贅沢悪女と断罪された私が、ドレスを脱いだら最強妃になりました。

専業プウタ

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15.僕の子供?

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銀髪に光り輝くルビー色の瞳、全てを手にしたような満ちたりた表情で僕を見つめてくれるシェリル。ずっと欲しかった彼女が手に入る時なのに、僕の心は不安に犯されそうで気が狂いそうだった。

「オスカー・アベラルド。そなたは、シェリル・ヘッドリーを妻とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、妻を想い添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」
 
「はい、誓います」
僕の誓いの言葉にシェリルが感極まって目を潤ませる。それでも涙が溢れないように必死に目を力をこめる彼女が愛おしくて堪らない。
 
「シェリル・ヘッドリー、そなたは、オスカー・アベラルドを夫とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分つまで愛を誓い、夫を想い添うことを、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」

夢に何度も見た瞬間。ずっと想い続けたシェリルが僕のものになる。今、この時彼女の周りを彷徨くフレッドリーも、野心に燃えるカロリーヌも関係ない。

「はい、誓います」

───『この世界にはあなたと私二人だけ』

シェリルは視線だけで想いを語ってくる。僕たちが背負うものは大きい。ゆくゆくはこの国を統べる立場になる。楽しい事ばかりではなくて、苦しい事ばかり経験させてしまうかもしれない。それでも、彼女にはいつも笑っていて欲しい。

風がとても強くて雲が凄いスピードで流されていた。その雲が逃げていくように見えて例えようのない恐怖を感じる。

結婚式の最中ふと強い視線を感じた。
視線を感じた先を見ると真っ赤な礼服を着たフレデリックが僕たちを見て不敵に笑っていた。

結婚式が終わり湯浴みをしていると、突然浴室の扉が開かれる。

「無礼だ!」と叫ぼうとしたが、顔面蒼白の補佐官の姿を見て息を呑み押し黙った。

「オスカー王子殿下、カロリーヌ様がお子様をご出産致しました。アメジストの瞳をした元気な男の子です」

浴槽から出ると浮かばされた赤い薔薇の花びらが体にこびりついてくる。まるで自分の周りに強かに立ち回る人間たちが、僕とシェリルの幸せを邪魔するようで気持ち悪く感じた。

浴槽から出ると、手渡されたロイヤルブルーのガウンを羽織る。

「オギャー、オギャー」
赤子の泣き声が聞こえる先を見ると、白いレースの清楚なドレスを着たカロリーヌが空色の髪にアメジストの瞳をした赤子を抱いていた。

「オスカー王子殿下、抱いてください。殿下の子です」
誰がこの強かで醜悪な下心を持つ女をこの大切な日に王宮の奥まで引き入れたのだろう。

今日はずっと待ち侘びた愛しいシェリルとの結婚式で、彼女が成人になった誕生日である。

シェリルが赤子だった弟を愛おしくて仕方ないと言っていたが、僕は目の前の赤子を煩わしい塊としか感じない。

(やっぱり、おかしい。自分の子とは思えない)

それに、タイミングよく出産をして、元気に現れるカロリーヌにも不自然さを感じる。夜伽の座学の延長で学んだ知識では、出産は馬車に轢かれるくらいの苦痛がありしばらくは起き上がれないと聞いていた。

「その子が僕の子だとは信じ難い」
「何を言ってるのですか? この子は間違いなくアベラルド王家の血を引く王族の子です」

「王族の子」という言葉の力に待機していた補佐官が後退りして、部屋の外に出る。この件がシェリルの耳に入りでもしたら、その衝撃は計り知れない。

僕は咄嗟に彼を止めようと手を伸ばすが、その手をカロリーヌに取られ赤子を抱かせられた。

「オギャー、オギャー」
むくんだ真っ赤な顔で泣いて全てを台無しにする手元にある子が忌々しい。ただ、弱々しい体は大切に扱わないと壊れそうで僕は震える手でその子を支え続けた。

「不細工な子だ。僕の子であるはずがない」
「ふふっ、オスカー王子殿下って優しい方だと聞いていたのに、意地悪なんですね。赤子は皆、猿やゴリラのような顔をしているのですよ」

余裕で笑いながら僕の手に手を添えてくる女の強かさに身慄いした。
ずっと準備した日が、たかだかこんな身分も低い未亡人の女の企みで崩壊するというのか。
そもそも、一連の出来事があまりに僕を陥れるように仕組まれてさえ感じる。眼前の女はいかにも頭が悪そうで、このような計画を一人でできるとは思えない。

僕はそっと赤子から手を離すと、女は慌ててその子を支えた。

「危ない。赤ちゃんはガラス細工のように繊細なんですよ。私も子を持つのは初めてで不慣れですが、協力してこの子を育てましょうね。シェリル様も歓迎してくれますわ」

女の口からシェリルの名前が出され、頭に血が上り気がつくと彼女の首を締め上げていた。

「く、くぅ⋯⋯」

「何もかも上手くいったと、したり顔をするな。その子は血縁検査が終わるまでは丁重に扱う。お前は今すぐ僕の目の前から消えろ!」

首からそっと手を離すと、女は静かに子を床に置き不敵な笑みをして去っていった。

「オギャー、オギャー」
ひたすらに泣く赤子を前に僕はなす術もなく跪く。
「どうしたらいいんだ。どうしたら⋯⋯」

シェリルを失う恐怖と目の前の生き物をどうすれば良いのか分からなくて追い詰めらていた。

「オスカー」
突如、頭上から震える声がして顔を上げると僕を不安そう見下ろす母上がいた。
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