魅惑の御曹司の破滅愛から逃げたら、推しの溺愛が待ってました。

専業プウタ

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21.ヒーローの帰還

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「私、まだ未成年だよ。ここから先はダメ。玲さん、罪に問われるよ』
「僕は凛音とこういう時間、沢山過ごしてきたんだけどな」
(知ってます。思い出しましたから⋯⋯)

「でも、今の私は17歳だし、玲さん今は婚約破棄するかどうかの審査期間中でしょ。これ以上の行為をしたらレッドカードだから」

 玲さんは私の言葉を聞いて妖しく笑うと、ベッドから離れた。
 私はなんとか危機を乗り越えた。

「玲さん、私、今から宿題をやりたいんだけど」
「凛音が勉強?」
 玲さんは鼻で笑うと私の頬に手を当ててきた。
 私なりに努力しようと思っていることを笑われて、流石に頭に来た。
 
(玲さん、私を平気で殺せる人なんだよね⋯⋯)
 
 二人っきりの部屋で玲さんを怒らせると殺されてしまいそうで怖い。
「僕が教えてあげよっか?」
 艶めかしい表情で私の頬を撫で回す玲さんは私を誘惑している。第二形態の大人の玲さんの破壊力は絶大だ。


「保健体育なんだけど⋯⋯」
 私の言葉に玲さんが唾を飲み込むのが分かった。
 私は彼が私の体を弄ぶのが好きで仕方ないことも知っている。私自身の事も気に入っているのだろう。
 でも、それは彼の理想の中の私で本当の私ではない。

「男女別の分野で玲さんに教えて貰うのは恥ずかしい。それに、教科書も実家に置いてきちゃったから今日は実家に帰らなきゃ」

 玲さんは苦笑しながら私を見ていた。出鱈目を言っているなんて彼には露見しているだろう。彼からプレゼントされたマットレスにも盗聴器が仕込んであるかもしれない。私の目を盗んでまた隠しカメラを仕込まれた可能性もある。一度この部屋を離れて、彼がいない時に確認したいと思った。

「実家に送ってくよ。せっかく二人の隠れ家ができたのに寂しいけど⋯⋯」
「隠れ家? ここは、私の一人暮らし用の部屋で、玲さんがもうこの部屋に来ることはないよ。玲さん、私たち一週間後には他人になってる可能性があるのを忘れないで」
 
 玲さんは明らかに真剣に私の話を聞いていない。彼は結局婚約を解消しないと思っているようだった。妖しくほくそ笑んだ彼は私を実家まで送り届けた。

「玲さん、送ってくれてありが⋯⋯」
 門の前で私が玲さんにお礼を言っていると、彼の目が私ではない何かを凝視しているのに気がついた。
 玲さんの視線の先を追って振り向くと、思ってもない人がいた。
 柏原家に見切りをつけて海外逃亡したと思っていた兄の博樹だ。

「お兄様? 何で⋯⋯」
「凛音、久しぶりだね。曽根崎さん、お見送り頂いてありがとうございます。次からは結構です」
 玲さんは兄の言葉に何かを理解したような表情をした。

「博樹さんお久しぶりですね。ロンドン支社にご自分から希望して行かれたと聞きましたが、ロンドンは食事もまずいし天候も悪いし退屈だったでしょう」
「ふふっ、曽根崎さんは意外と視野が狭いのですね。ロンドンは素晴らしいところですよ。見知らぬ場所で様々な知見を得れて退屈とは無縁でした」
 二人の会話はお互い探り合いのような形で行われていた。
 
 兄の横顔を見ているだけで私は胸が熱くなる。
 彼は私を溺愛してくれていたのに、家の環境がおかしくなるなり父の会社『トライアンフ』のロンドン支社に逃げてしまった。
 家族に興味のない父、自分だけを見て欲しい母とは違い兄は私を愛してくれていると思っていたからショックだった。

 母譲りの抜群のルックスと父譲りの賢さを持った両親の良い所だけを集めたような兄は、私の劣等感を刺激する存在でもあった。

 自分とは異なり逃げ道を持つ優秀な兄。
 優しくて頼りになる自慢の兄だった。

「でも、そこに凛音はいなかったでしょ。凛音のいない場所なんて退屈だったはずだ」
 玲さんが兄に向かって挑発的な表情を浮かべる

「俺は世界中のどこにいても凛音のことを考えてますよ」
 私は自分を見捨てて海外に行った兄の言葉を信じられないような気持ちで聞いていた。私は兄がいなくなった時、彼に見限られたと思い苦しかった。

「その程度ですか⋯⋯それでは僕には勝てないな。今日のところは失礼します」

 玲さんが私の額に軽くキスを落とすと、お抱えの運転手が待つリムジンに乗り込み去って行く。
 彼のキスにときめきではなく恐怖しか感じなくなっていったのはいつからだっただろう。

 私は兄の博樹と気がつけば手を繋いでいて、そのまま屋敷の中に入った。
 二人っきりになって話したかったので自分の部屋まで誘導する。
 扉を閉め空間に私と兄しかいなくなった途端、私は気がつけば兄に抱きついていた。

「お兄様、どうして今更戻って来たの? 私、玲さんに酷い目に遭わされたんだよ⋯⋯」

 兄はそんな私を思いっきり抱きしめ返す。
 骨が折れそうなくらいの痛みと熱い温もりに涙が溢れた。

「凛音、今、曽根崎玲への恐怖心があるということは、殺された記憶があるのか?」
 私は頭の上から聞こえた兄の思わぬ言葉に思わず顔を上げた。
 そこには真剣な目で私を見下ろす兄の姿があった。繰り返す時間の記憶があるのは私だけではなかったようだ。
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