蛇の抜け殻

松井すき焼き

文字の大きさ
1 / 6

地球が滅んだあの日、多くの人間は安楽死を選び、一部の金持ちの息子と親は人類の遺伝子を残す為に、精子バンクと共に宇宙船で地球を飛び立った。
そして地球人は、新たな星にたどり着き、地球とよく似たその星で新たな営みをすることとなった。人類は新しい母星となったその星の名前を、「カエル」と名付けた。

母星カエルでは、まだ少ししか空気がないため、外に出ることができなかった。人間たちは透明な幕に張られた中で、生活をしていた。空気が生成している機械が、いつも音をたてていて、非常にうるさかった。

市悠馬もその窮屈な飛行船の中で暮らしていた。悠馬は今年十五になる。十五になる少年少女たちは、一つの白い建物に集められ、学業や飛行船、地球の歴史などを習っていた。

白い建物の学び舎。その中で、一等一人の目立つ少年がいた。
彼の名前は、エレノ.蓮。
彼の髪は銀色で、目は黒色だった。世界中どこにもない光り輝く髪の毛。彼はその髪の毛をなびかせて、女の注目を浴びていた。

悠馬は女にもてそうな銀の髪をもつ蓮のことを、羨ましく思っていた。
蓮の髪は不思議な光沢をもっていて、大人たちは蓮の髪を突然変異ではないかと、皆恐れた。
皆地球から離れた新しい未知の環境で、いらだちと変化を恐れていた。
蓮を間引こうという奴まで出てきて大変だった。
何人かの研究員に蓮は隔離という形で、命を守られた。蓮は隔離されている状況だったが、何人かの研究員の助力で、蓮は同い年が集まる学び舎に登校することができた。

皆遠巻きに蓮を見ている中、悠馬は気の毒にと、蓮の肩を叩いた。叩いた悠馬の手は、見事連に振り払われていた。

「触るな、汚らわしい」

そう蓮は言った。

それを見ていた学び舎の他の連中はざわめく。
「何様?」
「気色悪い髪の色しやがって、人間かよ?」
などなど男から声が上がる中、蓮は顔がまぁよかったためか、女からは何故か歓声があがった。
蓮はこちらには顔を一切向けず、ただまっすぐ視線を宙に向けるだけだった。
何人かが舌打ちをしながら、各々の席に戻って行く。

それをみながら悠馬は、失笑した。人のみかけごときで騒ぎやがって。
人なんて一皮むけばみな同じ、自分本位でエゴイストなだけだ。人の上っ面だけで判断しているやつらはどれだけ幸せなんだ。悠馬はまったく人間という存在を信じていなかった。
悠馬は一人だ。これからも一人だろう。父も母も悠馬に暴力という爪痕しか残していなかった。自分の遺伝子を残すという名目だけで、この宇宙船に乗せたのだ。
悠馬の母親と父親の姿は今どこにもない。
反抗的な悠馬を見捨てて別の区画の宇宙船に行ったのだと、悠馬は大人たちに聞いている。ぼんやり悠馬は、授業を聞きながら、もう一度蓮の方を見て、鼻で笑った。


授業が終わると、悠馬はいつもの場所に向かった。

そこは樹が生い茂る聖なる場所で、死んだ人間を肥料として木々をはぐくむ墓地になっている。澄んだ空気と、暖かな日差しのその場所。悠馬は寝転んで、木々の命に思いをはせるのが大好きだった。
人を愛せない悠馬にはきっと子供は残せない。義務としょうして、人口を減らさないために精子を提供しているが、精子が買われたこと以外は、悠馬には何も知らされない決まりになっている。

悠馬は考える。自分が死んだら木々をはぐくむことができる。そして静かに眠ることができるだろう。そうすれば少しは満たされた気持ちになれた。悠馬は仰向けになって目を閉じていると、草を踏む音が間近にして目を開けると、そこには今日話題になっていた蓮の姿があった。

「何をしているんだ?」

蓮の問いかけに、非常に面倒だと悠馬は不機嫌に告げた。

「別に。お前こそ、ここで何しているんだよ?」

悠馬だけの秘密基地だと思っていたのに、悠馬は非常に残念思う。

「別に?」

「真似すんなよ!」

「俺も時々ここに来るんだ。生態系を勉強しに」

静かな蓮の声。蓮は非常に真っ直ぐ悠馬を見る。悠馬は気まずくなって、視線を逸らした。

「つまんない優等生が」

「ここにくるといつも人間の愚かさを想う。死体まで人間に利用されて」

人間がエゴイストであることは、悠馬も思っている。だが、この場所は静かな悠馬の大好きな場所だ。蓮の発言は許せなかった。

「ここはたくさんの亡くなったものが静かに眠っている場所でもあるんだ!くだらないこと言うな!!」

「すまない」

あっさり謝罪して蓮は、悠馬の隣に座った。

「でもこの場所は心地いいとは思っている」

悠馬は蓮の横顔を見た。こいつも色々苦い思いをしているのだなと、悠馬はなんだか蓮に同情してしまった。

「別にお前が言っていることはあっているんだろうよ。俺も人間が嫌いだ」

「俺も?」

「........お前もだろう」

そういって悠馬は俯いて、足元の草を見た。

「ここで新種の虫が発見されたことは知っているか?」

「しらね!?」
新種の虫の発見の情報に悠(ゆう)馬(ま)は、目を輝かせた。
蓮は不自然に、悠馬から目をそらした。なにかまた悠馬は無神経なことをいって、蓮に不快に思われたと、悠馬は内心へこんだ。
悠馬は昔から友人を作ることはできなかった。いつも乱暴な態度で、学び舎のクラスメイト達から煙たがれているのを、悠馬自身分かっていた。悠馬は愛されたことがあまりないから、人への愛し方がわからなかった。また嫌われたのかと悠馬は舌打ちして、蓮から顔をそらした。
ぼんやり静かな時間を風の音を聞きながら悠馬は過ごしていると、蓮が悠馬の目の前に来て、なにか虹色に輝く虫を悠馬に、差し出してきた。

「なんだこれ?」

不思議そうに悠馬は、蓮の顔を見た。

「新種の虫だ」

「へぇー。すごいな」

悠馬は虫が好きだったので、内心では飛び跳ね上がるほど興奮していた。急に蓮はその虫を、悠馬の鼻の上に置いてきた。

「うわ!?なにすんだよ!!」

驚く悠馬に、やはり真顔で蓮は言った。

「近くで見れた方がいいと思った」

「........そうか」

鼻の上の虫を悠馬は手に取ると、じっくり眺めた。
そんなふうにしてあまりしゃべることもなく、悠馬と蓮は聖なる場所で時を過ごした。
感想 1

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鳥籠の夢

hina
BL
広大な帝国の属国になった小国の第七王子は帝国の若き皇帝に輿入れすることになる。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

αに軟禁されました

雪兎
BL
支配的なαに閉じ込められたΩ。だがそれは、愛のはじまりだった――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。