浮気三昧の夫を捨てたら、10歳年下の皇太子から求婚されました

専業プウタ

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18.私はマレンマと再婚します。(ミゲル視点)

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 俺はとんでもない価値のある女を手にしていたのに別れてしまった。
 その事に改めて気付かされたのは、マレンマと離婚が成立してからだ。

 カスケード侯爵家の管理は全てマレンマに任せていた。

 マレンマは金を稼ぐ天才だったようだ。
 侯爵家の管理の余剰金を利用し、侯爵家の財産を結婚当時より3倍にも膨れさせていた。
 時代の先を見抜く目があり、投資のセンスがずば抜けているのだ。

 彼女がカスケード侯爵家の経済状況が危ういと言ったのは嘘っぱちだったようだ。
 マレンマは賢く優秀で「金のなる木」そのものだった。
 
 カスケード侯爵家は元々裕福だが、マレンマのお陰でその財産は一国相当分にまでになっていた。

 彼女は常に社交界の中心だった俺が、結婚まで決意した女だ。
 どうやら俺も先見の明があったらしい。
 
 エミリアのせいで離婚する事になったが、俺はマレンマと再婚するつもりだ。
 マレンマだって朝から晩まで行政部で働く子爵でいるより、優雅なカスケード侯爵夫人をしていた方が良いはずだ。

 「3分経過しましたよ。あと、7分です」

 ラウンジの個室に入るなり、振り返りながら俺に告げてきたマレンマの色気に俺は当てられた。
 いつからか地味だけど味のある見た目だった彼女が、魅力的で色っぽい女性に見えるようになった。
 顔自体は変わっていないのに、その仕草や話し方、内側から滲み出る自信がそう見せるのだ。
 俺の知っている彼女は能力はあるのに、常に引け目を感じている自己肯定感の低そうな女だった。

「ここに来るまでもカウントしているのか? 意地悪だな」
 俺は彼女を後ろから抱きしめようとしたが、するりと腕の中から彼女は抜けていった。
 今の駆け引きをするような所作も非常にこなれている。
(何なんだ、このいい女は⋯⋯俺はこんな女を捨ててしまったのか?)

「で、何の話をしたいのですか? 単刀直入に仰ってください。回りくどいのは嫌いなので」
 彼女の性格もかなりせっかちに変わった気がする。
(何があったんだ? 新しい男ができた? まさかアラン皇太子じゃないよな?)

 アラン皇太子は今まで婚約者を作れと言われても作らず、特定の女と噂があったこともない。
 美しいルックスと柔和な性格と圧倒的地位により、寄ってくる女が多くて飽き飽きとしているのだろう。
 俺自身も彼と同じような悩みを持っているから理解できる。

 それに加えアラン皇太子は、彼の父親の3人の妻たちの醜い争いを見てきているから女が苦手になってしまったという噂もあった。

 俺の場合は多くの女を見てきたからこそ、マレンマに辿り着けた。
 アラン皇太子の少なそうな女性経験で、マレンマに辿り着けるとは信じ難い。

 殿下がマレンマにドレスをプレゼントしていたのは気になるが、うまく断れたから問題ない。

 贈り物を断られるという屈辱を合わされた殿下はマレンマから距離を取るだろう。
 
「君に感謝を述べたかったんだ。カスケード侯爵家の財政状況を見て感動したよ」
 俺は婚姻期間中に彼女に感謝を伝えることはなかった。
 しかし、今はその関係性を利用しようと思った。
 
 今まですることがなかった感謝を伝えることで、俺が変わったと思い彼女が戻ってくる気がした。
(女はギャップに弱いからな⋯⋯)

 おそらく彼女は娼婦と浮気されてプライドが傷つき、一時的に俺から離れただけだ。
 
 彼女だって、侯爵夫人の地位や帝国一の美貌をもつ俺の妻であるという羨望を捨てて後悔しているはずだ。
 衝動的に離婚をして、家を出たことを後悔し始める時だと思った。

「財産分与のお話ですか? 確かに、現在のカスケード侯爵家の財産の大部分は私が築いた財産と言っても過言でもありません」
「財産分与? そのような話ではない。俺とやり直さないかという話だ。わかりやすく言おう、もう1度俺と結婚してくれ、マレンマ」

 射抜くような目でマレンマを見つめる。
 俺がこの目で見て落ちなかった女はいない。

 実際、彼女も俺の目が特に好きだといっていた。

「お断りします。もう、話は済みましたね。カスケード侯爵家で私が築いた財産については手切金として受け取ってください。もう、会いに来ないでくださいね。カスケード侯爵閣下」

「待ってくれ、1度で良いからカスケード侯爵邸に戻ってきてくれないか? 君のしていた仕事の引き継ぎを⋯⋯」

 マレンマは俺の言葉に振り返る事なく、ラウンジの個室を出て行った。
(手切金って⋯⋯)

 仕事の引き継ぎは彼女を侯爵邸に呼び寄せる建前だ。
 彼女は綿密に引き継ぎ書を作成していた。
 彼女がいつでも俺と離婚できるように準備していたのかもしれない。

 彼女を追うことも考えたが、俺は日を改める事にした。
 どちらにしろ、明日のアラン皇太子の誕生祭でマレンマに出会えるからだ。

 誕生祭の舞踏会会場に到着して、俺はすぐにマレンマを見つけた。
 まるで彼女にだけスポットライトが当たっているようだった。
 
 そして、彼女は行政部の貴族たちに囲まれていた。

 いつも舞踏会の時は俺の隣で寄り添って他の人間とあまり会話を交わすことの少なかった彼女。
 今は多くの人に囲まれ堂々としている。

 そのせいか彼女が誰よりも美しく見えた。

 夜空のような濃紺の髪を纏め上げ、緑色のドレスをきた彼女は輝いていた。
 
 そう思っているのは俺だけではないのか、皆が彼女をチラチラと見ている。
 フリーになった彼女を狙う男がいるかもしれないと考え、俺は彼女に一歩近づいた。

 「皆、本日は僕の誕生祭に集まってくれて感謝する。成人を迎えるに当たり⋯⋯」

 アラン皇太子が開会の挨拶をし始めて、皆が一気に注目した。
 彼の瞳に合わせた紫色の礼服を着ている。

 他の人間が着れば華美過ぎて見えるような色なのに、それを品よく高貴に着こなすのがアラン皇太子だ。
 このリオダール帝国で俺の次に良い男だと認めている。

 彼は明日には皇位を継承し皇帝になる。
 そして、今日、彼は婚約者指名をする予定になっている。

 彼が今日指名した相手は次期皇后になる。
 それによって、リオダール帝国の貴族間の力関係が大きく変わる。
 皆が1番注目するところだ。

 その婚約者と開会を告げるダンスをして、この舞踏会は始まるらしい。
 この瞬間まで彼の婚約者が誰であるかは明かされていないが、おそらくレオナ・アーデン公爵令嬢だろう。

 彼とペアのような紫色のドレスを着ている。

 紫は皇室を象徴するような色なので、殿下から贈られない限りは紫色のドレスは選んだりしないはずだ。

「僕は婚約者として、マレンマ・モリアート子爵を指名する。彼女と共に、このリオダール帝国の未来を築いていきたい」

 一瞬で当たりが騒然となった。
 (マレンマ・モリアート? 聞き間違いじゃなく、俺のマレンマか?)

 マレンマを見ると周囲の注目を集めて真っ青になっている。
 (自分が婚約者として指名されると知らされてなかったのか?)

「嘘でしょ。この間、離婚したばかりよね」
「離婚歴がある女が次期皇后なんて前代未聞じゃない?」
「石女の皇后なんていいの?」

 俺の耳にも届いてくるマレンマを批判する言葉に居た堪れなくなった。

 当然、マレンマの耳にも心無い声は届いたのか、彼女は会場を逃げるように抜け出した。
 
 彼女はきっと陰口に傷ついただろう。
 一緒に暮らしていれば分かるが、彼女は実は繊細な女性だ。

 そして、自分の繊細さを隠そうとする女性だ。

 彼女にプロポーズした時に、守りたいと思った気持ちが蘇ってきた。
 俺はマレンマの後を追った。

 俺よりも彼女に先に辿り着いたのはアラン皇太子だった。

 2人の会話から、2人が男女の関係にあることがわかり鈍器で殴られたような気持ちになった。
 放心状態になっていたら、マレンマがその場に倒れて気を失ったのが分かった。
 
「マレンマ」
「マレンマに手を触れるな! 彼女は私の妻となり、このリオダール帝国の皇后になる女性だ」
 当然のようにマレンマを抱き上げるアラン皇太子は、彼女に振られていたはずだ。

 俺は自分にもまだチャンスがあるように思えて、殿下の後をついて行った。


 ベッドに寝かせられたマレンマは気を失っている。
 目を瞑っている彼女を眺めるのはいつぶりだろうか。
 愛おしさが込み上げてきて、思わず彼女に手を触れようとした。


「カスケード侯爵、先程の僕の話を聞いていたか? 今から、マレンマは皇宮医の診察を受けるから部屋から出てってくれないだろうか」

 威圧的に俺を追い出そうとするアラン皇太子は、その辺の18歳の坊やとは違う。
 俺は引き下がるしかなかった。

 マレンマの様子が気になり扉を少しだけ開けて、そっと中を覗いていた。
 皇宮医が彼女を診察し、口を開く。

「妊娠なさってますね」
「皇宮医、彼女の妊娠に関しては他言無用だ。もう下がって良い。僕が彼女についている」
「承知致しました。殿下」 
 皇宮医が部屋を出るなり、俺は部屋の中に乗り込んだ。


「お腹の子は私の子です。アラン皇太子殿下、私はマレンマと再婚します」
 俺の言葉に無表情の殿下は何を考えているか分からない。
 しかし、内心は焦っているだろう。

 マレンマが産む子なら俺は愛せる自信があった。

 彼女の子なら俺の子だ。
 たとえ、髪が黒くて紫色の瞳を持って生まれても魔法で髪や瞳の色などどうとでもなる。

 「カスケード侯爵、言って良い冗談と悪い冗談がある。愛し合っていなければ、子はできない。マレンマは僕の子を孕ってくれたのだ」

 堂々としたアラン皇太子の物言いに俺はただ黙るしかなかった。
  

 



 
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