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その八
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忍にナイフを突きつけてる男は、忍の背後に行き、何を思ったのか強盗らしき男は、忍の首筋をなんと舐めた。
「ひ!!」
あまりのことに忍は全身に恐怖で鳥肌が立つ。このまま殺されるのではと、その場に凍り付くしかなかった忍の耳に、救世主の男の声が聞こえてきた。
「何をしている!」
誠実そうな男の声。
忍の目の前には、あの忍のことを痴漢した男が立っていた。一瞬見間違えなのではないかと忍は己を疑ったが、電車でみたあの痴漢男はたいそう目立つイケメンだったので、覚えている。
忍の背後にいた強盗男は舌打ちをすると、走って逃げていった。
「大丈夫か?」
痴漢男が忍の腕をつかむ。なんだかそれが嫌だったが、忍は仕方なく、「あ、ありがとうございます」という。
「僕の名前は四宮綜一朗という。君は?」
「え、あ、あの、失礼ですが、あなたあの、痴漢ですよね」
「ああ。そのことで話がある。少し僕の話を聞いてくれないか?」
そういいつつ痴漢男の綜一朗は、有無を言わさず忍の腕をつかんで、近くの公園に向かって歩いていた。忍の頭に義嗣の顔が思うかぶ。義嗣さん助けて、と、忍は脳裏で叫んだ。
綜一朗はベンチに座ると、忍もその隣に座るように促す。忍はなんとなく警戒して、立ち尽くす。
「なにもしない。僕には恋人がいる。君に痴漢をしてしまって悪かった」
恐る恐る忍は、綜一朗の隣に座る。
「僕は生まれつき心臓が悪いんだ。激しい運動も興奮するようなセックスも医者から止められている。だからセックスはできないんだ。特に最愛の恋人とのセックスはできないんだ。
僕の恋人はもしかして自分に魅力を感じないから、僕がセックスしないのではと不安になってしまって。僕は恋人の君と触れ合うのは命取りになると言っているんだが、けんかになってしまった。自分以外触れても心臓が高鳴らないのなら照明してくれって、恋人に言われてつい君に痴漢を働いたんだ。まぁ、警察に逮捕されるのを覚悟してたんだけど。いつ死ぬかもわからない綱渡りの生活、少し自暴自棄になってたんだ。すまなかったね」
「い、いえ。でも痴漢ってその、一度だけでいいのでは」
綜一朗は何度も忍に痴漢を働いている。なんだか違和感を感じる忍なのだった。
「それで、ここからが本題なんだけれど」
「はい?」
「痴漢させてほしい」
「え!?」
「君が望むなら僕は何でもする。金も払うよ。僕の恋人はその、痴漢される君と痴漢する僕に興奮したと言っていてね」
「さすがにそれは無理です」
「頼む!この通り!!」
綜一朗は忍に向かって深く頭を下げた。
「無理ですってば」
「少しだけでいいんだ」
綜一朗は忍の手を握って迫ってくる。忍はその手を振り払って逃げたいが、綜一朗の手の力は半端なく強い。
「嫌です!」
「頼む」
もういい加減早く家に帰りたいので、忍は嫌々ながら言う。
「一日だけですよ!!それ以外警察にいいますから」
「ありがとう」
綜一朗はもう一度深々と頭を下げた。
忍はげっそりしながら重い足取りで、家への道へと突き進む。今日はなんかろくでもない一日だと思う。早く家に帰りたい。
花屋で働きながらやっと借りられたアパートの一室。その一室の忍の部屋の前に、血だらけの義嗣が座っていた。
「よ、義嗣さん!?」
「すまねぇ、他に行く場所がなくてな。少しの間だけかくまってほしい」
「わ、わかりました。とにかく部屋に入ってください。手当します」
義嗣の体を支えながら、忍は部屋の中へと歩き始めた。
「ひ!!」
あまりのことに忍は全身に恐怖で鳥肌が立つ。このまま殺されるのではと、その場に凍り付くしかなかった忍の耳に、救世主の男の声が聞こえてきた。
「何をしている!」
誠実そうな男の声。
忍の目の前には、あの忍のことを痴漢した男が立っていた。一瞬見間違えなのではないかと忍は己を疑ったが、電車でみたあの痴漢男はたいそう目立つイケメンだったので、覚えている。
忍の背後にいた強盗男は舌打ちをすると、走って逃げていった。
「大丈夫か?」
痴漢男が忍の腕をつかむ。なんだかそれが嫌だったが、忍は仕方なく、「あ、ありがとうございます」という。
「僕の名前は四宮綜一朗という。君は?」
「え、あ、あの、失礼ですが、あなたあの、痴漢ですよね」
「ああ。そのことで話がある。少し僕の話を聞いてくれないか?」
そういいつつ痴漢男の綜一朗は、有無を言わさず忍の腕をつかんで、近くの公園に向かって歩いていた。忍の頭に義嗣の顔が思うかぶ。義嗣さん助けて、と、忍は脳裏で叫んだ。
綜一朗はベンチに座ると、忍もその隣に座るように促す。忍はなんとなく警戒して、立ち尽くす。
「なにもしない。僕には恋人がいる。君に痴漢をしてしまって悪かった」
恐る恐る忍は、綜一朗の隣に座る。
「僕は生まれつき心臓が悪いんだ。激しい運動も興奮するようなセックスも医者から止められている。だからセックスはできないんだ。特に最愛の恋人とのセックスはできないんだ。
僕の恋人はもしかして自分に魅力を感じないから、僕がセックスしないのではと不安になってしまって。僕は恋人の君と触れ合うのは命取りになると言っているんだが、けんかになってしまった。自分以外触れても心臓が高鳴らないのなら照明してくれって、恋人に言われてつい君に痴漢を働いたんだ。まぁ、警察に逮捕されるのを覚悟してたんだけど。いつ死ぬかもわからない綱渡りの生活、少し自暴自棄になってたんだ。すまなかったね」
「い、いえ。でも痴漢ってその、一度だけでいいのでは」
綜一朗は何度も忍に痴漢を働いている。なんだか違和感を感じる忍なのだった。
「それで、ここからが本題なんだけれど」
「はい?」
「痴漢させてほしい」
「え!?」
「君が望むなら僕は何でもする。金も払うよ。僕の恋人はその、痴漢される君と痴漢する僕に興奮したと言っていてね」
「さすがにそれは無理です」
「頼む!この通り!!」
綜一朗は忍に向かって深く頭を下げた。
「無理ですってば」
「少しだけでいいんだ」
綜一朗は忍の手を握って迫ってくる。忍はその手を振り払って逃げたいが、綜一朗の手の力は半端なく強い。
「嫌です!」
「頼む」
もういい加減早く家に帰りたいので、忍は嫌々ながら言う。
「一日だけですよ!!それ以外警察にいいますから」
「ありがとう」
綜一朗はもう一度深々と頭を下げた。
忍はげっそりしながら重い足取りで、家への道へと突き進む。今日はなんかろくでもない一日だと思う。早く家に帰りたい。
花屋で働きながらやっと借りられたアパートの一室。その一室の忍の部屋の前に、血だらけの義嗣が座っていた。
「よ、義嗣さん!?」
「すまねぇ、他に行く場所がなくてな。少しの間だけかくまってほしい」
「わ、わかりました。とにかく部屋に入ってください。手当します」
義嗣の体を支えながら、忍は部屋の中へと歩き始めた。
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