身代わり婚〜悪女の姉の策略で嫁ぎましたが夫を溺愛してます〜

専業プウタ

文字の大きさ
26 / 40

26.まさか、替え玉?

しおりを挟む
 ケントリンの報告は驚くべきものだった。
 カリンはセルシオ国王を侮辱されたことで、決闘を申し込み勝利したらしい。
 私は全てを理解した。

 カリンは時を戻している。

 そして、彼女はただの聖女ではなく、創世の聖女の生まれ変わりだ。
 創世の聖女は、最期の時まで奇跡のような神聖力の力を持った神のような存在だとクリス皇子が言っていた。
 
 侮辱されたことを許せず決闘を申し込むだなんて、そこに慈悲の心は感じない。
 その上、孤児院育ちの彼女がいくら何でもそこまでの剣術を身につけるのは不可能だ。

「ケントリン、カリンの剣術はどの国の騎士団のものに似ていた?」
 受け継がれている剣術には特徴がある。

 それで、時を戻す前のカリンの行動がわかるかもしれない。
 神にも等しい彼女が、時を戻さなければならない事態があったのだ。

 生贄はおそらくルイス皇子だろう。

 ルイス皇子も、時を戻すことに賛同したと言うことだ。
 だとしたら、世界規模の大戦や感染症など時を戻さなければならなかった事態があったに違いない。

 術師であるカリンに何があったか尋ねたいが、内容が内容だけに手紙を送ったり、伝言を頼むのも危険だ。
 その上、彼女自身が私に何の相談もしないと言うことは、悲しいが私の協力は必要としていないと言うことだろう。

「剣術って、種類があるんでしょうか?」
 私はケントリンの恐ろしさを知った。

 彼は今までの3カ国で何を見て来たのだろう。
 同じ騎士として、稽古に入れてもらう社交性はなくても技術は盗もうと必死に観察したりするのが普通だ。

「これからは良く観察して見て見なさい。ちなみにセルシオ・カルパシーノは一切の防御のない攻撃的な剣を振るうことで有名だけど、これはエウレパ王国の王宮剣術よ」

「それです。カリン様は攻撃しかしていませんでした。それなのに無傷で、相手の首を途中まで切ってました。でも、神聖力で一瞬で治してましたよ」 
(首? 相手は帝国の騎士なのに何て危なっかしいことを⋯⋯)

 私はある可能性に気づいた。
 帝国にカリンの神聖力の強さが目撃されたと言うことは、カリンを帝国に連れて行きたいと提案して来そうだ。

「今日はもういいわ。カリンのところに戻りなさい」
「カリン様から姫様の元に戻るようにと言われました」

 どうやらカリンはもう、ケントリンの使えなさに気がついたらしい。

 彼は幸運なことに割とできる男風の顔をしているので、突っ立ってるだけで実は強くて何かを思慮深く観察していると勘違いしてもらえていた。
(すぐに箱の中身が空であると気がつくとは、流石は創世の聖女ね⋯⋯)

「アリアドネ王女殿下、ルイス皇子が大事な話があるとのことです」
 ノックと共に帝国の使いが現れた。
 
 人に見つからないように案内された道はカルパシーノ王国の隠し通路だった。
 それにしても地下都市ができるのではないかと言うくらい、立派な隠し通路だ。
 これでは、軍勢がこの道を通れてしまう。
 シャリレーン王国にも隠し通路があるが、屈んで人が1人通れるレベルのものだった。
 まるで恩人のようにカルパシーノ王国の創建に手を貸しながら、帝国はいつでもこの国を攻めて奪えるようにしている。

(ベリオット・パレーシア、かなりの曲者だわ⋯⋯)

 確かに現在のカルパシーノ王国はセルシオ国王が商業を発展させ、教育機関もつくっている。
 それゆえ、国民のセルシオ国王への尊敬の念が強い。
 帝国の領地にして、遠方の帝国から貴族を派遣するよりもセルシオ・カルパシーノを王にして取引した方が良いと考えたのだろう。
 
「アリアドネ、よく来てくれたな」
 ルイス皇子の声が明るすぎて驚いてしまった。
 もっと、低い声で淡々と喋っていたはずだ。
(まさか、替え玉?)

 隣には、仲が悪そうに見えたレイリン・メダン公爵令嬢までいる。
 含みのある笑顔で私を見ているのは、私がルイス皇子から切られる瞬間を見に来たのだろう。
 なんと視野の狭い残念な貴族令嬢だ。

 私はシャリレーン王国に女王として戻るアリアドネ・シャリレーンとしてパレーシア帝国の次期皇帝と交渉しに来ているのだ。
 


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む

青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。 12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。 邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。 、

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

偽聖女として断罪追放された元令嬢は、知らずの森の番人代理として働くことになりました

石河 翠
恋愛
見習い聖女として神殿で働いていた伯爵令嬢リリィは、異母妹に嵌められ偽聖女として断罪される。頼りの大聖女も庇ってくれないまま、リリィは貴族ではなく平民として追放された。 追放途中リリィは、見知らぬ騎士に襲われる。危ないところを美しい狼の加勢で切り抜けた彼女は、眠り続けているという森の番人の代理を務めることに。 定期的に森に現れる客人の悩みを解決するうちに、働きづめだった神殿やひとりぼっちだった実家よりも今の暮らしを心地よく感じ始めるリリィ。そんな彼女の元に婚約破棄したはずの婚約者が復縁を求めてやってきて……。 真面目でちょっとお人好しなヒロインと、訳ありヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 約10万字、2025年6月6日完結予定です。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙画像は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:1602447)をお借りしております。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

処理中です...