40 / 40
40.カリンは創世の聖女の生まれ変わりです。
しおりを挟む
カリンから聞いた話は想像を遥かに超えていた。
彼女は私とルイス皇太子を生贄にして、時を戻したらしい。
しかも、同意も取らず無理矢理だ。
(慈悲深い聖女とは程遠い行動⋯⋯この子が神様でしょ⋯⋯)
「カリン⋯⋯おそらく過去の私は自分とあなたを切り離せず、あなたを貶めるような行動をとったかもしれない。それでも、私も含め繰り返す事のないかけがえのない時を生きている⋯⋯お願いだから2度と時を戻すなんてことはしないで欲しい⋯⋯」
「分かりました。アリアお姉様」
カリンは一点の曇りもない瞳で私のいうことを素直に聞いてくる。
彼女の声は優しくて澄んでいて聞いているだけで心が癒される。
きっと過去の私も心が闇に引き摺り込まれそうになる度に、盗聴した彼女の声を聞いてなんとか自分を保とうとしたのだろう。
時を戻す前は彼女と5日間、2人で過ごしたと聞いた。
きっと私は、こんな風に自分を姉と慕ってくる彼女に複雑な思いを抱いただろう。
私が彼女を求め出したのは、両親を亡くしてからだった。
それまでは、自分に根付いたシャリレーン教の教えの元に彼女の犠牲は仕方がないものだと思っていた。
彼女が生きていると知った時も、捨てられた側の妹で、私の模造品として作られた可哀想な存在だと同情心を持った。
でも、実際再会した彼女は誰からも愛される幸せそうな子だった。
自分の神聖力が消滅しそうな時に、奇跡のような力を使う彼女に私は嫉妬しただろう。
無垢な笑顔で私を姉と慕う彼女を愛おしく思うと同時に、憎らしく思ったに違いない。
きっと、世界中の悪意を彼女の身代わりに自分が受けたと被害者妄想に取りつかれた。
皮肉なことに、回帰後に彼女に対する妬みが一瞬で消えたのは彼女が私を突き放したからだ。
彼女がいつも幸せそうにしている事と、私に起こった不幸な出来事は何の関係もないことに気がつけた。
戴冠式を終え、私は女王就任の演説の場にカリンを連れて行った。
彼女は優しい色をしたピンクのドレスを着ていて、服に興味のない私から見てもとても似合っていた。
王宮のバルコニーから見下ろすと、大勢の国民が期待するように私を見るのが分かった。
高低差から豆粒ほどの大きさにしか、みんなが見えないのに期待で輝く表情が見えるような感覚に陥った。
シャリレーン教による王族を神のように崇める教えのせいで、彼らは私が戻って来ただけで国の状況が好転すると勘違いしている。
私は5年以上も留守にしたのに、国が荒廃するばかりで誰も国をどうにかしなかったことに失望していた。
しかし、落ち込んでいる暇など私には1秒たりともない。
「今日は皆様に19年前、シャリレーン王家が犯した罪についてお話しします」
私の言葉に国民が騒つくのが分かった。
そして、皆がカリンに注目している。
私と似ている彼女がいることに、皆が母アンレリネが悪魔に取り憑かれ双子を産んだ真実を明かそうとしていると思っているのが分かった。
悪魔に取り憑かれていたのは私を含めこの国の異常な宗教だ。
他国からどう思われているかにも気づかず、王家を崇めていれば幸せになれると勘違いしている。自らは国の為になんの努力もしようとしない怠惰な国民性はそうやってつくられてしまった。
「私の母アンレリネ・シャリレーンは双子を産みました。母が迫害されるのを恐れ、先王であるレイサイア・シャリレーンは私の妹をカルパシーノ地方に捨てました。その子が隣にいるカリンです」
私の言葉に自分が紹介されたことに気がついたカリンがドレスを持ち上げて挨拶をする。
彼女の女神のような清らかで美しい姿に周りが息を呑むのが分かった。
「カリンは創世の聖女の生まれ変わりです。無限の神聖力を持つ神にも等しい存在でした。シャリレーン王国は悪しき風習により、神を捨ててしまった国家なのです」
国民が悲鳴のような声をあげているのが聞こえる。
でも、私は多くのシャリレーン王国の国民が双子が生まれた際、片方を処分してきたのを知っていた。
悪しき風習により失われた多くの命が、神に助けを求めカリンはこの地に生まれたのかもしれない。
双子の片割れは模造品で人ではないという信仰⋯⋯そんな訳はない。
カリンは神かもしれないけれど、私よりも馬鹿みたいに恋している人間らしい女の子だ。
そして、私もカリンの身代わりでも模造品でもない。
私は、この間違った歩みを進めていたシャリレーン王国を正しい方向に導く天命を持った女王⋯⋯アリアドネ・シャリレーンだ。
「過ぎ去ってしまった時も過ちも、全て受け入れなければなりません。これからは国民1人1人が自分たちの幸せの為に国の未来の為に生きることが望まれます。パレーシア帝国から10年支援が受けられます。軍事、商業、教育あらゆる場面において彼らから学んでください」
悲鳴をあげていた国民たちも落ちつたいようで、私の演説を聞き出した。
おそらくパレーシア帝国の文化が入ってきたら彼らは自分たちの遅れに気がつくだろう。
「妹のカリンが嫁ぐカルパシーノ王国とは平和同盟を結びました。これからは、他国と助け合いながら私たちシャリレーン王国の歩みを進めていきましょう」
私がドレスを持ち上げて挨拶をすると、拍手が巻き起こる。
隣を見ると、私の愛おしい妹が微笑みながら私を見ていた。
彼女は私とルイス皇太子を生贄にして、時を戻したらしい。
しかも、同意も取らず無理矢理だ。
(慈悲深い聖女とは程遠い行動⋯⋯この子が神様でしょ⋯⋯)
「カリン⋯⋯おそらく過去の私は自分とあなたを切り離せず、あなたを貶めるような行動をとったかもしれない。それでも、私も含め繰り返す事のないかけがえのない時を生きている⋯⋯お願いだから2度と時を戻すなんてことはしないで欲しい⋯⋯」
「分かりました。アリアお姉様」
カリンは一点の曇りもない瞳で私のいうことを素直に聞いてくる。
彼女の声は優しくて澄んでいて聞いているだけで心が癒される。
きっと過去の私も心が闇に引き摺り込まれそうになる度に、盗聴した彼女の声を聞いてなんとか自分を保とうとしたのだろう。
時を戻す前は彼女と5日間、2人で過ごしたと聞いた。
きっと私は、こんな風に自分を姉と慕ってくる彼女に複雑な思いを抱いただろう。
私が彼女を求め出したのは、両親を亡くしてからだった。
それまでは、自分に根付いたシャリレーン教の教えの元に彼女の犠牲は仕方がないものだと思っていた。
彼女が生きていると知った時も、捨てられた側の妹で、私の模造品として作られた可哀想な存在だと同情心を持った。
でも、実際再会した彼女は誰からも愛される幸せそうな子だった。
自分の神聖力が消滅しそうな時に、奇跡のような力を使う彼女に私は嫉妬しただろう。
無垢な笑顔で私を姉と慕う彼女を愛おしく思うと同時に、憎らしく思ったに違いない。
きっと、世界中の悪意を彼女の身代わりに自分が受けたと被害者妄想に取りつかれた。
皮肉なことに、回帰後に彼女に対する妬みが一瞬で消えたのは彼女が私を突き放したからだ。
彼女がいつも幸せそうにしている事と、私に起こった不幸な出来事は何の関係もないことに気がつけた。
戴冠式を終え、私は女王就任の演説の場にカリンを連れて行った。
彼女は優しい色をしたピンクのドレスを着ていて、服に興味のない私から見てもとても似合っていた。
王宮のバルコニーから見下ろすと、大勢の国民が期待するように私を見るのが分かった。
高低差から豆粒ほどの大きさにしか、みんなが見えないのに期待で輝く表情が見えるような感覚に陥った。
シャリレーン教による王族を神のように崇める教えのせいで、彼らは私が戻って来ただけで国の状況が好転すると勘違いしている。
私は5年以上も留守にしたのに、国が荒廃するばかりで誰も国をどうにかしなかったことに失望していた。
しかし、落ち込んでいる暇など私には1秒たりともない。
「今日は皆様に19年前、シャリレーン王家が犯した罪についてお話しします」
私の言葉に国民が騒つくのが分かった。
そして、皆がカリンに注目している。
私と似ている彼女がいることに、皆が母アンレリネが悪魔に取り憑かれ双子を産んだ真実を明かそうとしていると思っているのが分かった。
悪魔に取り憑かれていたのは私を含めこの国の異常な宗教だ。
他国からどう思われているかにも気づかず、王家を崇めていれば幸せになれると勘違いしている。自らは国の為になんの努力もしようとしない怠惰な国民性はそうやってつくられてしまった。
「私の母アンレリネ・シャリレーンは双子を産みました。母が迫害されるのを恐れ、先王であるレイサイア・シャリレーンは私の妹をカルパシーノ地方に捨てました。その子が隣にいるカリンです」
私の言葉に自分が紹介されたことに気がついたカリンがドレスを持ち上げて挨拶をする。
彼女の女神のような清らかで美しい姿に周りが息を呑むのが分かった。
「カリンは創世の聖女の生まれ変わりです。無限の神聖力を持つ神にも等しい存在でした。シャリレーン王国は悪しき風習により、神を捨ててしまった国家なのです」
国民が悲鳴のような声をあげているのが聞こえる。
でも、私は多くのシャリレーン王国の国民が双子が生まれた際、片方を処分してきたのを知っていた。
悪しき風習により失われた多くの命が、神に助けを求めカリンはこの地に生まれたのかもしれない。
双子の片割れは模造品で人ではないという信仰⋯⋯そんな訳はない。
カリンは神かもしれないけれど、私よりも馬鹿みたいに恋している人間らしい女の子だ。
そして、私もカリンの身代わりでも模造品でもない。
私は、この間違った歩みを進めていたシャリレーン王国を正しい方向に導く天命を持った女王⋯⋯アリアドネ・シャリレーンだ。
「過ぎ去ってしまった時も過ちも、全て受け入れなければなりません。これからは国民1人1人が自分たちの幸せの為に国の未来の為に生きることが望まれます。パレーシア帝国から10年支援が受けられます。軍事、商業、教育あらゆる場面において彼らから学んでください」
悲鳴をあげていた国民たちも落ちつたいようで、私の演説を聞き出した。
おそらくパレーシア帝国の文化が入ってきたら彼らは自分たちの遅れに気がつくだろう。
「妹のカリンが嫁ぐカルパシーノ王国とは平和同盟を結びました。これからは、他国と助け合いながら私たちシャリレーン王国の歩みを進めていきましょう」
私がドレスを持ち上げて挨拶をすると、拍手が巻き起こる。
隣を見ると、私の愛おしい妹が微笑みながら私を見ていた。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
婚約破棄された聖女様たちは、それぞれ自由と幸せを掴む
青の雀
ファンタジー
捨て子だったキャサリンは、孤児院に育てられたが、5歳の頃洗礼を受けた際に聖女認定されてしまう。
12歳の時、公爵家に養女に出され、王太子殿下の婚約者に治まるが、平民で孤児であったため毛嫌いされ、王太子は禁忌の聖女召喚を行ってしまう。
邪魔になったキャサリンは、偽聖女の汚名を着せられ、処刑される寸前、転移魔法と浮遊魔法を使い、逃げ出してしまう。
、
偽聖女として断罪追放された元令嬢は、知らずの森の番人代理として働くことになりました
石河 翠
恋愛
見習い聖女として神殿で働いていた伯爵令嬢リリィは、異母妹に嵌められ偽聖女として断罪される。頼りの大聖女も庇ってくれないまま、リリィは貴族ではなく平民として追放された。
追放途中リリィは、見知らぬ騎士に襲われる。危ないところを美しい狼の加勢で切り抜けた彼女は、眠り続けているという森の番人の代理を務めることに。
定期的に森に現れる客人の悩みを解決するうちに、働きづめだった神殿やひとりぼっちだった実家よりも今の暮らしを心地よく感じ始めるリリィ。そんな彼女の元に婚約破棄したはずの婚約者が復縁を求めてやってきて……。
真面目でちょっとお人好しなヒロインと、訳ありヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
約10万字、2025年6月6日完結予定です。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙画像は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:1602447)をお借りしております。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】
小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」
夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。
この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。
そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる