愛より、お金!〜溺愛してくる夫が重いので、離婚させてださい〜

専業プウタ

文字の大きさ
19 / 20

19.そんな変なところに口付けをしないでください

しおりを挟む
「ウェズリー・マゼンダ国王陛下、ご子息が私の妻を所望した件について意義を申し立てさせてください」

 ソフィアの隣にいたアーネストは突然、険しい顔でブラッドリー王子の隣にいた現国王に詰め寄った。
 白髪にサファイアの瞳を持った現在58歳の好色王ウェズリー・マゼンダだ。
 ソフィアは突然の出来事に真っ青になる。
 彼女は自分がしっかりとブラッドリー王子を監督しなかった事を後悔していた。

「ブラッドリー⋯⋯お前は、まさかとは思うがソフィア・グロスター伯爵夫人をゆくゆくは妻にと考えているのか?」
 ウェズリー国王の軽やかな口調から、明らかに場を和ませようと冗談を言ったのは明白だった。
 しかし、ウェズリー国王自身が臣下の妻を横取りし自分の女にしてしまった過去があるので全く笑えない。
 ソフィアは直感的に嫌な予感がして俯いて震えていた。

「はい。父上の仰る通り、僕はゆくゆくはソフィア・グロスター伯爵夫人と結婚しようと考えています。夫人もグロスター伯爵とは離婚するつもりだと申しておりました」
 思ってもみないブラッドリー王子の返しに、ソフィアはまた自分がまた死ぬ運命に近づいているのではないかと泣きそうになった。

 思わず自分を2度も殺したアーネストの服の裾を掴み、彼を縋るような目つきで見てしまう。普段強気のソフィアが決して見せない弱々しい男の庇護欲を擽る視線。
 その視線が命を懸ける程に燃えるような恋を7年もソフィアにし続けるアーネストの心に余計な火をつけた。

 アーネストは徐に自分のグローブを外すと、それをブラッドリー王子に向けて投げ付ける。これは決闘の合図だ。それまで思わぬ余興に騒いでいた周囲も彼の衝撃的な行動に静まり返った。

「王族である僕に、今、グロスター伯爵は決闘を申し込んだのか? 受けてたとうじゃないか」
 まだ精神的に幼く、売られた喧嘩を買うことしか知らないブラッドリー王子は乗り気だ。
 彼は自分が王族だから花を持たせて貰えるとでも思っているのだろう。
 しかし、そんな彼の甘さもアーネストの恋に命を懸ける本気もソフィアは理解していた。

 アーネストは決闘をするならば、殺す気でブラッドリー王子と戦うだろう。
 実力差を考えると秒でアーネストの勝利が決まる。アーネストはソフィアへの気持ちを示すためなら、王族相手にも手加減はしない。これから起きるだろう事を、客観的に状況を見られるソフィアは予測できていた。

 ソフィアはこの場をおさめる手段を頭をフル回転させて考えた。
 彼女は自分自身に「歳下の男たちを手玉にとり食い散らかそうとしているようなイメージ」がついてしまうのを恐れた。彼女のマイナスイメージは彼女の事業に悪い影響を及ぼすので避けなければならない。
 頭の中で急速に損得勘定をした結果、ソフィアはアーネストに擦り寄った。

「アーネスト様、私はただ貴方と住むこのマゼンダ王国をより良くしたいだけですわ。私の心は貴方だけのものです。私が貴方と離婚したいですって? そのような事を思う訳がありません。2年目の結婚記念日にペリドットの指輪を私の指に嵌めてくださいな」

 短時間で捻り出した言葉と共にソフィアは初めて自分からアーネストに抱きついた。
 わざと彼女が周りに聞こえるように言った台詞に、なぜか会場が割れんばかりの大きな拍手が巻き起こる。
 アーネストは顔を珍しく真っ赤にすると、ソフィアを横抱きにして会場を後にした。
 それはまるで、ロマンス小説の語り継がれるような名場面だとその場にいた令嬢たちは感動した。

♢♢♢

 必死に場をおさめたけれど、馬車の中で私とアーネストは今にも熱烈なラブシーンを始めてしまいそうな雰囲気だ。

 目の前にいるアーネストが私を見つめる瞳が熱っぽくて目を逸らせそうもない。彼の瞳には私しか映っていなくて不思議な気分になる。

「ソフィア、君が人は持っているものが違うから嫉妬などしても意味ないと言ったのに俺はブラッドリー王子に嫉妬してしまった。実は君が吸う空気にさえ毎秒嫉妬しているんだ。俺が君を見ているように君にも俺だけを見て欲しい」

 私はアーネストの言葉が場に酔い過ぎて爆笑してしまいそうなものだと思った。

 それなのに目の前にいる彼が美し過ぎて、彼だけは空気に嫉妬するバカでも許される気になってしまう。

「私はアーネスト様だけを見てますよ。今、馬車の中には私と貴方しかいないではないですか」
 私の言葉にアーネストは私の手首を掴み、手のひらの下辺りに口付けをして来た。

「そんな変なところに口付けをしないでください」
「ふふっ、ソフィア⋯⋯俺は君の体中に口づけしたいのを必死にいつも耐えてるんだ。そろそろ、先程の賭けの褒賞を貰っても良いかな?」

 アーネストが口の端を上げながらニヤリと笑う。そのエメラルドの瞳は溶けそうな程熱く私を見つめていた。
 馬車の窓から差し込む光にアーネストの銀髪が照らされキラキラと光っている。私はその美しさに思わず手を伸ばしてしまった。
 それを合図にアーネストが私をゆっくりと馬車のふかふかのソファーに押し倒してきた。
 私は策略を散々巡らして避けていたのに、その夜アーネストに純潔を捧げてしまった。
 それは記憶にあるよりもずっと良くて、私の頭を混乱させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

処理中です...