ノータイトル

たら

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(美紅side)

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 商店街をふらついていたら偶然、知り合いに出くわした。
 若い男の子が二人、談笑しながら此方に歩いてくる。ミナトくんと鳴海くんだ、無事に仲直りしたらしい。


 でも、ミナトくんの表情をみて私は悟ってしまった。

「……はぁ、なんだ。」

 セフレの関係は終わってしまったのね。

 最近ミナトくんから指名されなくなったのも、そういうことか。
 私はフードを深くかぶり、二人に顔がバレないよう下を向いて、彼らの隣を通り過ぎた。



「美紅ちゃん、ですよね?」



 後ろでミナトくんの声がした。
 低めの穏やかな声音に、私はすぐにでも振り向いて抱き着きたくなってしまった。だけど我慢して、知らない人のフリを続けて歩を進める。もう二人の間に私は必要ないのだから。その事実には疎外感から寂しくなってしまうけど、私なんかが役に立てたなら満更悪い気もしない。



「色々、ありがとうございました。」




 返事の代わりに、振り返らず片手だけを上げた。
 ミナトくんが最後にくれた言葉を糧に、明日からも頑張ります。












 商店街を通り抜けたところで、私はフードを取った。


「はーあ、マジかー。付き合っちまったか、あいつら」


 明日から何を糧にして生きりゃあいいんだよ私は。
 正直に言うと私はかなりミナトくんを気に入っていた。「実はシングルマザーでプロフィールの年を五つごまかしている」と言っても、全く動じなかったのが良かった。私に興味がないだけだったりして、それはさておき。
 私と出会った頃のミナトくんは、大人の色気を纏うどこか物憂げな人という印象だった。彼女を亡くしたとかナントカは詳しく知らないけど、まだ若いのに風俗狂いになったら可哀想だなんて思ってしまった私は、彼に会うたびほかのお客さんよりも何倍も力を入れて楽しませたし癒して慰めた。だけどそんな私の努力も露知らず、そのうち鳴海くんの話題が増え、鳴海くんが中心のプレイが増えた。ミナトくんは元気になってくれたけど、それは私ではなく鳴海くんのおかげだろう。私からしたら鳴海くんは邪魔な泥棒ネコでしかない。
 ミナトくんは、鳴海くんのことを好きだと認めたくないのか気を紛らわせるようによく私を褒めてくれたけど、結局は最後まで私を本気で好きになってくれることもなかった。



「……あ」
 買いそびれた煙草を手に入れるべく、コンビニへ戻る。


 ミナトくんに煙草を勧めたのは私だ。
 キスしたとき私と同じ匂いがするの好きだったんだけど、もうその楽しみも鳴海くんに奪われてしまったし。ああいう『隠れ淫乱美少年』が好みだなんて、ミナトくんの趣味にも呆れてしまうわ。

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