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第一章【光と闇・そして崩壊】
消失
しおりを挟むプラムベリーまでは目と鼻の先。
町の入口はもうハッキリと見えていた。
森を抜け、この木々を切り開き出来た草原を抜けたらそこはもうプラムベリーだ。
「もう少しだね。急ごう!」
「いや、待て────」
歩みを早めようとした燕をパティークが制した。
「どうしたの? パティ子ちゃん」
「誰か居る」
「えっ? どこに?」
「あそこだ。切り株に座っている」
燕がパティークの指さす方を見ると、確かに切り株に誰かが座っていた。あれは─────
「────メグ!!」
「おい、待て! マスター燕!」
それがメグワーグだと認識した燕は思わず駆け寄った。
「大丈夫! あれメグだから!」
パティークの忠告を無視してメグワーグの元にやって来ると、メグワーグはいつもの様にのらりくらりと燕を出迎えた。
「メグ! よかったぁ! 急に居なくなっちゃうから心配したんだよ!」
「ゃあ。燕ちゃぁん。ゃっぱりきたんだぁ。吸ぅ?」
「なに? 煙草!? こんなの吸ってちゃダメだよメグ!」
「ぇぇ? 燕ちゃんだってちょっと前まで吸ってたじゃなぃ?」
「いや……あれは…………その……。いや、今はそれどころじゃないの! この先のプラムベリーで何かが起こってるの!」
燕に煙草を注意されたメグワーグは惜しそうに煙草を地面で消すと、それをポケットにしまい込んだ。そして一言。
「知ってるょ」
メグワーグは薄ら笑いを浮かべ何かを言いたげだった。
「知ってるの!? メグ、プラムベリーで何が起きてるの!? 教えて!」
「ぃぃょ。教ぇてぁげるょ。今、プラムベリーは煌闇のカラクター達に襲撃されてぃるょ。かなり派手にねぇ」
「やっぱり……それって大丈夫なの!?」
食い気味に質問をして来る燕に対し、メグワーグはユラユラと揺れる木の葉のように質問を返していった。
「見た感じ、煌闇のカラクターは五十人程って感じかなぁ。ココラージュゃコルコーラ、ジェノンっていう面子も居るから苦戦は免れなぃょねぇ。ぁぁそぅそぅ。あとあの子達も居たょ。ヌーとネオストライン─────」
「─────っえ……?
ヌーとネオストラインも居る?
言葉を失った燕に変わり、今度は傍に居たパティークが口を開いた。
「五十人か……プラムベリーの人口に匹敵するな……プラムベリーに戦える奴は何人居るのだ? 答えろ、メグワーグ」
「そんな怖ぃ言ぃ方しなぃでょねぇ。久しぶりに会ったってぃうのにさぁ。まぁ。どうだろぅねぇ? プラムベリーは元々そぅぃぅ集まりじゃぁなぃからねぇ。ふっへへ」
「お前はドMだからな。これくらいでいいだろ? それにしても状況は絶望的だな。プラムベリーが落ちるとなると、いよいよヤバいか……助けに向かいたいが、ココラージュ達相手にどこまで出来るか────」
「パティ子ちゃんがドSなだけでしょ。まぁ。簡単にはぃかなぃだろぉねぇ。だけど、勝っ事は不可能じゃなぃよねぇ」
「なに?」
「ぃるじゃぁなぃ? そこに。マスターって呼ばれてる子がさぁ?」
そう言われたパティークと徳は思わず燕に目を向けた。
「わ、私!?」
「そぅだょ? まぇにも言ったよねぇ? その気になれば、五十体の煌闇のカラクターを全て煌光のカラクターに変える事だってできるんだょぉ? その気になれば、ねぇ。ふっへへ」
「私が……皆を助ける────」
燕はその意味を噛み締めると同時に、本当にそんな事をしてもいいのかと疑問を抱いた。
「とにかく、私達はすぐにプラムベリーに向かわないと! メグも来てくれる?」
「ぁたしはここで見物してるょ。戦ぃは苦手だからねぇ」
「そっか、でもここも安全じゃないかも! メグは遠くに逃げて」
「ぃゃぃゃ。ここで大丈夫だょ。ありがとぅねぇ。燕ちゃん」
「で……でも…………」
「ほっとけマスター燕。こいつはこういう奴だ。私達はとにかく急ごう。ココラージュが来ている以上、皆の安否が最優先だ」
そうパティークに急かされ、燕は徳と共に再びプラムベリーへと向かうことにした。メグワーグの事は心配だったが、メグワーグはそれを意に返さないような不敵な笑みを浮かべて三人を見送っていた。
しかしプラムベリーまであと少しといったところで、思いがけぬアクシデントに見舞われた。
二人の後を追っていた燕だったが、体にある異変を感じ、突然感覚を失うようにその場にへたりこんだ。
「─────燕!?」
「どうした!? 大丈夫か、マスター燕!?」
二人に支えられるように身体を起こした燕は、脚がもつれただけだと言い訳をした。
「ちょっと長旅だったからかな。ごめん、さぁ。急ごう」
しかしこの時燕は、身体(正確には心)から何か大切な物が無くなるような感覚を覚えていた。
まるで自分の一部が消失してしまったかの様な、そんな感覚が確かにあった─────
そんな事もあったが三人は遂にプラムベリー入口辿り着いた。
が、たどり着いてすぐにその異変に気がつくことになる。
賑やかな町で知られるプラムベリーは嘘のように静まり返り、町中には争ったような形跡もチラホラ見受けられた。
これがただ事では無いのは、誰の目から見ても明らかだ────
「とりあえずいつもリーチアリスの居る中央神殿に向かおう。さぁこっちだ、着いてこい!」
「お、おう!」
三人はより一層足を早め、中央神殿を目指した─────
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