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16.多分、媚薬を⋯⋯。(アラン視点)
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2秒もしない内に、僕は思いっきりマレンマに押し返された。
エメラルドの瞳が僅かに揺れていて、明らかに僕の様子がいつもと違うのを心配しているのが分かる。
「アラン皇太子殿下、体が異常に熱いです。何か盛られましたか?」
「多分、媚薬を⋯⋯」
僕は彼女が僕の熱を冷ましてくれるのを期待してここまで来たのだろう。
「吐きましょう!」
マレンマの言葉は予想外だった。
僕は洗面台まで連れて行かれ、肩を押さえつけられマレンマに2本の指を思いっきり口の奥まで突っ込まれた。
(吐けと?)
有無を言わせぬ、彼女にもう吐くしかなかった。
「液体しか出てきませんね」
彼女は指をより奥まで突っ込んでくる。
(く、苦しい。多分、媚薬はもう体内から出た⋯⋯)
「え、えき⋯⋯」
「殿下、どうしましたか?」
「液体なのだ。紅茶だったから、多分もう出た⋯⋯」
「それは良かったです」
マレンマがにっこりと微笑むと、僕は自分のした事が恥ずかしくなった。
彼女が水を入れたコップを渡してきてくれたので、うがいをする。
彼女の気遣いはいつも自然で押し付けがましくない。
知れば知る程に僕は彼女を好きになっているけれど、彼女は僕を意識してくれているようには見えない。
おそらく僕の一方的な片想いだ。
(押し倒して無理やり口づけをしたことを謝った方が良いだろうか⋯⋯)
「それにしても、一体、誰に⋯⋯」
「それは⋯⋯」
僕は思わず言い淀んだ。
自分の浅はかな行動が彼女に露見するのが恥ずかしかったと言うより、この件に彼女をこれ以上関わらせるのは危険だと思った。
レオナ嬢は自分が婚約者に選ばれない可能性を消す為に、僕と関係を持とうと媚薬を盛ったのだろう。
そして、それはもしかしたら彼女の父親であるキリアン・アーデン公爵の指示だ。
異常に強力な媚薬はルトアニア帝国産である可能性が高い。
今日、ケンタス伯爵の自害の場を見てマレンマは怯えていた。
この件に彼女がこれ以上関わると、彼女はもっと怖い目にあうだろう。
「とりあえず、吐いてお腹が空いたんじゃないですか? 何か食べます?」
「いや、大丈夫だ。心配かけてすまなかった」
僕が考えあぐねている事に気がついたのか、彼女が話題を変えてくれた。
さりげない心遣いをされる度にますます好きになってしまう。
本当はすぐにでも皇宮に戻り、紅茶のカップを証拠にレオナ嬢を問い詰めるべきだ。
そうすれば、媚薬の入手元やアーデン公爵を追い詰める事実に辿り着けるかもしれない。
それなのに、僕はマレンマと2人きりになれた今の時間を手放せなかった。
どうせ、媚薬を盛った証拠など既に処分されていると言い訳し、彼女と一緒にいる事を選んだ。
「マレンマ、僕がどうしてそなたの所に来たのか聞かないのか?」
「お困りだったからですよね。殿下に頼られて嬉しかったです。いつも、私は殿下に助けられてばかりなので」
僕の下心に全く気がついていない彼女を見て罪悪感が込み上げてきた。
彼女はとても察しが良くて賢いのに、どうして僕の気持ちには気がつかないのだろう。
もしかしたら、彼女から見ると僕は幼くて相手にされていないのかも知れない。
(男として見て欲しい⋯⋯)
僕は賭けに出る事にした。
思いの丈を彼女に話してみて彼女から拒絶されてしまうかも知れないが、恐れていたら最後の1歩は縮まらない。
僕は深呼吸して、マレンマに向き直った。
「マレンマ、僕はそなたを抱きたかったから来たのだ。ずっとマレンマの事が好きだった。知れば知る程、そなたの事を心から想うようになったのだ。媚薬を飲まされて、その勢いのままそなたを抱いてしまおうと思った。マレンマ、そなたの優しさに付け込もうとしたのだ」
僕の言葉にマレンマはなぜか俯いてしまった。
軽蔑されたかも知れない。
僕が困っていたら、彼女は助けてくれると思った。
予想していたのとは違う方法だったが、実際に彼女は僕を助けてくれた。
「私は優しくなどないですよ。優しいのはアラン皇太子殿下の方です」
「僕が優しいとマレンマが感じるのなら、それは僕がそなたの事が好きだからだ」
実際、マレンマといると優しい気持ちになれる。
きっと、それは彼女のことが愛しいからだ。
彼女に優しい人間だと思われたい下心もあるのかも知れない。
「マレンマ、顔をあげてくれ」
僕は彼女が何を考えているのか不安になり、彼女の頬に手を添えて顔をあげさせた。
(顔、真っ赤だ⋯⋯可愛い⋯⋯もしかして、マレンマも僕のことを)
心臓の鼓動が早い。
耳の奥でウェディングベルが鳴り響いている気がする。
「私も殿下をお慕いしております」
マレンマの言葉が僕の心の奥まで届く。
僕たちはその日結ばれた。
♢♢♢
「殿下、もう皇宮に戻られた方が良いのではないですか? 殿下がいないと分かると騒ぎになりますよ」
「さっきまでは、アランと呼んでくれていたのにどうして⋯⋯」
「もう、切り替えなければなりませんから」
マレンマが僕の着替えを手伝ってくれるが、目を合わせようとしてくれない。
そして、先程まで恋人のように戯れ合っていたのに、明らかに臣下のように振る舞っている。
それが照れているのか、気まずいからなのか分からない。
「あれはマレンマが発明したクリーム石鹸ではないか。一緒に泡風呂に入らないか?」
机にマレンマが以前プレゼントしてくれたクリーム石鹸の瓶と同じものを発見したので、勇気を出して提案してみた。
僕は彼女と少しでも一緒にいたかった。
せっかく心が通じ合ったのに、離れたくはなかった。
「殿下、皇宮にお戻りください」
彼女はそう短く言って、目を合わせてくれなかった。
エメラルドの瞳が僅かに揺れていて、明らかに僕の様子がいつもと違うのを心配しているのが分かる。
「アラン皇太子殿下、体が異常に熱いです。何か盛られましたか?」
「多分、媚薬を⋯⋯」
僕は彼女が僕の熱を冷ましてくれるのを期待してここまで来たのだろう。
「吐きましょう!」
マレンマの言葉は予想外だった。
僕は洗面台まで連れて行かれ、肩を押さえつけられマレンマに2本の指を思いっきり口の奥まで突っ込まれた。
(吐けと?)
有無を言わせぬ、彼女にもう吐くしかなかった。
「液体しか出てきませんね」
彼女は指をより奥まで突っ込んでくる。
(く、苦しい。多分、媚薬はもう体内から出た⋯⋯)
「え、えき⋯⋯」
「殿下、どうしましたか?」
「液体なのだ。紅茶だったから、多分もう出た⋯⋯」
「それは良かったです」
マレンマがにっこりと微笑むと、僕は自分のした事が恥ずかしくなった。
彼女が水を入れたコップを渡してきてくれたので、うがいをする。
彼女の気遣いはいつも自然で押し付けがましくない。
知れば知る程に僕は彼女を好きになっているけれど、彼女は僕を意識してくれているようには見えない。
おそらく僕の一方的な片想いだ。
(押し倒して無理やり口づけをしたことを謝った方が良いだろうか⋯⋯)
「それにしても、一体、誰に⋯⋯」
「それは⋯⋯」
僕は思わず言い淀んだ。
自分の浅はかな行動が彼女に露見するのが恥ずかしかったと言うより、この件に彼女をこれ以上関わらせるのは危険だと思った。
レオナ嬢は自分が婚約者に選ばれない可能性を消す為に、僕と関係を持とうと媚薬を盛ったのだろう。
そして、それはもしかしたら彼女の父親であるキリアン・アーデン公爵の指示だ。
異常に強力な媚薬はルトアニア帝国産である可能性が高い。
今日、ケンタス伯爵の自害の場を見てマレンマは怯えていた。
この件に彼女がこれ以上関わると、彼女はもっと怖い目にあうだろう。
「とりあえず、吐いてお腹が空いたんじゃないですか? 何か食べます?」
「いや、大丈夫だ。心配かけてすまなかった」
僕が考えあぐねている事に気がついたのか、彼女が話題を変えてくれた。
さりげない心遣いをされる度にますます好きになってしまう。
本当はすぐにでも皇宮に戻り、紅茶のカップを証拠にレオナ嬢を問い詰めるべきだ。
そうすれば、媚薬の入手元やアーデン公爵を追い詰める事実に辿り着けるかもしれない。
それなのに、僕はマレンマと2人きりになれた今の時間を手放せなかった。
どうせ、媚薬を盛った証拠など既に処分されていると言い訳し、彼女と一緒にいる事を選んだ。
「マレンマ、僕がどうしてそなたの所に来たのか聞かないのか?」
「お困りだったからですよね。殿下に頼られて嬉しかったです。いつも、私は殿下に助けられてばかりなので」
僕の下心に全く気がついていない彼女を見て罪悪感が込み上げてきた。
彼女はとても察しが良くて賢いのに、どうして僕の気持ちには気がつかないのだろう。
もしかしたら、彼女から見ると僕は幼くて相手にされていないのかも知れない。
(男として見て欲しい⋯⋯)
僕は賭けに出る事にした。
思いの丈を彼女に話してみて彼女から拒絶されてしまうかも知れないが、恐れていたら最後の1歩は縮まらない。
僕は深呼吸して、マレンマに向き直った。
「マレンマ、僕はそなたを抱きたかったから来たのだ。ずっとマレンマの事が好きだった。知れば知る程、そなたの事を心から想うようになったのだ。媚薬を飲まされて、その勢いのままそなたを抱いてしまおうと思った。マレンマ、そなたの優しさに付け込もうとしたのだ」
僕の言葉にマレンマはなぜか俯いてしまった。
軽蔑されたかも知れない。
僕が困っていたら、彼女は助けてくれると思った。
予想していたのとは違う方法だったが、実際に彼女は僕を助けてくれた。
「私は優しくなどないですよ。優しいのはアラン皇太子殿下の方です」
「僕が優しいとマレンマが感じるのなら、それは僕がそなたの事が好きだからだ」
実際、マレンマといると優しい気持ちになれる。
きっと、それは彼女のことが愛しいからだ。
彼女に優しい人間だと思われたい下心もあるのかも知れない。
「マレンマ、顔をあげてくれ」
僕は彼女が何を考えているのか不安になり、彼女の頬に手を添えて顔をあげさせた。
(顔、真っ赤だ⋯⋯可愛い⋯⋯もしかして、マレンマも僕のことを)
心臓の鼓動が早い。
耳の奥でウェディングベルが鳴り響いている気がする。
「私も殿下をお慕いしております」
マレンマの言葉が僕の心の奥まで届く。
僕たちはその日結ばれた。
♢♢♢
「殿下、もう皇宮に戻られた方が良いのではないですか? 殿下がいないと分かると騒ぎになりますよ」
「さっきまでは、アランと呼んでくれていたのにどうして⋯⋯」
「もう、切り替えなければなりませんから」
マレンマが僕の着替えを手伝ってくれるが、目を合わせようとしてくれない。
そして、先程まで恋人のように戯れ合っていたのに、明らかに臣下のように振る舞っている。
それが照れているのか、気まずいからなのか分からない。
「あれはマレンマが発明したクリーム石鹸ではないか。一緒に泡風呂に入らないか?」
机にマレンマが以前プレゼントしてくれたクリーム石鹸の瓶と同じものを発見したので、勇気を出して提案してみた。
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