30 / 32
30.実家は極太ですが、彼自身は極小です。
しおりを挟む
「目が覚めたのか? 今、ナースを呼ぶから」
私は病院のベットで横たわっていた。
夫の正志が私の顔を覗き込んで、ナースコールを押した。
「離婚してください。不倫したのだから、あなたの有責よ。親権は私が欲しいところだけど、ミライの判断に委ねようと思う」
私はゆっくりと体を起こしながら、ずっと考え続けていたことを彼に言った。
近くにあるカレンダーを見ると3月になっている。
私は1ヶ月近く昏睡状態になっていた可能性がある。
「申し訳なかったよ、杏奈。謝るから許してくれよ。ミライから父親を奪う訳にはいかないだろ」
ちっとも悪びれもせず、謝ってくる夫の態度に私は不信感を覚えた。
何かがおかしい、この1ヶ月でおそらく何か起こっている。
ミライは当然自分についてくると夫は言っていたはずなのに、私が親権を取れそうな話になっている。
ナースがやってきて、マスクをしている上にアクリル板のようなもので顔を覆っている。
緊急事態に相当するだろう、かなりの重装備だ。
ひょっとして今、感染症のようなものが流行しているのではないだろうか。
「オーバードーズで昏睡状態に陥っていたようですが、今、お名前は言えますか?」
「西園寺杏奈です」
私は名前を言いながらミランダ・ミラだった時を思い出した。
あの11年にもおよぶ時は夢だったのだろうか。
「杏奈さん、あなた自殺未遂なんてして何を考えてるの?」
義理の母が怒り顔で扉を開けて入ってくる。
散々私を下品な女と罵り見下してきた女だ。
「あなたの息子に浮気されました。私は自殺未遂をした覚えはありません。これからは絶対に風邪薬は用法要量を守って飲みたいと思います」
「離婚なんて絶対にダメよ。このような時だからこそ家族で力をあわせなければ。浮気の一つや二つ西園寺家の女ならば受け入れる器を持たないと」
浮気に対して否定することがない義母を見て、私は夫の不倫の事実は既に義母の知るところになっていることだと認識した。
そして、今、私に離婚されると困る事情があるのだ。
義母は航空会社の地上職出身でパイロットの義父とは地上訓練中に出会っている。
義父は浮気三昧で、それを受け入れている自分は器がでかいとでも思っているのだろう。
そのような家庭に育っているから、夫のような自分勝手な人間が育つのだ。
このような時とは私の体調を考慮してのことではないだろう。
彼女が私のことを気にしてくれたことは一度もない。
妊娠中でさえ、散々嫌がらせをしてきたクソババアだ。
「義母さん、私は浮気を受け入れることが器が大きいとは考えません。不貞行為を悪びれず繰り返す男親のいる家庭は不幸だと考えます。私は子供の生活環境を一番に考えたいのです。私のことを下品とおっしゃいましたが、あなたの息子は会社の内定者だった私に手をだした男です。きっと浮気相手は1人ではないと思います。私は会社に今回の夫の不貞行為を相談するつもりです。当然離婚もします」
私の言葉に義母と夫が顔を青くして見合わせる。
職歴もない私が離婚したいと言い出すとは思わなかったのだろう。
夫と義母の不可解な様子を見るに、すでに会社の女の子に手を出したことで問題になっているのかもしれない。
そして今、感染症が流行っているとしたら、こういう時に航空業界の業績は悪くなる。
お金をかけて訓練をした操縦士だって、問題があればリストラ対象になるだろう。
「ちょっと待ちなさい。お義父様を呼んでくるから、あなたは目覚めたばかりで興奮状態なのよ」
「あの、面会の方は原則1人までなので守って頂かないと」
ナースが困ったように言ってくる。
個室にも関わらず面会の人間が制限されている今はやはり通常時とは違うようだ。
「個室でしょ。高い金払っているのだから、うちは西園寺家よ」
相変わらず義母の「私は金持ちよ、家柄も最高よ」アピールにうんざりする。
「看護師さん、常識のない西園寺家はご存知かもしれませんが政治家の西園寺亨の家です。私の夫は政治家になるより、女の子に乗り放題のパイロットを目指しました。実家は極太ですが、彼自身は極小です」
私の言葉に思わずナースが吹き出す。
「おい、お前何言ってるんだよ。看護師さん今の言葉は忘れてください」
「すみません。ドクターを呼んで参ります」
ナースは笑いを堪えながら去っていった。
「噂はあっという間に広がると思うわ。女の噂ってあることないこと、すぐに回るのよ。今の私の話はネタ的にも話題になりそうね」
私は訓練中、夫の子供を妊娠した時のことを思い出した。
制度上会社を辞める必要はなかったが、私が妊娠した話は全く違う内容であっという間に広がった。
私が一方的に夫に迫り、未来のパイロットの妻の座を狙って妊娠したというものだった。
男性経験もなく男の人と話すのも苦手だった私がどう迫るというのだ。
私はすでに内定した会社の先輩だった夫に誘われて断り方もよく分からず困っていた。
それを同じ内定者の同僚たちは見ていたはずなのに、噂は全く違う形で回ったのだ。
そして私は周囲から軽蔑の対象として見られ、追い出されるように会社を辞めることになった。
私は病院のベットで横たわっていた。
夫の正志が私の顔を覗き込んで、ナースコールを押した。
「離婚してください。不倫したのだから、あなたの有責よ。親権は私が欲しいところだけど、ミライの判断に委ねようと思う」
私はゆっくりと体を起こしながら、ずっと考え続けていたことを彼に言った。
近くにあるカレンダーを見ると3月になっている。
私は1ヶ月近く昏睡状態になっていた可能性がある。
「申し訳なかったよ、杏奈。謝るから許してくれよ。ミライから父親を奪う訳にはいかないだろ」
ちっとも悪びれもせず、謝ってくる夫の態度に私は不信感を覚えた。
何かがおかしい、この1ヶ月でおそらく何か起こっている。
ミライは当然自分についてくると夫は言っていたはずなのに、私が親権を取れそうな話になっている。
ナースがやってきて、マスクをしている上にアクリル板のようなもので顔を覆っている。
緊急事態に相当するだろう、かなりの重装備だ。
ひょっとして今、感染症のようなものが流行しているのではないだろうか。
「オーバードーズで昏睡状態に陥っていたようですが、今、お名前は言えますか?」
「西園寺杏奈です」
私は名前を言いながらミランダ・ミラだった時を思い出した。
あの11年にもおよぶ時は夢だったのだろうか。
「杏奈さん、あなた自殺未遂なんてして何を考えてるの?」
義理の母が怒り顔で扉を開けて入ってくる。
散々私を下品な女と罵り見下してきた女だ。
「あなたの息子に浮気されました。私は自殺未遂をした覚えはありません。これからは絶対に風邪薬は用法要量を守って飲みたいと思います」
「離婚なんて絶対にダメよ。このような時だからこそ家族で力をあわせなければ。浮気の一つや二つ西園寺家の女ならば受け入れる器を持たないと」
浮気に対して否定することがない義母を見て、私は夫の不倫の事実は既に義母の知るところになっていることだと認識した。
そして、今、私に離婚されると困る事情があるのだ。
義母は航空会社の地上職出身でパイロットの義父とは地上訓練中に出会っている。
義父は浮気三昧で、それを受け入れている自分は器がでかいとでも思っているのだろう。
そのような家庭に育っているから、夫のような自分勝手な人間が育つのだ。
このような時とは私の体調を考慮してのことではないだろう。
彼女が私のことを気にしてくれたことは一度もない。
妊娠中でさえ、散々嫌がらせをしてきたクソババアだ。
「義母さん、私は浮気を受け入れることが器が大きいとは考えません。不貞行為を悪びれず繰り返す男親のいる家庭は不幸だと考えます。私は子供の生活環境を一番に考えたいのです。私のことを下品とおっしゃいましたが、あなたの息子は会社の内定者だった私に手をだした男です。きっと浮気相手は1人ではないと思います。私は会社に今回の夫の不貞行為を相談するつもりです。当然離婚もします」
私の言葉に義母と夫が顔を青くして見合わせる。
職歴もない私が離婚したいと言い出すとは思わなかったのだろう。
夫と義母の不可解な様子を見るに、すでに会社の女の子に手を出したことで問題になっているのかもしれない。
そして今、感染症が流行っているとしたら、こういう時に航空業界の業績は悪くなる。
お金をかけて訓練をした操縦士だって、問題があればリストラ対象になるだろう。
「ちょっと待ちなさい。お義父様を呼んでくるから、あなたは目覚めたばかりで興奮状態なのよ」
「あの、面会の方は原則1人までなので守って頂かないと」
ナースが困ったように言ってくる。
個室にも関わらず面会の人間が制限されている今はやはり通常時とは違うようだ。
「個室でしょ。高い金払っているのだから、うちは西園寺家よ」
相変わらず義母の「私は金持ちよ、家柄も最高よ」アピールにうんざりする。
「看護師さん、常識のない西園寺家はご存知かもしれませんが政治家の西園寺亨の家です。私の夫は政治家になるより、女の子に乗り放題のパイロットを目指しました。実家は極太ですが、彼自身は極小です」
私の言葉に思わずナースが吹き出す。
「おい、お前何言ってるんだよ。看護師さん今の言葉は忘れてください」
「すみません。ドクターを呼んで参ります」
ナースは笑いを堪えながら去っていった。
「噂はあっという間に広がると思うわ。女の噂ってあることないこと、すぐに回るのよ。今の私の話はネタ的にも話題になりそうね」
私は訓練中、夫の子供を妊娠した時のことを思い出した。
制度上会社を辞める必要はなかったが、私が妊娠した話は全く違う内容であっという間に広がった。
私が一方的に夫に迫り、未来のパイロットの妻の座を狙って妊娠したというものだった。
男性経験もなく男の人と話すのも苦手だった私がどう迫るというのだ。
私はすでに内定した会社の先輩だった夫に誘われて断り方もよく分からず困っていた。
それを同じ内定者の同僚たちは見ていたはずなのに、噂は全く違う形で回ったのだ。
そして私は周囲から軽蔑の対象として見られ、追い出されるように会社を辞めることになった。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!
ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。
しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。
父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。
そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる
そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。
彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。
リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。
しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――?
「愛するお義母様を幸せにします!」
愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!?
ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です!
完結まで執筆済みです!
小説家になろう様にも投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる