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24.イチャイチャしたい
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私の中で自分の作った曲が認められた事はこの上ない自信になった。スタジオで残ってアルバム用の曲を作っていると、扉が開いた。
そこには、HIROが私をじっと見つめて立っていた。窓から差し込む夕日に染まって、彼の頬が少し赤い。
「何か用? 今、曲を作っている途中なんだけど⋯⋯」
「凛音、最近ちょっと頑張り過ぎじゃゃない? あまり、棍詰めると長続きしないぞ」
HIROが私に近づきながら私を心配する言葉をつづってくる。おそらく奈美子さんから私がいつも遅くまでスタジオに残っているのを聞いたのだろう。
「私、何かに真剣に頑張るの初めてなの。だから、必死にやりたい。このまま倒れるまで走りたい気分なの」
生まれて初めて人に認めて貰えた。もっと頑張って認めて貰いたいだなんて、幼い子供みたいな感情だ。それでも、私は褒めて貰いたいという単純な自分の感情を大切にしたい。自分自身を自分が一番諦めていた。しかし、皆が今君は素晴らしい才能があると言ってくれている。ならば飽きられる時が来るとしても、私は少しでも自分を認めてもらえる瞬間が欲しい。
「でも、息抜きもしないと。お前学校も休まず行ってるし、心配なんだよ」
突然、キーボードに座っている私をHIROが抱きしめてくる。金髪が夕日に染まってピンク色になっている。こんなチャラい髪色の人私の世界にはいなかった。そして、これ程にストレートに好意を向けられたのも初めてだ。玲さんのように計画的に駆け引きしてくれた方が素直に彼に落ちられるのに、ストレート過ぎて客観的に彼の行動を見てしまう。
「学校は勉強の為もあるけれど、友達に会いに行ってるの。私は親友と沢山話して癒してもらってる」
私は思わず自分が美湖ちゃんのことを「親友」と言ってしまったことに照れてしまった。なんだか頬が熱い。
その時、HIROが私にキスをしようと顔を近づけてきた。私は咄嗟に彼の肩を押し返す。
「HIROはアイドルを真剣に極める気はある? ファンに手を出すなんて最低だよ」
私の記憶にある限り、HIROが『トライアンフ』のアンバサダーになった時はノースキャンダルのアイドルだった。アイドルにとってスキャンダルは致命傷だ。
「ファンじゃなくて、凛音には俺の恋人になって欲しい」
いつもヘラヘラ笑っている彼の真剣な表情。ドキッとするよりも、私はなぜか苛立った。
「お断りするよ。ファンとしてHIROには恋人を作らないで欲しい。歌やダンスにしか興味がないようなところが魅力なんだよ。それに、こんな駆け出しの時にスキャンダルがあったら、トップアイドルにはなれないよ」
私の言葉にHIROは全く納得がいってなさそうにむくれていた。非常に子供っぽい表情で可愛らしい。
「こっそり、付き合えば良いだろ。俺は凛音と付き合いたいの!」
「私は今『JKロック』と学校で忙しいし、誰とも付き合いたくない。しかも、こっそりって絶対無理だからね。バレたら全ての努力が無駄になるかもしれないって分かってる?」
「今だって誰も見てないから、何しても平気だよ」
夕暮れに照らされたHIROはいつもよりも色っぽい。この彼に落とされる女は沢山いるだろう。「誰も見ていない」なんてフレーズが引っかかり思いとどまるのが私だ。
「沈みゆく夕陽が見てるよ」
私だって自分の部屋では、誰も見ていないと思って寛いでいた。しかし、玲さんは私を監視していた。私は未だどこにいても見られているのではないかという気持ちに支配されている。
「事務所で2人きりの時にだけイチャイチャするのとかもダメ?」
甘えるように私の肩に頭を預けるHIROは、この方法で落ちると思ってそうだ。モテ過ぎて自分から言い寄ったことがないのかもしれない。こんなに拒否してるのに、しつこくされたらマイナスだ。
「そんなにしつこくしてくるなら、私はHIROを応援するの辞める! HIROは私の中で真っ直ぐで正義感が強くて、こそこそするような人じゃない! このままだと『スーパーブレイキン』は『JKロック』のバーターでしかテレビ出られなくなるよ」
私は初めて会った時に、初対面の私を助けてくれたトップアイドルのHIROを思い出していた。今より大人びていて自信に溢れていた。絶望的な私の状況を自分なら解決できると笑い飛ばした。あの時の彼は私にとって間違いなくヒーローだった。
私の真剣な物言いが伝わったのか、HIROは私からそっと離れた。
「凛音、お前には負けられねーよ。HIRO、大好き、今すぐ抱いてって言って来るくらいお前を惚れさせてやるから!」
HIROはそう言い放つなりスタジオを出て行った。
HIROは触発されたのか、歌やダンスにより本腰を入れるようになった。
芸能活動と学校で忙しくしていた中で、送迎車でうとうとしていたら急に祖父から連絡が来た。てっきり、玲さんとの婚約を破棄した事を責められるか、芸能活動をやめろと言われるかと思えば私を応援するような連絡だった。
「凛音! 久しぶりだな。昨日も会社の部下と凛音が弾いているのを音楽番組で見ていたんだ。凛音は華があり過ぎるから画面に映ると凛音しか見えなくなるな。曲も華やかでロックの中にも伝統的なクラシックの要素を感じる素敵な曲だ」
「お爺ちゃま、褒めてくれるなんて嬉しい。私、今、アルバムの曲を作ってるんだ。もっと頑張るから見ててくれると嬉しい⋯⋯」
私をペット扱いして玲さんに預けようとしていた祖父が私を認めてくれている。私はそれだけで胸が熱くなった。祖父は終始楽しそうに会話していて、全く玲さんの話題が出てこなかった。しかし、次に紡がれた祖父の言葉は私にとって衝撃だった。
「ボーカルの子は本当は25歳らしいな。メンバーを変えた方がよいんじゃないのか? 後で明らかになった時に凛音に火の粉がかかる。それから、もうすぐ凛音の18歳の誕生日だな。島でも宝石でも好きなものを買ってあげるから何が欲しいか考えておくんだぞ」
奈美子さんの身元が祖父に割れてしまっていると言う事は真実が詳らかになるのも時間の問題だろう。
私は祖父の電話を切るなり、事務所に行きスタジオで一人ボイストレーニングをする奈美子さんの元に急いだ。マスコミに騒がれる前に本当の年齢を公表することを提案しようと思ったのだ。
奈美子さんは私の提案を聞くなり、困った顔をした。
「曽根崎玲の件があった日から、私の時間は高校生のあの時で止まってたの。だけど、『JKロック』のMINAとして活動することで私の時間が動き出した。もしかして、真実が明らかになったら迷惑かけるかもしれないけれど私は⋯⋯」
そこには、HIROが私をじっと見つめて立っていた。窓から差し込む夕日に染まって、彼の頬が少し赤い。
「何か用? 今、曲を作っている途中なんだけど⋯⋯」
「凛音、最近ちょっと頑張り過ぎじゃゃない? あまり、棍詰めると長続きしないぞ」
HIROが私に近づきながら私を心配する言葉をつづってくる。おそらく奈美子さんから私がいつも遅くまでスタジオに残っているのを聞いたのだろう。
「私、何かに真剣に頑張るの初めてなの。だから、必死にやりたい。このまま倒れるまで走りたい気分なの」
生まれて初めて人に認めて貰えた。もっと頑張って認めて貰いたいだなんて、幼い子供みたいな感情だ。それでも、私は褒めて貰いたいという単純な自分の感情を大切にしたい。自分自身を自分が一番諦めていた。しかし、皆が今君は素晴らしい才能があると言ってくれている。ならば飽きられる時が来るとしても、私は少しでも自分を認めてもらえる瞬間が欲しい。
「でも、息抜きもしないと。お前学校も休まず行ってるし、心配なんだよ」
突然、キーボードに座っている私をHIROが抱きしめてくる。金髪が夕日に染まってピンク色になっている。こんなチャラい髪色の人私の世界にはいなかった。そして、これ程にストレートに好意を向けられたのも初めてだ。玲さんのように計画的に駆け引きしてくれた方が素直に彼に落ちられるのに、ストレート過ぎて客観的に彼の行動を見てしまう。
「学校は勉強の為もあるけれど、友達に会いに行ってるの。私は親友と沢山話して癒してもらってる」
私は思わず自分が美湖ちゃんのことを「親友」と言ってしまったことに照れてしまった。なんだか頬が熱い。
その時、HIROが私にキスをしようと顔を近づけてきた。私は咄嗟に彼の肩を押し返す。
「HIROはアイドルを真剣に極める気はある? ファンに手を出すなんて最低だよ」
私の記憶にある限り、HIROが『トライアンフ』のアンバサダーになった時はノースキャンダルのアイドルだった。アイドルにとってスキャンダルは致命傷だ。
「ファンじゃなくて、凛音には俺の恋人になって欲しい」
いつもヘラヘラ笑っている彼の真剣な表情。ドキッとするよりも、私はなぜか苛立った。
「お断りするよ。ファンとしてHIROには恋人を作らないで欲しい。歌やダンスにしか興味がないようなところが魅力なんだよ。それに、こんな駆け出しの時にスキャンダルがあったら、トップアイドルにはなれないよ」
私の言葉にHIROは全く納得がいってなさそうにむくれていた。非常に子供っぽい表情で可愛らしい。
「こっそり、付き合えば良いだろ。俺は凛音と付き合いたいの!」
「私は今『JKロック』と学校で忙しいし、誰とも付き合いたくない。しかも、こっそりって絶対無理だからね。バレたら全ての努力が無駄になるかもしれないって分かってる?」
「今だって誰も見てないから、何しても平気だよ」
夕暮れに照らされたHIROはいつもよりも色っぽい。この彼に落とされる女は沢山いるだろう。「誰も見ていない」なんてフレーズが引っかかり思いとどまるのが私だ。
「沈みゆく夕陽が見てるよ」
私だって自分の部屋では、誰も見ていないと思って寛いでいた。しかし、玲さんは私を監視していた。私は未だどこにいても見られているのではないかという気持ちに支配されている。
「事務所で2人きりの時にだけイチャイチャするのとかもダメ?」
甘えるように私の肩に頭を預けるHIROは、この方法で落ちると思ってそうだ。モテ過ぎて自分から言い寄ったことがないのかもしれない。こんなに拒否してるのに、しつこくされたらマイナスだ。
「そんなにしつこくしてくるなら、私はHIROを応援するの辞める! HIROは私の中で真っ直ぐで正義感が強くて、こそこそするような人じゃない! このままだと『スーパーブレイキン』は『JKロック』のバーターでしかテレビ出られなくなるよ」
私は初めて会った時に、初対面の私を助けてくれたトップアイドルのHIROを思い出していた。今より大人びていて自信に溢れていた。絶望的な私の状況を自分なら解決できると笑い飛ばした。あの時の彼は私にとって間違いなくヒーローだった。
私の真剣な物言いが伝わったのか、HIROは私からそっと離れた。
「凛音、お前には負けられねーよ。HIRO、大好き、今すぐ抱いてって言って来るくらいお前を惚れさせてやるから!」
HIROはそう言い放つなりスタジオを出て行った。
HIROは触発されたのか、歌やダンスにより本腰を入れるようになった。
芸能活動と学校で忙しくしていた中で、送迎車でうとうとしていたら急に祖父から連絡が来た。てっきり、玲さんとの婚約を破棄した事を責められるか、芸能活動をやめろと言われるかと思えば私を応援するような連絡だった。
「凛音! 久しぶりだな。昨日も会社の部下と凛音が弾いているのを音楽番組で見ていたんだ。凛音は華があり過ぎるから画面に映ると凛音しか見えなくなるな。曲も華やかでロックの中にも伝統的なクラシックの要素を感じる素敵な曲だ」
「お爺ちゃま、褒めてくれるなんて嬉しい。私、今、アルバムの曲を作ってるんだ。もっと頑張るから見ててくれると嬉しい⋯⋯」
私をペット扱いして玲さんに預けようとしていた祖父が私を認めてくれている。私はそれだけで胸が熱くなった。祖父は終始楽しそうに会話していて、全く玲さんの話題が出てこなかった。しかし、次に紡がれた祖父の言葉は私にとって衝撃だった。
「ボーカルの子は本当は25歳らしいな。メンバーを変えた方がよいんじゃないのか? 後で明らかになった時に凛音に火の粉がかかる。それから、もうすぐ凛音の18歳の誕生日だな。島でも宝石でも好きなものを買ってあげるから何が欲しいか考えておくんだぞ」
奈美子さんの身元が祖父に割れてしまっていると言う事は真実が詳らかになるのも時間の問題だろう。
私は祖父の電話を切るなり、事務所に行きスタジオで一人ボイストレーニングをする奈美子さんの元に急いだ。マスコミに騒がれる前に本当の年齢を公表することを提案しようと思ったのだ。
奈美子さんは私の提案を聞くなり、困った顔をした。
「曽根崎玲の件があった日から、私の時間は高校生のあの時で止まってたの。だけど、『JKロック』のMINAとして活動することで私の時間が動き出した。もしかして、真実が明らかになったら迷惑かけるかもしれないけれど私は⋯⋯」
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