サレ妻は異世界で次期皇帝から溺愛されるも、元の世界に戻りたい。

専業プウタ

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19.ミランダが初めてです。

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「ラキアス、今日は騎士団の選抜試験が開催されるのです。是非、拝見して頂きたいところなのですが今日はこちらの部屋で私と一緒にお話をして過ごしませんか?」

 本当はラキアスに選抜試験に参加するミラリネの強さを見てもらう予定だった。

 しかし、その強さは昨日彼が身を持って体験して、帝国の方々にも拝見してもらっている。

 今日はラキアスを外に出さない方がよい。
 彼がミラ国で万が一、これ以上怪我でもしたら大変なことになる。

「ミランダ、そのような顔をしないでください。心配しなくても大丈夫です。今後何かあっても帝国がミラ国を攻めることはありません」

 心配そうに私を見つめてくるラキアスは、全てを察しているように思えた。
 皇子は5人もいるというのに、帝国の皇帝陛下は彼だけを息子のように扱っているらしい。

 だから、万が一小国でしかないミラ国で彼に何かあれば帝国の皇帝陛下の怒りをかうのは想像に容易い。
 私は彼自身を心配するよりも、ミラ国の心配をしてしまっている自分を気持ち悪く感じた。

「ラキアスは私の今まで会った誰とも違う方です。いつも何を考えているのですか?」

 彼は本当に不思議な人だ。
 私は元の世界でセレブの世界に足を踏み入れた気でいた。
 しかし、ここまで育ちも良い上に、性格も良いというような人間には出会ったことはない。
 元の世界では富と強かさは、心の美しさと反比例の関係なのではないかと思うことが多かった。

「僕が何を考えているのか聞いてくれた人は、ミランダが初めてです」

 私はラキアスのような美少年を見るのも初めてだ。
 私が7歳なら恋をして夢中になっていただろうか。
 そのようなことが想像できないのは、彼が持っている帝国の次期皇帝という冠が大きすぎるからだ。

 今、私の為に怪我をしてしまった彼と2人きりで部屋にいる。
 この時だけでも、私は彼を帝国の次期皇帝としてではなく、ただのラキアスとして見て接したいと思っていた。

「皇帝陛下や皇后陛下から、そのようなことを聞かれたことはないのですか?」
 私はラキアスに聞きながら、自分こそミライにそのようなことを聞いたことは一度もないことに気がついた。

「父上も母上もそのような事を聞いてくれたことはありません。でも、僕はいつも自分の考えを主張しています。僕は皇帝には向いていないし、スコットのことも僕と同じように接して欲しいと伝えています」
 ラキアスが7歳のせいか、私はいつも彼を見るとミライを思い出してしまう。

「スコット皇子とはラキアスと同じ、皇后陛下の息子さんですよね」

「その通りです。でも、彼は顔立ちも髪色も父上に似てないので、父上が自分の子だと信じきれてません。母上は父上がスコットに冷たく接するので、それに倣って彼に冷たく接しています。彼は僕に対して甘い両親が自分に冷たいのを見て傷ついています」

 皇帝陛下には5人の皇子がいるという。

 今の話を聞く限り可愛がっているのは自分にそっくりのラキアスだけのようだ。

 可愛がられ贔屓される側であるラキアスが、それを負担に思っているように見える。

「ラキアスは優しいですね。弟君のことが心配なのですね。ラキアスはどうしたいのですか?」

 今、部屋に2人きりだろうか。
 ラキアスが私に心のうちを話してくれるのが分かる。

 いつもより幼い彼の表情が私の心をざわつかせる。
 一言発する度に酷い後悔に襲われる。

 どうして、ラキアスにかけられる言葉をミライにかけられなかったのかと。
 「どうしたいの?」と一言聞いたら、小学校受験をやめたいと言われそうで聞けなかった。
 私はミライを愛していると言いながら、ミライの要望を聞く事は一度もなかったのだ。

「ミランダ、僕のことを心配してくれているのですか? 泣かないでください」

 ラキアスに目元を拭われて、私は更に罪悪感に襲われた。
 私が泣いたのは彼を思ってではない、元の世界で最低の母親だった自分を悔いて泣いたのだ。

「もちろん父上にも、母上にも、僕に接すのと同じようにスコットに接して欲しいです。そして、できればスコットに皇位を継がせてあげたいです。彼は既に次期皇帝になりたいと公言しているのですから」

「5歳ですよね。もう、次期皇帝になりたいと言っているのですか? 皇帝陛下はラキアスが皇帝になることを望んでいるのですよね」

 私は驚いてしまった。
 実際、幼少期の夢というのは自分自身で見つけるのは難しい。
 皇帝陛下はラキアスを皇帝にしたいと考えているのに、望まれていないスコット皇子が自ら皇帝になりたいと思うものなのだろうか。

 小学校受験のための塾では、親が医者の子は医者になるのが夢だと言って、ミライはパイロットになりたいと言っていた。
 そこには、まだ自分の将来なんて決められない子供へ強制するような親の刷り込みがあった。

 私もミライが自分の将来の夢がまだ思いつかないと言った際、お父様のようなパイロットになりたいと言うように言った。

 航空機は公共交通機関としての役割だけではなく、多くの人の夢や希望も運んでいる素敵な役割があると説明するように指示した。

 我が子の心の言葉に目を向けずに、完全なマリオネットにすることで突破した受験になんの意味があったのだろう。

「母上の兄であるカルマン公爵がスコットが皇帝になることを望んでいます。公爵は僕があまりに使い物にならなそうなので、弟のスコットにターゲットを決めたようなのです。公爵が弟に近づいてから、彼はどんどん僕を敵視するようになりました。今では僕を見ると睨みつけてきます」

 両親がラキアスを皇帝にしたいのに、叔父がスコット皇子を皇帝にしたいということだろう。
 ラキアスがいつになく心のうちを私に明かしてくれる。
 心のうちを明かし合えば、距離が近くなり私も彼を本当に愛したりするのだろうか。
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