身代わり婚〜悪女の姉の策略で嫁ぎましたが夫を溺愛してます〜

専業プウタ

文字の大きさ
23 / 40

23.ケントリン、服を脱ぎなさい。

しおりを挟む
 私は寝室でエウレパ国王を陥れる準備をした。

「ケントリン、服を脱ぎなさい」
 私が命令すると彼は全ての衣服を脱ぎ出した。

「何で下まで脱ぐの! 穢らわしいものを見せないで!」
 ケントリンは私の命令を何でも聞く。
 でも、彼は私にとって守るべき国民の1人だ。
 彼を自分の代わりに献上したりしない。

 ただ、私はエウレパ国王に少しでも触れられたら嘔吐しそうな気がしていた。そんな粗相をしたら、この作戦は成功しない。
 
 ノックもせずに扉が開く。
 本当に自分が尊重されていないと感じた。

「アリアドネ、寝巻き姿が本当に色っぽいな」
「陛下、待ち侘びておりましたわ」
 本当に私はケントリンには誰にも見せられない情けない自分を見せている。
 私を崇めていたシャリレーン王国の民が見たら卒倒するだろう。

「なっ、騎士を連れ込んでいるのか?」
「陛下の為でございます。男もお楽しみなると聞きまして用意させて頂きました」
 上着を脱がさせたのは、武装させてないと見せる為だ。

「性別の垣根を超える程に美しい男が好きなのだ⋯⋯」
 エウレパ国王が不満そうな顔をした。

 確かにケントリンは人が振り向くような美しさはない。
 でも、男が化け物のように見える私でも近くにいられる清らかさがある。

「汚れのない子を陛下に味わって欲しかったのです。このお茶を飲んでください。感度が良くなり、天国で遊ぶような気持ちになれますよ」

 私はラリーゼル草をこしたお茶を差し出した。
 この草は幻覚を見せ錯乱させる作用があり強い依存性がある。

「余が、何の警戒もせずお茶を飲むとても思っているのか? アリアドネ、お前がとても危険な女だと分かっている。その上で、お前を受け入れた余に毒でも盛るつもりか?」
 予想通り警戒されていた。

「陛下は何もかも手にいれる立場にあるのに、勿体無い人生をお過ごしですのね。味わったことのないような快楽をくれますのよ。彼も私と同じように陛下に愛されたいようです。どうか、陛下のご慈悲を与えてあげてくださいな」

 私が事前に指示した通り、ケントリンがお茶を口に含んでエウレパ国王に口移しで飲ませた。

 「はぁ、本当に何だか天国にいるようだな⋯⋯」
 エウレパ国王については思惑通りになったが、私はケントリンが心配になった。

 ラリーゼル草は、シャリレーン王国でも最も危険とされる毒草だ。
一度その成分が少しでも体内に入ると、2度と抜け出せない幻覚の世界に誘われる。

 ケントリンにはサイドテーブルに置いた水で口をゆすいで、ゆすいだ水はそのまま床にでも吐くように伝えていた。
 それなのに、彼はどこかボーッとしていて水に手を出さない。

 私は咄嗟に自分が水を口に含み、彼の口に注いだ。
 そのまま、彼の頭を思いっきり掴んで振って水を吐き出させた。

「ケントリン、私を見て、私は誰?」
「アリアドネ・シャリレーン王女殿下です⋯⋯」
 私は心よりほっとして、彼を強く抱きしめた。

 自分が恐怖から逃げる為に、ずっと私に寄り添ってくれた彼を利用してしまった。私は本当に聖女とは程遠い存在だ。

 ラリーゼル草の効き目で、エウレパ国王は意識混濁状態に陥った。

「はぁ、アリアドネ⋯⋯お茶をくれないか、アリアドネ⋯⋯」
 彼は蛇のように私の寝室を這いつくばりながら、私にお茶を欲しいと乞うている。水も与えられず、喉がカラカラといった状況なのだろうか。

「陛下、あれは国際的にも禁止されているお茶なのです。陛下のお楽しみの為に入手しましたが⋯⋯私もこのお茶を使うには罪悪感があります」
 私がそう言うと血走った目をしながらエウレパ国王が私に迫ってきた。

「何でもする。お願いだ。お茶を⋯⋯」
 私はエウレパ国王に、国が混乱するような指示を出し続けた。
 彼は判断能力が鈍っていて、お茶欲しさに私に従い続けた。

♢♢♢

「アリアドネ様、陛下が1年以上も貴方様の寝室から出てこない事に対し、あなた様に疑いの声が上がっております」
「疑い? それって何のことかしら。それでは、この母の形見の指輪に盗聴魔法をかけてくだささる?」

 エウレパ王国の発展の秘密の1つに魔法使いワイズの存在があった。
 世界にも少数の言われる魔法使いをエウレパ王国は囲い込んでいた。

 私は母の形見の指輪に盗聴魔法をかけてもらった。
 私が誰かの言葉を盗聴したいとしたら、妹カリンの言葉だ。
 彼女が何を考えて、どんな声をしているのか知りたくて仕方がなかった。

「はあ、それで私と陛下の営みをお聞きしたい高貴な方はどこにいらっしゃるのかしら?」

 私の言葉に私に疑いを抱いて、詰め寄っていた貴族たちは固まった。
 国王を盗聴しようなど、誰にもできるわけがない。
  
 定期的にケントリンにカルパシーノ王国に行って、カリンの様子を見に行ってもらい寄付を届けに行って貰っていた。そして、現在のエウレパ王国の混乱状態をカルパシーノ王国にそっと漏らしてもらった。

 彼に指輪を預けて妹に届けてもらうことも考えたが、大切な母の形見を人に預けることなどできなかった。

 私は、セルシオ・カルパシーノが自分を解放してくれるのをひたすらに待った。
 しかし、彼は対話を要求してくるばかりで、なかなかエウレパ王国を攻めにきてくれなかった。

 私はエウレパ王国の内情を知りながら、自分と同じような目に合っている奴隷をすぐにでも解放しようとしない彼に苛立った。

 戦争をしたくない気持ちは分かるけれど、それ以上に一生苦しむようなトラウマを抱える苦しみを味わっている子たちの存在を優先して欲しかった。

 対話しても通じない相手がいることをセルシオ・カルパシーノだって知っているはずだ。

 彼は5年間、エウレパで奴隷をしていた。私も5年間、自分の無力に打ちひしがれ一生消えぬ傷を背負って3カ国で身柄を拘束された。

 19歳になったある日、やっとセルシオ・カルパシーノは奴隷解放の為、エウレパ王国を攻めてきた。

 私は3年間、部屋に篭り薬学や政治学などの書物を漁りながらケントリンと、人ではなくなったエウレパ国王と過ごしてきた。
 
「ケントリン、今すぐエウレパ国王の首を切って」

 ケントリンは私に言われた通り、エウレパ国王の首を剣で切りはじめた。
首を切るのはスパッとはいかないのか、彼が非力なのか時間が掛かった。

 私はエウレパ国王の首を切って、狂った淫猥な女としてセルシオ・カルパシーノの前に現れるつもりだ。その時、やっと私は解放されて、妹と再会し祖国に帰れるだろう。
 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

偽聖女として断罪追放された元令嬢は、知らずの森の番人代理として働くことになりました

石河 翠
恋愛
見習い聖女として神殿で働いていた伯爵令嬢リリィは、異母妹に嵌められ偽聖女として断罪される。頼りの大聖女も庇ってくれないまま、リリィは貴族ではなく平民として追放された。 追放途中リリィは、見知らぬ騎士に襲われる。危ないところを美しい狼の加勢で切り抜けた彼女は、眠り続けているという森の番人の代理を務めることに。 定期的に森に現れる客人の悩みを解決するうちに、働きづめだった神殿やひとりぼっちだった実家よりも今の暮らしを心地よく感じ始めるリリィ。そんな彼女の元に婚約破棄したはずの婚約者が復縁を求めてやってきて……。 真面目でちょっとお人好しなヒロインと、訳ありヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 約10万字、2025年6月6日完結予定です。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙画像は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:1602447)をお借りしております。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

処理中です...