た海香の姿があった。
海香は試合が始まっていると知ると、すぐ様二階へと駆け上がり、観客席へと向かって行く。
──そう言えば海香先輩には、夏合宿の時、強い相手に勝つ方法を教えて貰ったっけ。なんて言ってたっけな……ああそうだ。私にも武器がちゃんとあるって言ってたんだ。海香先輩が羨む程の武器。結局それってなんだったんだろう──
次は乃百合のサーブ。
今は視界が開け、周りの音も大分聴こえてきた。
二階席では憧れの先輩海香がこちらを見てくれているのが、直ぐに分かった。
──ですよね。色々やったけど、私の武器ってやっぱりアレしかないですよね。この卓球で越えてみせます。見ていて下さい──
乃百合は、二階席の海香に向かって頭の上でピースをして見せた。
それを後ろから見ていたまひる達は、何が起きたか分からない。
「あいつ、この状況でVサインかよ。肝の据わり方じゃあひっくり返っても勝てねぇぜ」
「し、勝利宣言でしょうか?」
高く上がったトス。
落ちてきた所を勢いよく振り抜いた。
こんなに思い切りのいいスイングはいつぶりだろう。最も乃百合らしいサーブが相手コートに襲いかかっていく。
その突然の変化に鶴岡琴女が立ち遅れた。
少し甘くなったレシーブに対して、乃百合は待つ事はもうしない。果敢に前に出て、すかさずボールが跳ねた直後を狙い撃ち抜いた。
「また卓上ドライブ!」
「と言うかアレは──、」
「ライジングドライブ!!」
【ライジングドライブ】ライジングとは、ボールが跳ねた直後の事。つまり、跳ね上がりすぐを叩いたドライブ。ボールの変化やタイミングを見極めるのが非常に難しい。
乃百合の放ったライジングドライブは、いつもよりワンテンポ早い分、鶴岡琴女のレシーブを遅らせ、卓内に戻る事を許さなかった。
これは全中後に乃百合が新たに取り入れた武器であり、この大会の為の裏技──、
【7-10】
「よーっし!!」
得点が決まった瞬間、一際おおきな声で声援を送った者がいた。一同はその声の方へ思わず目を向ける。そこは観客席の二階席。
「あんにゃろう」
「遅いよ」
「「海香先輩!」」
海香は普段こんなにおおきな声を出す娘では無い。状況を素早く理解し、乃百合の背中を精一杯押してくれたのだ。
その思いはチーム全体に伝染していく。
──もっと速く! もっと強く! もっと近くで!──
再び、間髪入れずに乃百合のライジングドライブが炸裂する。
さっきよりもギリギリを狙ったライジングは、鶴岡琴女のラケットよりも遥かに速く駆け抜け、当たった瞬間後方に弾け飛んだ。
「「よーーーしッ!」」
同じく二階席の三年生も負けじと声を出す。
お腹の底から声を出し、乃百合は一人じゃないと盛り立てる。
【8-10】
尚も続く乃百合の攻撃。
前陣速攻は速いが故にミスも出やすい戦型である。ライジングも然り。打点の低いショットは、ネットを越えるだけでもギリギリを狙わなければ成功はしない。
それはとても度胸のいることだ。ましてやミスしたら終わりのこの状況で、乃百合はそれでも前陣にこだわり続けた。
続くラリー。
鶴岡琴女が放った必殺のロングチキータ。琴女にとってみれば、たった一点取れば勝てるのだ。自分の最大の武器で勝負をかけてくる。
──確かに凄いけど、私は毎日もっと凄い人と練習してきたんだ! これくらい、どうって事ないッ!!──
台奥のロングチキータに対して、ボールがバウンドするかしないかのタイミングで当てに行った乃百合。
「おいっ! そりゃいくらなんでも──ッ」
「行け!」
「行っけぇ!!」
ボールが台に付くとほぼ同時に、振り抜かれた超低空のライジングドライブは、ネットスレスレに向かって飛び立った。
そしてボールはそのままネットにぶつかり、勢いを失ってポトリと落ちた。
【9-10】
──なんか、今は全く外す気がしない──
乃百合の度胸がなせる技。少しでも躊躇う事があるならば、このライジングドライブは成功していなかっただろう。
「すっげぇ……何連続ポイントだよ」
「えと、これで五連続ですね」
「鶴岡琴女相手に凄まじいな……」
会場全体がある期待感に包まれていく。
鶴岡琴女にとっては歓迎しない『大逆転』への期待感。
人は大逆転というシナリオに滅法弱い。
乃百合の得意とするは卓上プレー。
その為、鶴岡琴女はどうにか乃百合を後ろに下げようと、深く伸びのあるドライブを打ち込んできた。
──くそッ、後ろに下げさえすれば──
だが、会場の雰囲気さえ味方につけた乃百合は、そんな事では止まらない。
ドライブの跳ね上がりを狙い、これまたライジングドライブで打ち返して見せた。
「────ッ」
【10-10】
全ての逆境を跳ね返し、遂に乃百合が追いついた。
「信じられねぇ……」
「あれが乃百合ちゃんなんですよ!」
下げようにもライジングで打たれてはそんなに効果は無い。
卓球に、相手のコートで一度バウンドさせるというルールがある以上、ライジングで打てる今の乃百合は全てが得意の卓上プレー。
卓上全てが乃百合のテリトリーとなる。
その後、連続得点は途絶えたものの、掴んだ勢いを離すことなく乃百合が大逆転でこのセットを奪い取った。
【13-11】
これでセットカウントが【2-2】
試合は、泣いても笑っても、次で勝者と敗者が決まる、運命の第五セットへと続く。
──走ってる……あっ、ぶつかった。可愛いな──
その視線の先には、大慌てで会場に飛び込んで来た海香の姿があった。
海香は試合が始まっていると知ると、すぐ様二階へと駆け上がり、観客席へと向かって行く。
──そう言えば海香先輩には、夏合宿の時、強い相手に勝つ方法を教えて貰ったっけ。なんて言ってたっけな……ああそうだ。私にも武器がちゃんとあるって言ってたんだ。海香先輩が羨む程の武器。結局それってなんだったんだろう──
次は乃百合のサーブ。
今は視界が開け、周りの音も大分聴こえてきた。
二階席では憧れの先輩海香がこちらを見てくれているのが、直ぐに分かった。
──ですよね。色々やったけど、私の武器ってやっぱりアレしかないですよね。この卓球で越えてみせます。見ていて下さい──
乃百合は、二階席の海香に向かって頭の上でピースをして見せた。
それを後ろから見ていたまひる達は、何が起きたか分からない。
「あいつ、この状況でVサインかよ。肝の据わり方じゃあひっくり返っても勝てねぇぜ」
「し、勝利宣言でしょうか?」
高く上がったトス。
落ちてきた所を勢いよく振り抜いた。
こんなに思い切りのいいスイングはいつぶりだろう。最も乃百合らしいサーブが相手コートに襲いかかっていく。
その突然の変化に鶴岡琴女が立ち遅れた。
少し甘くなったレシーブに対して、乃百合は待つ事はもうしない。果敢に前に出て、すかさずボールが跳ねた直後を狙い撃ち抜いた。
「また卓上ドライブ!」
「と言うかアレは──、」
「ライジングドライブ!!」
【ライジングドライブ】ライジングとは、ボールが跳ねた直後の事。つまり、跳ね上がりすぐを叩いたドライブ。ボールの変化やタイミングを見極めるのが非常に難しい。
乃百合の放ったライジングドライブは、いつもよりワンテンポ早い分、鶴岡琴女のレシーブを遅らせ、卓内に戻る事を許さなかった。
これは全中後に乃百合が新たに取り入れた武器であり、この大会の為の裏技──、
【7-10】
「よーっし!!」
得点が決まった瞬間、一際おおきな声で声援を送った者がいた。一同はその声の方へ思わず目を向ける。そこは観客席の二階席。
「あんにゃろう」
「遅いよ」
「「海香先輩!」」
海香は普段こんなにおおきな声を出す娘では無い。状況を素早く理解し、乃百合の背中を精一杯押してくれたのだ。
その思いはチーム全体に伝染していく。
──もっと速く! もっと強く! もっと近くで!──
再び、間髪入れずに乃百合のライジングドライブが炸裂する。
さっきよりもギリギリを狙ったライジングは、鶴岡琴女のラケットよりも遥かに速く駆け抜け、当たった瞬間後方に弾け飛んだ。
「「よーーーしッ!」」
同じく二階席の三年生も負けじと声を出す。
お腹の底から声を出し、乃百合は一人じゃないと盛り立てる。
【8-10】
尚も続く乃百合の攻撃。
前陣速攻は速いが故にミスも出やすい戦型である。ライジングも然り。打点の低いショットは、ネットを越えるだけでもギリギリを狙わなければ成功はしない。
それはとても度胸のいることだ。ましてやミスしたら終わりのこの状況で、乃百合はそれでも前陣にこだわり続けた。
続くラリー。
鶴岡琴女が放った必殺のロングチキータ。琴女にとってみれば、たった一点取れば勝てるのだ。自分の最大の武器で勝負をかけてくる。
──確かに凄いけど、私は毎日もっと凄い人と練習してきたんだ! これくらい、どうって事ないッ!!──
台奥のロングチキータに対して、ボールがバウンドするかしないかのタイミングで当てに行った乃百合。
「おいっ! そりゃいくらなんでも──ッ」
「行け!」
「行っけぇ!!」
ボールが台に付くとほぼ同時に、振り抜かれた超低空のライジングドライブは、ネットスレスレに向かって飛び立った。
そしてボールはそのままネットにぶつかり、勢いを失ってポトリと落ちた。
【9-10】
──なんか、今は全く外す気がしない──
乃百合の度胸がなせる技。少しでも躊躇う事があるならば、このライジングドライブは成功していなかっただろう。
「すっげぇ……何連続ポイントだよ」
「えと、これで五連続ですね」
「鶴岡琴女相手に凄まじいな……」
会場全体がある期待感に包まれていく。
鶴岡琴女にとっては歓迎しない『大逆転』への期待感。
人は大逆転というシナリオに滅法弱い。
乃百合の得意とするは卓上プレー。
その為、鶴岡琴女はどうにか乃百合を後ろに下げようと、深く伸びのあるドライブを打ち込んできた。
──くそッ、後ろに下げさえすれば──
だが、会場の雰囲気さえ味方につけた乃百合は、そんな事では止まらない。
ドライブの跳ね上がりを狙い、これまたライジングドライブで打ち返して見せた。
「────ッ」
【10-10】
全ての逆境を跳ね返し、遂に乃百合が追いついた。
「信じられねぇ……」
「あれが乃百合ちゃんなんですよ!」
下げようにもライジングで打たれてはそんなに効果は無い。
卓球に、相手のコートで一度バウンドさせるというルールがある以上、ライジングで打てる今の乃百合は全てが得意の卓上プレー。
卓上全てが乃百合のテリトリーとなる。
その後、連続得点は途絶えたものの、掴んだ勢いを離すことなく乃百合が大逆転でこのセットを奪い取った。
【13-11】
これでセットカウントが【2-2】
試合は、泣いても笑っても、次で勝者と敗者が決まる、運命の第五セットへと続く。
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