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12.まさか時を戻った記憶があるのですか?
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昨晩、アーネストに『いかなる時も仕事を優先する』と約束させることができた。
その甲斐あって、私は結婚式翌日から出勤する事ができている。アーネストは私がこの約束事を提案した時、少し不満そうな顔をした。きっと、彼は私との価値観の違いを感じ始めただろう。私の企みは確実に成功している。
マゼンダ王国内に私は13店舗の宝飾品店を経営しているが、基本は王宮に続く大通りの1番地価の高い場所にある本店にいる事が多い。一等地に本店を構える事で、私の宝飾品店はブランドイメージを作り上げて来た。
今日も、本店の奥の事務所で新商品の開発をデザイナーのサマンサと打ち合わせだ。
「ソフィア社長、昨日の結婚式、本当に素敵でした。あれ程美しい結婚式は生きている間に見る事はない気がします。もう、語り継がれる伝説ですよ」
「サマンサったら、素敵だったのは、新郎のアーネストでしょ。私の事ちゃんと見てた?」
「一応、見てましたよ。私のデザインした来季の新作のネックレスをつけて頂きありがとうございます」
結婚式に来た女性たちは皆、涎を垂らしそうな程に口をポカーンと開けてアーネストに見惚れていた。例外は私を睨んでいたシェイラ嬢だ。
私が身につけたピンクダイヤモンドのネックレスは、前回も生産が追いつかないくらいに売れた。
「あのネックレスはピンクダイヤモンドの石言葉である『完全無欠の愛』を表現したものなんです。どちらの方向から太陽が降り注いでも、光の屈折で新婦の顔を照らすように設計しています」
サマンサの説明に鳥肌が立ってしまった。
なんて縁起の悪いネックレスなのだろう。
アーネストが私を追い求め続けるから困っていると言うのに⋯⋯。
扉をノックする音と共にアーネストの熱狂的なファンであるキーラが入って来た。
「社長、お客様がお見えです。シェイラ嬢なのですが、念の為、個室に通しております⋯⋯」
キーラは熱烈なアーネストのファンだけあって、彼の女性遍歴を知り尽くしている。アーネストが付き合った最長記録を持つシェイラ嬢はキーラの憧れだ。
「ありがとう。キーラ! サマンサ、来季のペリドットのネックレスのデザインは3枚目のものでお願いするわ。試作品を明日中にでも作らせるから、また明後日にでも確認に来てくれる?」
「分かりました」
私はこのネックレスをブラッドリー王子のバースデーパーティーにつけていくつもりだ。今回は、アーネストの礼服とペアで作った若草色のドレスを着て最初の時のようにパーティーに参加する。殺されたからとはいえ、流石に前回はアーネストの面目を潰し過ぎた。
最初のパーティーではアーネストの瞳の色に合わせてエメラルドのネックレスを身につけた。今回、私は自分らしくドレスに合わせてペリドットを選択する。ペリドットはエメラルドよりも新緑を思わせる色をしているし、『イブニングエメラルド』とも称されていて夜のパーティーにぴったりだ。
シェイラ嬢の待っている部屋に入る前に、深呼吸をする。
扉をノックして部屋に入ると、シェイラ嬢は悲しそうな顔で私を見つめて来た。
「お水を持って来させましょうか?」
キーラは明らかに精神不安定なシェイラ嬢にシャンパンを渡したようだ。
シャンパングラスは空になっていて、彼女の顔はほんのり赤く染まっている。
目は潤んでいて体がユラユラ揺れて落ち着きがなく、余裕あるイイ女であるシェイラ・アルマンが保てていなかった。
「結構です。それよりも、ソフィア様にお願いがあります。アーネストを⋯⋯グロスター伯爵様を愛してください。お願いだから、もう彼を傷つけないで。彼は強く完璧に見えても、とても繊細で傷つきやすい方なの⋯⋯。彼は本当にずっと貴方だけを見つめて来たのですよ。大切にしてあげて⋯⋯」
シェイラ嬢は絞り出すような声を出しながら私に畳み掛けた。最後の方の声は掠れて消えそうだった。
思っても見ないことを言われて驚いていると、シェイラ嬢の頬を一筋の涙が伝った。
私は慌ててレースのハンカチで彼女の頬に当てる。
「私にかけてくれる優しさなんていりません。お願いだからグロスター伯爵様に優しくして。どうして、結婚までしたのに他の男性と婚約を発表するなどという無慈悲な事ができるのですか!?」
「えっ? なんで、それを⋯⋯まさか時を戻った記憶があるのですか?」
私の疑問にシェイラ嬢は深く頷いた。
「シェイラ嬢⋯⋯王宮の庭園でアーネストと熱烈に抱き合ってましたよね。シェイラ嬢がアーネストを請け負うという選択肢もあるのではないのですか?」
「ご覧になっていたのなら分かるでしょ。私は、彼にプライドを捨てて迫りましたが振られました。でも、彼が辛そうで放って置けなくて⋯⋯そんなに辛いなら一緒に死んであげると提案したんです⋯⋯」
ポロポロと涙を流しながらシェイラ嬢から語られたあの日の真実に私は絶望した。
古より結ばれない2人が選びがちな最も愚かな選択⋯⋯『心中』
どうやら、シェイラ嬢とアーネストは極度のロマンチストで恋が叶わないと『心中』を考えてしまうようだ。
その甲斐あって、私は結婚式翌日から出勤する事ができている。アーネストは私がこの約束事を提案した時、少し不満そうな顔をした。きっと、彼は私との価値観の違いを感じ始めただろう。私の企みは確実に成功している。
マゼンダ王国内に私は13店舗の宝飾品店を経営しているが、基本は王宮に続く大通りの1番地価の高い場所にある本店にいる事が多い。一等地に本店を構える事で、私の宝飾品店はブランドイメージを作り上げて来た。
今日も、本店の奥の事務所で新商品の開発をデザイナーのサマンサと打ち合わせだ。
「ソフィア社長、昨日の結婚式、本当に素敵でした。あれ程美しい結婚式は生きている間に見る事はない気がします。もう、語り継がれる伝説ですよ」
「サマンサったら、素敵だったのは、新郎のアーネストでしょ。私の事ちゃんと見てた?」
「一応、見てましたよ。私のデザインした来季の新作のネックレスをつけて頂きありがとうございます」
結婚式に来た女性たちは皆、涎を垂らしそうな程に口をポカーンと開けてアーネストに見惚れていた。例外は私を睨んでいたシェイラ嬢だ。
私が身につけたピンクダイヤモンドのネックレスは、前回も生産が追いつかないくらいに売れた。
「あのネックレスはピンクダイヤモンドの石言葉である『完全無欠の愛』を表現したものなんです。どちらの方向から太陽が降り注いでも、光の屈折で新婦の顔を照らすように設計しています」
サマンサの説明に鳥肌が立ってしまった。
なんて縁起の悪いネックレスなのだろう。
アーネストが私を追い求め続けるから困っていると言うのに⋯⋯。
扉をノックする音と共にアーネストの熱狂的なファンであるキーラが入って来た。
「社長、お客様がお見えです。シェイラ嬢なのですが、念の為、個室に通しております⋯⋯」
キーラは熱烈なアーネストのファンだけあって、彼の女性遍歴を知り尽くしている。アーネストが付き合った最長記録を持つシェイラ嬢はキーラの憧れだ。
「ありがとう。キーラ! サマンサ、来季のペリドットのネックレスのデザインは3枚目のものでお願いするわ。試作品を明日中にでも作らせるから、また明後日にでも確認に来てくれる?」
「分かりました」
私はこのネックレスをブラッドリー王子のバースデーパーティーにつけていくつもりだ。今回は、アーネストの礼服とペアで作った若草色のドレスを着て最初の時のようにパーティーに参加する。殺されたからとはいえ、流石に前回はアーネストの面目を潰し過ぎた。
最初のパーティーではアーネストの瞳の色に合わせてエメラルドのネックレスを身につけた。今回、私は自分らしくドレスに合わせてペリドットを選択する。ペリドットはエメラルドよりも新緑を思わせる色をしているし、『イブニングエメラルド』とも称されていて夜のパーティーにぴったりだ。
シェイラ嬢の待っている部屋に入る前に、深呼吸をする。
扉をノックして部屋に入ると、シェイラ嬢は悲しそうな顔で私を見つめて来た。
「お水を持って来させましょうか?」
キーラは明らかに精神不安定なシェイラ嬢にシャンパンを渡したようだ。
シャンパングラスは空になっていて、彼女の顔はほんのり赤く染まっている。
目は潤んでいて体がユラユラ揺れて落ち着きがなく、余裕あるイイ女であるシェイラ・アルマンが保てていなかった。
「結構です。それよりも、ソフィア様にお願いがあります。アーネストを⋯⋯グロスター伯爵様を愛してください。お願いだから、もう彼を傷つけないで。彼は強く完璧に見えても、とても繊細で傷つきやすい方なの⋯⋯。彼は本当にずっと貴方だけを見つめて来たのですよ。大切にしてあげて⋯⋯」
シェイラ嬢は絞り出すような声を出しながら私に畳み掛けた。最後の方の声は掠れて消えそうだった。
思っても見ないことを言われて驚いていると、シェイラ嬢の頬を一筋の涙が伝った。
私は慌ててレースのハンカチで彼女の頬に当てる。
「私にかけてくれる優しさなんていりません。お願いだからグロスター伯爵様に優しくして。どうして、結婚までしたのに他の男性と婚約を発表するなどという無慈悲な事ができるのですか!?」
「えっ? なんで、それを⋯⋯まさか時を戻った記憶があるのですか?」
私の疑問にシェイラ嬢は深く頷いた。
「シェイラ嬢⋯⋯王宮の庭園でアーネストと熱烈に抱き合ってましたよね。シェイラ嬢がアーネストを請け負うという選択肢もあるのではないのですか?」
「ご覧になっていたのなら分かるでしょ。私は、彼にプライドを捨てて迫りましたが振られました。でも、彼が辛そうで放って置けなくて⋯⋯そんなに辛いなら一緒に死んであげると提案したんです⋯⋯」
ポロポロと涙を流しながらシェイラ嬢から語られたあの日の真実に私は絶望した。
古より結ばれない2人が選びがちな最も愚かな選択⋯⋯『心中』
どうやら、シェイラ嬢とアーネストは極度のロマンチストで恋が叶わないと『心中』を考えてしまうようだ。
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