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11.ヒーロー参上
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「ダウト!」
「えっ? 何?」
急に玲さんがハンドルを切って、方向転換した。
(う、嘘、どこ行くの? 私、どこで間違った?)
「南野美湖と友達になったのは、前回だよ。凛音、時を戻る前の記憶があるんだね」
「う、嘘! もしかして、玲さんも記憶があるの? ま、前の時間で私を殺したよね。時空警察に捕まるんだから!」
思わず発した言葉に玲さんが爆笑する。
「時空警察って何? 本当に凛音は馬鹿だなぁ⋯⋯僕、凛音の馬鹿なところ凄い好き。ちゃんと凛音は僕にとって知れば知るほど好きになるような人間だよ」
私が馬鹿じゃなくて、株価や為替について語るような賢そうな女だったら彼に目を付けられずに済んだのだろうか。
(もっと、真面目に勉学に勤しめば良かった⋯⋯)
「私の事をまた殺すの?」
自分が涙声になっている事に気が付く。痛いのも苦しいのも嫌だし、また時を戻れるかも分からない。
「そんなに怯えないでよ。ただ、もっと凛音が正直になるように少し厳しく躾けるかな。僕は思った事は正直に言う君が好きだから。僕の前で嘘は許さない」
流し目で私を見る玲さんの視線は、見つめられると石になりそうな程に恐ろしく冷たかった。
「私、嘘なんてついてない」
「さっきついたよなぁ。南野美湖との出会いが自分を変えた? 笑わせんなよ。小柳真紘と出会って女になったから変わったんだろうが、このアバズレが!」
急に乱暴な口調になった玲さんが、アクセルを踏み込んでスピードを上げた。私は警察がこのスピード違反の車を取り締まってくれないかと願った。
私の頭は恐怖を通り越してパニックになっていった。
「私、HIROとは何もなかったよ。玲さん、ちゃんと外でも隠しカメラを仕掛けてよ。盗聴しかしてないから、音声だけ聞いて誤解してるから!」
「誤解?」
「玲さんは処女厨なの? 大丈夫、あなたの婚約者は、まだ処女です! 生娘です!」
私の必死の訴えが玲さんに届いたのか、車のスピードが少し弱まる。
ホットしたのも束の間、突然誰かが車の前に飛び出して来て玲さんが急ブレーキを掛けた。私はその反動で体が揺れて、一瞬冷静になり目の前の人影に目を凝らした。
「えっ? HIRO?」
目の前に現れたのはスピード違反を取り締まる警察官でもなく、汗だくのHIROだった。
私は慌ててドアのロックを外し、外に出る。
すると、HIROは私の手を引き車が入り込めない細い道に入って走っていった。ついてくのも大変な早いスピードだけれど、玲さんから逃げたい一心で必死について行った。
10分くらいしたところで、路地裏の秘密基地のような小さな家の中に入って行く。
玄関のところで私は思わず彼に尋ねた。
「えっ? 何? HIROの正体って時空警察?」
「はぁ? 何言ってんだよ。凛音、お前が心配でこっちは必死に探していたんだよ」
急に骨が折れそうな程に強く抱きしめられ、私は思いっきり彼の胸を叩いた。
「やめて! 私に触らないで! それに何で呼び捨て? 今日会ったばかりなのに馴れ馴れしいよ」
「だって、お前は俺たちの仲間になるんじゃねえの?」
「私は『スーパーブレイキン』じゃなくて、『JKロック』に入りたいって言ったの!」
私は草井奈美子に接触して、HIROを殺害したかも知れない彼女を引き剥がそうと企んでいた事を思い出した。
「凛音ちゃん、弟が馴れ馴れしくしてごめんね。貴方があまりに可愛くて魅力的で、ちょっと恋しちゃってるのかも」
クスクス笑いながら、部屋の奥から出て来たのは草井奈美子だった。
「奈美子! 俺は別にこいつに対してそんなんじゃねえから! 俺はただ曽根崎玲の被害者を増やしたくないだけだ」
2人のやり取りを聞いて、私の中に疑問が生まれる。
「えっ? 姉弟? だって、苗字も違うし顔も似てない⋯⋯」
私の呟きに2人が顔を見合わせる。
その眉を下げた表情が似ていて、彼らは本当に姉弟なのだと思った。
「凛音ちゃんは私たちの仲間だから、一度ちゃんと話しておいた方が良いと思って。まあ、上がって」
私は奥に進もうと一歩踏み出すと派手に前に転んだ。
「い、痛い。何でこんなところに段差⋯⋯」
「段差って玄関だから当たり前だろ」
私は自分の家のエントランスが洋風で段差がないので油断していた。
私を起こそうとHIROが手を掴んで引き上げようとする。
「や、やめて! 私に触らないで! 自分で立つから」
私は彼の手を振り払い、自分で立ち上がる。
靴を揃えていると、後ろからHIROの戸惑ったような声がした。
「何? 俺に触られるのはそんなに嫌? 俺、そんなに嫌われてる? それとも、お前も曽根崎玲に酷い事されたんじゃ⋯⋯」
「玲さんと何かあったの?」
私の言葉に反応するように、HIROと草井美奈子は苦い顔をした。
「凛音ちゃん、完璧で素敵な婚約者の信じられないような話を聞く気はある?」
草井奈美子が真剣な表情で尋ねてくるので、私は静かに頷いた。
「完璧で素敵な婚約者って、凛音と曽根崎玲の婚約は解消したんだろ?」
「そんな簡単には婚約解消できなかったよ。お爺ちゃまは玲さんの味方だもん」
「何だよソレ⋯⋯」
HIROは怒りの表情を浮かべながら、私を部屋の奥へと案内した。
「えっ? 何?」
急に玲さんがハンドルを切って、方向転換した。
(う、嘘、どこ行くの? 私、どこで間違った?)
「南野美湖と友達になったのは、前回だよ。凛音、時を戻る前の記憶があるんだね」
「う、嘘! もしかして、玲さんも記憶があるの? ま、前の時間で私を殺したよね。時空警察に捕まるんだから!」
思わず発した言葉に玲さんが爆笑する。
「時空警察って何? 本当に凛音は馬鹿だなぁ⋯⋯僕、凛音の馬鹿なところ凄い好き。ちゃんと凛音は僕にとって知れば知るほど好きになるような人間だよ」
私が馬鹿じゃなくて、株価や為替について語るような賢そうな女だったら彼に目を付けられずに済んだのだろうか。
(もっと、真面目に勉学に勤しめば良かった⋯⋯)
「私の事をまた殺すの?」
自分が涙声になっている事に気が付く。痛いのも苦しいのも嫌だし、また時を戻れるかも分からない。
「そんなに怯えないでよ。ただ、もっと凛音が正直になるように少し厳しく躾けるかな。僕は思った事は正直に言う君が好きだから。僕の前で嘘は許さない」
流し目で私を見る玲さんの視線は、見つめられると石になりそうな程に恐ろしく冷たかった。
「私、嘘なんてついてない」
「さっきついたよなぁ。南野美湖との出会いが自分を変えた? 笑わせんなよ。小柳真紘と出会って女になったから変わったんだろうが、このアバズレが!」
急に乱暴な口調になった玲さんが、アクセルを踏み込んでスピードを上げた。私は警察がこのスピード違反の車を取り締まってくれないかと願った。
私の頭は恐怖を通り越してパニックになっていった。
「私、HIROとは何もなかったよ。玲さん、ちゃんと外でも隠しカメラを仕掛けてよ。盗聴しかしてないから、音声だけ聞いて誤解してるから!」
「誤解?」
「玲さんは処女厨なの? 大丈夫、あなたの婚約者は、まだ処女です! 生娘です!」
私の必死の訴えが玲さんに届いたのか、車のスピードが少し弱まる。
ホットしたのも束の間、突然誰かが車の前に飛び出して来て玲さんが急ブレーキを掛けた。私はその反動で体が揺れて、一瞬冷静になり目の前の人影に目を凝らした。
「えっ? HIRO?」
目の前に現れたのはスピード違反を取り締まる警察官でもなく、汗だくのHIROだった。
私は慌ててドアのロックを外し、外に出る。
すると、HIROは私の手を引き車が入り込めない細い道に入って走っていった。ついてくのも大変な早いスピードだけれど、玲さんから逃げたい一心で必死について行った。
10分くらいしたところで、路地裏の秘密基地のような小さな家の中に入って行く。
玄関のところで私は思わず彼に尋ねた。
「えっ? 何? HIROの正体って時空警察?」
「はぁ? 何言ってんだよ。凛音、お前が心配でこっちは必死に探していたんだよ」
急に骨が折れそうな程に強く抱きしめられ、私は思いっきり彼の胸を叩いた。
「やめて! 私に触らないで! それに何で呼び捨て? 今日会ったばかりなのに馴れ馴れしいよ」
「だって、お前は俺たちの仲間になるんじゃねえの?」
「私は『スーパーブレイキン』じゃなくて、『JKロック』に入りたいって言ったの!」
私は草井奈美子に接触して、HIROを殺害したかも知れない彼女を引き剥がそうと企んでいた事を思い出した。
「凛音ちゃん、弟が馴れ馴れしくしてごめんね。貴方があまりに可愛くて魅力的で、ちょっと恋しちゃってるのかも」
クスクス笑いながら、部屋の奥から出て来たのは草井奈美子だった。
「奈美子! 俺は別にこいつに対してそんなんじゃねえから! 俺はただ曽根崎玲の被害者を増やしたくないだけだ」
2人のやり取りを聞いて、私の中に疑問が生まれる。
「えっ? 姉弟? だって、苗字も違うし顔も似てない⋯⋯」
私の呟きに2人が顔を見合わせる。
その眉を下げた表情が似ていて、彼らは本当に姉弟なのだと思った。
「凛音ちゃんは私たちの仲間だから、一度ちゃんと話しておいた方が良いと思って。まあ、上がって」
私は奥に進もうと一歩踏み出すと派手に前に転んだ。
「い、痛い。何でこんなところに段差⋯⋯」
「段差って玄関だから当たり前だろ」
私は自分の家のエントランスが洋風で段差がないので油断していた。
私を起こそうとHIROが手を掴んで引き上げようとする。
「や、やめて! 私に触らないで! 自分で立つから」
私は彼の手を振り払い、自分で立ち上がる。
靴を揃えていると、後ろからHIROの戸惑ったような声がした。
「何? 俺に触られるのはそんなに嫌? 俺、そんなに嫌われてる? それとも、お前も曽根崎玲に酷い事されたんじゃ⋯⋯」
「玲さんと何かあったの?」
私の言葉に反応するように、HIROと草井美奈子は苦い顔をした。
「凛音ちゃん、完璧で素敵な婚約者の信じられないような話を聞く気はある?」
草井奈美子が真剣な表情で尋ねてくるので、私は静かに頷いた。
「完璧で素敵な婚約者って、凛音と曽根崎玲の婚約は解消したんだろ?」
「そんな簡単には婚約解消できなかったよ。お爺ちゃまは玲さんの味方だもん」
「何だよソレ⋯⋯」
HIROは怒りの表情を浮かべながら、私を部屋の奥へと案内した。
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