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価値あるチョコレート
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人それぞれ趣味という物があると思う。俺の場合はコレだ。
土曜日だと言うのに、パソコンの画面に張り付きザッピング。その中でも最近のマイブームは、ネットオークションを眺める事だ。
こんな物によく金を突っ込むな。とか、コイツ絶対さくらだろう。と、思いを巡らせながら見るのが止められない。
──そんなある日──
いつもの様にお気に入りのオークションサイトを眺めていたら、少し変わった商品に目が止まった。それは──
「手作りチョコレート?」
そうか、もうすぐバレンタインデーだから、モテない野郎共をカモにしようって腹か。怖い時代になったものだ。とは言え、果たしてこんな物にお金を出す者が居るのだろうか?
案の定出品されてから丸一日が経ったにも関わらず、この『手作りチョコレート』に入札された様子は無く、下限の五十円のままだった。
ちょっとイタズラしてやろうと、俺の興味が動いたのは言うまでもない。俺はマウスを動かし『手作りチョコレート』に入札をした。価格は六十円。
この位なら仮に落札しても問題ないだろうという軽い気持ちだった。すると直ぐに反応が返ってきた。
『入札ありがとうございます。実はコレ私の手作りなんです』
という文章と共に、画像が一枚のアップされる。そこには、とびきりの美女では無いが、素朴ながらも可愛らしい女子校生位の女の子が映っていた。
「なかなか可愛いじゃないか。この子の手作りかぁ……」
写真がアップされてから間もなく、俺とは別に入札が入る。価格は百円。入札者の名前は『ツンデレ王子』。
写真に釣られた感満載な奴だなと、俺は更に面白くなり、入札額を釣り上げる。
因みに俺のユーザーネームは『ダンディ伯爵』だ。ここから俺とツンデレ王子の熱い戦いが始まる。俺が十円上げれば、彼は二十円上げてくる。
そんなにこの手作りチョコレートが欲しいのだろうか。
価格が千円の大台に差し迫ったその時、出品者から新たなるメッセージが届いた。
『コレ、実は裸にエプロン姿で作ったんです』
は、裸エプロンだとぉぉぉ!!!
こんな素朴な少女が、あろう事か裸にエプロン姿でこのチョコレートを作ったと言うのか! 実にけしからんんん!!
俺の中で何かが弾ける音がした。
こ、この子が──、
■■■■
気づけば俺は三千円と入力していた。
こんなチョコレートに三千円……
ま、まぁこの子が一生懸命作ったんだし? 誰かが買ってあげなきゃ可愛そうだし?
勝ちを確信し、自分を説得する事に必死になっていた矢先だった──、
「い、一万円だとおおお!?」
俺は目を疑った。たかが手作りチョコレート如きに、こんな大金を叩くだなんて、アホのする事だ。コイツは本物のアホだ。手元にチョコレートが届いた瞬間、後悔するに決まっている。
ふと我に返り、そっとオークションサイトを閉じようとした。その時──、
『これ箱に移す時に、オッパイで挟んで入れたんです。購入者様には、是非味わって食べて欲しいなぁ』
──ッッッ!!!!
なん……だと……
俺は自分でも気づかないうちに、三万円と入力していた。
更に追い討ちをかけるように、出品者からのメッセージが届く。
『作ってる時、結構汗かいちゃった。少し塩っぱかったらゴメンね! な~んてね!』
お、落ち着け俺。冷静になるんだ。結局纏めると──、
ただの『素朴な女子校生が、裸エプロン姿で作り、梱包する際にオッパイで挟んだ汗入りのチョコレート』だぞ。
『最近彼氏と別れちゃって……私寂しいよぅ』
「男なら買うしかねぇだろうがよッッッ!!!!」
結局俺は、たかが『手作りチョコレート』を十万円で落札してしまった。しかし後悔等していない。
なんなら終わった後は、心地良い満足感でいっぱいだった。
──二月十四日──
俺は手作りチョコレートをラッピングされたまま、会社に持ってきていた。一粒十万円のチョコレートを、皆の前で自慢げに食べてやろうと思ったからだ。
昼休みになり、わざとらしくチョコレートの箱を机の上に取り出す。その動きに一番に反応して来たのは、隣の席先輩だった。
「お、おま、それ……」
「あぁ、コレっすか。いや~参ったなぁ」
俺が頭を掻きながら、シナリオ通りの台詞を言うか言わないかのタイミングで、先輩が俺の持ってるチョコレートと、全く同じにラッピングされた箱を机の上に出した。
「え……そ、それって」
「あぁ。先日あるネットオークションで買った。一旦はダンディ伯爵とやらに強奪されたが、その後直ぐに新しく出品されてな。即決価格の八万円で買ったよ……」
なんという事だ。ま、まさか──
「ツンデレ王子!?」
「え、おま、ダンディ伯爵!?」
俺達が衝撃の会話をしていたその時。向かい側の席から後輩の話し声が耳に入ってきた。
「いや~この間、オークションで手作りチョコレートを出品したらさぁ、一個ウン万円で売れちゃってさぁ──今日は俺が昼飯奢るわ」
更なる事実に死にたくなった。今すぐこの後輩を警察に突き出してやりたいところだが──
言えねええええええええよ!!!
呆然と見つめ合ったあと、俺と先輩は仲良くチョコレートを噛み締めた。
「「苦ぇぇ……ビターかよ」」
おしまい。
土曜日だと言うのに、パソコンの画面に張り付きザッピング。その中でも最近のマイブームは、ネットオークションを眺める事だ。
こんな物によく金を突っ込むな。とか、コイツ絶対さくらだろう。と、思いを巡らせながら見るのが止められない。
──そんなある日──
いつもの様にお気に入りのオークションサイトを眺めていたら、少し変わった商品に目が止まった。それは──
「手作りチョコレート?」
そうか、もうすぐバレンタインデーだから、モテない野郎共をカモにしようって腹か。怖い時代になったものだ。とは言え、果たしてこんな物にお金を出す者が居るのだろうか?
案の定出品されてから丸一日が経ったにも関わらず、この『手作りチョコレート』に入札された様子は無く、下限の五十円のままだった。
ちょっとイタズラしてやろうと、俺の興味が動いたのは言うまでもない。俺はマウスを動かし『手作りチョコレート』に入札をした。価格は六十円。
この位なら仮に落札しても問題ないだろうという軽い気持ちだった。すると直ぐに反応が返ってきた。
『入札ありがとうございます。実はコレ私の手作りなんです』
という文章と共に、画像が一枚のアップされる。そこには、とびきりの美女では無いが、素朴ながらも可愛らしい女子校生位の女の子が映っていた。
「なかなか可愛いじゃないか。この子の手作りかぁ……」
写真がアップされてから間もなく、俺とは別に入札が入る。価格は百円。入札者の名前は『ツンデレ王子』。
写真に釣られた感満載な奴だなと、俺は更に面白くなり、入札額を釣り上げる。
因みに俺のユーザーネームは『ダンディ伯爵』だ。ここから俺とツンデレ王子の熱い戦いが始まる。俺が十円上げれば、彼は二十円上げてくる。
そんなにこの手作りチョコレートが欲しいのだろうか。
価格が千円の大台に差し迫ったその時、出品者から新たなるメッセージが届いた。
『コレ、実は裸にエプロン姿で作ったんです』
は、裸エプロンだとぉぉぉ!!!
こんな素朴な少女が、あろう事か裸にエプロン姿でこのチョコレートを作ったと言うのか! 実にけしからんんん!!
俺の中で何かが弾ける音がした。
こ、この子が──、
■■■■
気づけば俺は三千円と入力していた。
こんなチョコレートに三千円……
ま、まぁこの子が一生懸命作ったんだし? 誰かが買ってあげなきゃ可愛そうだし?
勝ちを確信し、自分を説得する事に必死になっていた矢先だった──、
「い、一万円だとおおお!?」
俺は目を疑った。たかが手作りチョコレート如きに、こんな大金を叩くだなんて、アホのする事だ。コイツは本物のアホだ。手元にチョコレートが届いた瞬間、後悔するに決まっている。
ふと我に返り、そっとオークションサイトを閉じようとした。その時──、
『これ箱に移す時に、オッパイで挟んで入れたんです。購入者様には、是非味わって食べて欲しいなぁ』
──ッッッ!!!!
なん……だと……
俺は自分でも気づかないうちに、三万円と入力していた。
更に追い討ちをかけるように、出品者からのメッセージが届く。
『作ってる時、結構汗かいちゃった。少し塩っぱかったらゴメンね! な~んてね!』
お、落ち着け俺。冷静になるんだ。結局纏めると──、
ただの『素朴な女子校生が、裸エプロン姿で作り、梱包する際にオッパイで挟んだ汗入りのチョコレート』だぞ。
『最近彼氏と別れちゃって……私寂しいよぅ』
「男なら買うしかねぇだろうがよッッッ!!!!」
結局俺は、たかが『手作りチョコレート』を十万円で落札してしまった。しかし後悔等していない。
なんなら終わった後は、心地良い満足感でいっぱいだった。
──二月十四日──
俺は手作りチョコレートをラッピングされたまま、会社に持ってきていた。一粒十万円のチョコレートを、皆の前で自慢げに食べてやろうと思ったからだ。
昼休みになり、わざとらしくチョコレートの箱を机の上に取り出す。その動きに一番に反応して来たのは、隣の席先輩だった。
「お、おま、それ……」
「あぁ、コレっすか。いや~参ったなぁ」
俺が頭を掻きながら、シナリオ通りの台詞を言うか言わないかのタイミングで、先輩が俺の持ってるチョコレートと、全く同じにラッピングされた箱を机の上に出した。
「え……そ、それって」
「あぁ。先日あるネットオークションで買った。一旦はダンディ伯爵とやらに強奪されたが、その後直ぐに新しく出品されてな。即決価格の八万円で買ったよ……」
なんという事だ。ま、まさか──
「ツンデレ王子!?」
「え、おま、ダンディ伯爵!?」
俺達が衝撃の会話をしていたその時。向かい側の席から後輩の話し声が耳に入ってきた。
「いや~この間、オークションで手作りチョコレートを出品したらさぁ、一個ウン万円で売れちゃってさぁ──今日は俺が昼飯奢るわ」
更なる事実に死にたくなった。今すぐこの後輩を警察に突き出してやりたいところだが──
言えねええええええええよ!!!
呆然と見つめ合ったあと、俺と先輩は仲良くチョコレートを噛み締めた。
「「苦ぇぇ……ビターかよ」」
おしまい。
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