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14.では、今日から一緒にお風呂に入らないか?
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グロスター伯爵邸に戻り、馬車を降りると私を待っていただろうアーネストがエスコートしてくれた。
美しく愛妻家で欠点というものが見当たらないような彼。
彼を夫にできた事に満足していたのに、1年後の結婚記念日に殺された過去。
絵画のように美しい彼が愛おしくてたまらないという視線を私に向けてくる。
2回目は確かに彼を追い詰め過ぎた自覚はあるが、1回目はどうして彼に殺されたのか今でも理解できない。
私はちゃんと彼を好きだった。
「ソフィアが何を好きかまだ分からないから、今日のディナーは様々なものを用意したよ。今日も沢山ソフィアの話が聞きたいな。また君の笑顔を沢山見たい」
私に微笑みかけるアーネストは相変わらず見惚れる程に美しい。
「私は出されたものは何でも食べますよ。好き嫌いをするなんて贅沢な感情は持ち合わせていません」
私の前世の子供時代は貧し過ぎて、いつもお腹が空いていた。
もう、死んだ方が楽に思えるような空腹な時でさえ、必死に生きたいと思っていた。いつか成功して思いっきり食べてやろうと思いながら必死に幼少期から勉強した。「生きたい」という私のささやかな願いを、目の前の男は平気で潰してくる。私は一瞬底の見えない暗闇に落とされたように、気持ちが暗くなった。
「ソフィア、君の事をもっと知りたい。俺に見せてくれてない君が沢山いそうだ」
いつの間にかアーネストにきつく抱きしめられていて、体がビクついてしまった。
神様がいるのなら、彼に2度殺された記憶を消して欲しい。
なんとなく彼は自分の愛の重さに私がついて来ていない事に勝手に絶望して『心中』を選んだのではないかと予想している。
私だってちゃんと彼を好きだったのに、気持ちが足りないから強制的にゲームオーバーにされてしまった。
確かに私の『好き』は彼のような命を懸けたような気持ちではなかった。
「アーネスト様、約束してください。私を殺したりしないと⋯⋯」
「ソフィアを殺す? そのような事する訳ないじゃないか。君が死ぬ時は俺も死ぬ時だ。死が2人を分つまでの永遠の愛を誓ったじゃないか」
私の目をじっと見つめてきて言い聞かせるように語りかけてくる彼の言葉に静かに頷くしかなかった。
ディナーの席につくと、アーネストが後ろ手に持った花がちらりと見える。
(オレンジ色? いや、黄色の花⋯⋯キンセンカじゃないよね)
自分の心臓の鼓動が聞こえそうな程に大きくなる。
席に座った私の後ろにアーネストが回って、柔らかくバックハグをしながら目の前に黄色の花の花束を見せてきた。
「ガーベラ?」
「当たり。花言葉は『究極の愛』だ」
私の顔を覗き込むように優しい瞳でアーネストが告げてくる。
「⋯⋯花言葉?」
「すまない。実はメイドが君のベッドの下に花に関する本があるのを見つけたと言っていて⋯⋯」
「それは、アーネスト様が花言葉で気持ちを伝えてくるから知りたくて用意したものです」
「嬉しいよ。ソフィアが俺のことを知ろうとしてくれて」
「シェイラ嬢だってやっていた事ですわ」
なんだか元カノに嫉妬しているような事を言ってしまって、私は気まずくなり俯いた。
不意に顎をあげられ、彼にキスをされる。
正直、避ける暇も無い程に素早い行動だった。
キスで子供ができる訳ではないし、キスくらいはしても大丈夫だと自分を納得させる。
「信じてもらえないかもしれないけれど、俺の心にいた女性はずっとソフィアだけだった」
唇が離れて伝えられた言葉に私はただ頷くしかない。
食事を終えて、私はまた1つ約束事を提案した。
「アーネスト、明日からの食事のメニューは全て私に一任してくれますか? 朝食はワンプレートで提供してもらうつもりですが宜しいでしょうか?」
「君の好きなように⋯⋯俺からも提案して良い?」
「もちろんですわ。夫婦の約束事は双方が提案し、双方の合意によって成立します。私の提案を通してくれたのだから、私もあなたの意見は聞いていきたいと考えていますのよ」
私は赤ワインの代わりに用意して貰ったお水を一口含んだ。
私が赤ワインにトラウマを持ったことなんて、彼は知りもしないだろう。
「では、今日から一緒にお風呂に入らないか? もっと、ソフィアに近づきたいんだ」
私は彼の提案に思わず咽せてしまった。
「そ、その提案は却下です。明るいところでそんな⋯⋯何を考えているのですか?」
「ふふっ、冗談だ。ただ、何もしないから今日から同じベッドで並んで眠らないか? 朝起きた時に君が隣にいて欲しい」
「分かりました。その約束事は採用します」
私はニヤリと笑ったアーネストを見て自分の失態に気がついた。
私は彼の交渉術にうまくハマってしまった。
一緒にお風呂に比べれば、並んで眠る事など軽いと考えてしまったのだ。
(アーネストは基本紳士だから無理矢理手を出して来たりはしないだろうけれど⋯⋯)
避妊薬を使えば喧嘩になるし、子ができて殺されたら時を戻っても死ぬ程後悔する。
私の悩みを他所にアーネストは終始上機嫌だった。
美しく愛妻家で欠点というものが見当たらないような彼。
彼を夫にできた事に満足していたのに、1年後の結婚記念日に殺された過去。
絵画のように美しい彼が愛おしくてたまらないという視線を私に向けてくる。
2回目は確かに彼を追い詰め過ぎた自覚はあるが、1回目はどうして彼に殺されたのか今でも理解できない。
私はちゃんと彼を好きだった。
「ソフィアが何を好きかまだ分からないから、今日のディナーは様々なものを用意したよ。今日も沢山ソフィアの話が聞きたいな。また君の笑顔を沢山見たい」
私に微笑みかけるアーネストは相変わらず見惚れる程に美しい。
「私は出されたものは何でも食べますよ。好き嫌いをするなんて贅沢な感情は持ち合わせていません」
私の前世の子供時代は貧し過ぎて、いつもお腹が空いていた。
もう、死んだ方が楽に思えるような空腹な時でさえ、必死に生きたいと思っていた。いつか成功して思いっきり食べてやろうと思いながら必死に幼少期から勉強した。「生きたい」という私のささやかな願いを、目の前の男は平気で潰してくる。私は一瞬底の見えない暗闇に落とされたように、気持ちが暗くなった。
「ソフィア、君の事をもっと知りたい。俺に見せてくれてない君が沢山いそうだ」
いつの間にかアーネストにきつく抱きしめられていて、体がビクついてしまった。
神様がいるのなら、彼に2度殺された記憶を消して欲しい。
なんとなく彼は自分の愛の重さに私がついて来ていない事に勝手に絶望して『心中』を選んだのではないかと予想している。
私だってちゃんと彼を好きだったのに、気持ちが足りないから強制的にゲームオーバーにされてしまった。
確かに私の『好き』は彼のような命を懸けたような気持ちではなかった。
「アーネスト様、約束してください。私を殺したりしないと⋯⋯」
「ソフィアを殺す? そのような事する訳ないじゃないか。君が死ぬ時は俺も死ぬ時だ。死が2人を分つまでの永遠の愛を誓ったじゃないか」
私の目をじっと見つめてきて言い聞かせるように語りかけてくる彼の言葉に静かに頷くしかなかった。
ディナーの席につくと、アーネストが後ろ手に持った花がちらりと見える。
(オレンジ色? いや、黄色の花⋯⋯キンセンカじゃないよね)
自分の心臓の鼓動が聞こえそうな程に大きくなる。
席に座った私の後ろにアーネストが回って、柔らかくバックハグをしながら目の前に黄色の花の花束を見せてきた。
「ガーベラ?」
「当たり。花言葉は『究極の愛』だ」
私の顔を覗き込むように優しい瞳でアーネストが告げてくる。
「⋯⋯花言葉?」
「すまない。実はメイドが君のベッドの下に花に関する本があるのを見つけたと言っていて⋯⋯」
「それは、アーネスト様が花言葉で気持ちを伝えてくるから知りたくて用意したものです」
「嬉しいよ。ソフィアが俺のことを知ろうとしてくれて」
「シェイラ嬢だってやっていた事ですわ」
なんだか元カノに嫉妬しているような事を言ってしまって、私は気まずくなり俯いた。
不意に顎をあげられ、彼にキスをされる。
正直、避ける暇も無い程に素早い行動だった。
キスで子供ができる訳ではないし、キスくらいはしても大丈夫だと自分を納得させる。
「信じてもらえないかもしれないけれど、俺の心にいた女性はずっとソフィアだけだった」
唇が離れて伝えられた言葉に私はただ頷くしかない。
食事を終えて、私はまた1つ約束事を提案した。
「アーネスト、明日からの食事のメニューは全て私に一任してくれますか? 朝食はワンプレートで提供してもらうつもりですが宜しいでしょうか?」
「君の好きなように⋯⋯俺からも提案して良い?」
「もちろんですわ。夫婦の約束事は双方が提案し、双方の合意によって成立します。私の提案を通してくれたのだから、私もあなたの意見は聞いていきたいと考えていますのよ」
私は赤ワインの代わりに用意して貰ったお水を一口含んだ。
私が赤ワインにトラウマを持ったことなんて、彼は知りもしないだろう。
「では、今日から一緒にお風呂に入らないか? もっと、ソフィアに近づきたいんだ」
私は彼の提案に思わず咽せてしまった。
「そ、その提案は却下です。明るいところでそんな⋯⋯何を考えているのですか?」
「ふふっ、冗談だ。ただ、何もしないから今日から同じベッドで並んで眠らないか? 朝起きた時に君が隣にいて欲しい」
「分かりました。その約束事は採用します」
私はニヤリと笑ったアーネストを見て自分の失態に気がついた。
私は彼の交渉術にうまくハマってしまった。
一緒にお風呂に比べれば、並んで眠る事など軽いと考えてしまったのだ。
(アーネストは基本紳士だから無理矢理手を出して来たりはしないだろうけれど⋯⋯)
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