身代わり婚〜悪女の姉の策略で嫁ぎましたが夫を溺愛してます〜

専業プウタ

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23.ケントリン、服を脱ぎなさい。

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 私は寝室でエウレパ国王を陥れる準備をした。

「ケントリン、服を脱ぎなさい」
 私が命令すると彼は全ての衣服を脱ぎ出した。

「何で下まで脱ぐの! 穢らわしいものを見せないで!」
 ケントリンは私の命令を何でも聞く。
 でも、彼は私にとって守るべき国民の1人だ。
 彼を自分の代わりに献上したりしない。

 ただ、私はエウレパ国王に少しでも触れられたら嘔吐しそうな気がしていた。そんな粗相をしたら、この作戦は成功しない。
 
 ノックもせずに扉が開く。
 本当に自分が尊重されていないと感じた。

「アリアドネ、寝巻き姿が本当に色っぽいな」
「陛下、待ち侘びておりましたわ」
 本当に私はケントリンには誰にも見せられない情けない自分を見せている。
 私を崇めていたシャリレーン王国の民が見たら卒倒するだろう。

「なっ、騎士を連れ込んでいるのか?」
「陛下の為でございます。男もお楽しみなると聞きまして用意させて頂きました」
 上着を脱がさせたのは、武装させてないと見せる為だ。

「性別の垣根を超える程に美しい男が好きなのだ⋯⋯」
 エウレパ国王が不満そうな顔をした。

 確かにケントリンは人が振り向くような美しさはない。
 でも、男が化け物のように見える私でも近くにいられる清らかさがある。

「汚れのない子を陛下に味わって欲しかったのです。このお茶を飲んでください。感度が良くなり、天国で遊ぶような気持ちになれますよ」

 私はラリーゼル草をこしたお茶を差し出した。
 この草は幻覚を見せ錯乱させる作用があり強い依存性がある。

「余が、何の警戒もせずお茶を飲むとても思っているのか? アリアドネ、お前がとても危険な女だと分かっている。その上で、お前を受け入れた余に毒でも盛るつもりか?」
 予想通り警戒されていた。

「陛下は何もかも手にいれる立場にあるのに、勿体無い人生をお過ごしですのね。味わったことのないような快楽をくれますのよ。彼も私と同じように陛下に愛されたいようです。どうか、陛下のご慈悲を与えてあげてくださいな」

 私が事前に指示した通り、ケントリンがお茶を口に含んでエウレパ国王に口移しで飲ませた。

 「はぁ、本当に何だか天国にいるようだな⋯⋯」
 エウレパ国王については思惑通りになったが、私はケントリンが心配になった。

 ラリーゼル草は、シャリレーン王国でも最も危険とされる毒草だ。
一度その成分が少しでも体内に入ると、2度と抜け出せない幻覚の世界に誘われる。

 ケントリンにはサイドテーブルに置いた水で口をゆすいで、ゆすいだ水はそのまま床にでも吐くように伝えていた。
 それなのに、彼はどこかボーッとしていて水に手を出さない。

 私は咄嗟に自分が水を口に含み、彼の口に注いだ。
 そのまま、彼の頭を思いっきり掴んで振って水を吐き出させた。

「ケントリン、私を見て、私は誰?」
「アリアドネ・シャリレーン王女殿下です⋯⋯」
 私は心よりほっとして、彼を強く抱きしめた。

 自分が恐怖から逃げる為に、ずっと私に寄り添ってくれた彼を利用してしまった。私は本当に聖女とは程遠い存在だ。

 ラリーゼル草の効き目で、エウレパ国王は意識混濁状態に陥った。

「はぁ、アリアドネ⋯⋯お茶をくれないか、アリアドネ⋯⋯」
 彼は蛇のように私の寝室を這いつくばりながら、私にお茶を欲しいと乞うている。水も与えられず、喉がカラカラといった状況なのだろうか。

「陛下、あれは国際的にも禁止されているお茶なのです。陛下のお楽しみの為に入手しましたが⋯⋯私もこのお茶を使うには罪悪感があります」
 私がそう言うと血走った目をしながらエウレパ国王が私に迫ってきた。

「何でもする。お願いだ。お茶を⋯⋯」
 私はエウレパ国王に、国が混乱するような指示を出し続けた。
 彼は判断能力が鈍っていて、お茶欲しさに私に従い続けた。

♢♢♢

「アリアドネ様、陛下が1年以上も貴方様の寝室から出てこない事に対し、あなた様に疑いの声が上がっております」
「疑い? それって何のことかしら。それでは、この母の形見の指輪に盗聴魔法をかけてくだささる?」

 エウレパ王国の発展の秘密の1つに魔法使いワイズの存在があった。
 世界にも少数の言われる魔法使いをエウレパ王国は囲い込んでいた。

 私は母の形見の指輪に盗聴魔法をかけてもらった。
 私が誰かの言葉を盗聴したいとしたら、妹カリンの言葉だ。
 彼女が何を考えて、どんな声をしているのか知りたくて仕方がなかった。

「はあ、それで私と陛下の営みをお聞きしたい高貴な方はどこにいらっしゃるのかしら?」

 私の言葉に私に疑いを抱いて、詰め寄っていた貴族たちは固まった。
 国王を盗聴しようなど、誰にもできるわけがない。
  
 定期的にケントリンにカルパシーノ王国に行って、カリンの様子を見に行ってもらい寄付を届けに行って貰っていた。そして、現在のエウレパ王国の混乱状態をカルパシーノ王国にそっと漏らしてもらった。

 彼に指輪を預けて妹に届けてもらうことも考えたが、大切な母の形見を人に預けることなどできなかった。

 私は、セルシオ・カルパシーノが自分を解放してくれるのをひたすらに待った。
 しかし、彼は対話を要求してくるばかりで、なかなかエウレパ王国を攻めにきてくれなかった。

 私はエウレパ王国の内情を知りながら、自分と同じような目に合っている奴隷をすぐにでも解放しようとしない彼に苛立った。

 戦争をしたくない気持ちは分かるけれど、それ以上に一生苦しむようなトラウマを抱える苦しみを味わっている子たちの存在を優先して欲しかった。

 対話しても通じない相手がいることをセルシオ・カルパシーノだって知っているはずだ。

 彼は5年間、エウレパで奴隷をしていた。私も5年間、自分の無力に打ちひしがれ一生消えぬ傷を背負って3カ国で身柄を拘束された。

 19歳になったある日、やっとセルシオ・カルパシーノは奴隷解放の為、エウレパ王国を攻めてきた。

 私は3年間、部屋に篭り薬学や政治学などの書物を漁りながらケントリンと、人ではなくなったエウレパ国王と過ごしてきた。
 
「ケントリン、今すぐエウレパ国王の首を切って」

 ケントリンは私に言われた通り、エウレパ国王の首を剣で切りはじめた。
首を切るのはスパッとはいかないのか、彼が非力なのか時間が掛かった。

 私はエウレパ国王の首を切って、狂った淫猥な女としてセルシオ・カルパシーノの前に現れるつもりだ。その時、やっと私は解放されて、妹と再会し祖国に帰れるだろう。
 


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