記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第17話 急変

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その日アルはたくさんの食料を、作り置きして教会に行く予定だ。
調理場で忙しそうにしているアルの足に抱き着くライの頭をなで、そんなライを引き離そうとするソルと、喧嘩になる子供二人を、野菜を切りながらなだめる。
シルカのことはソニアが見てくれている。調理場は火があるから危険だからね。
最終的にライはソルの足を蹴り飛ばし、去っていく。そのあとを追いかけてソルが走って行く。
げっそり。
暴力はいけないっていっても、ライとソルは時々取っ組み合いになっている。
最初こそライは遠慮がちでただアルのそばにやってきてはぼんやりしていただけだったのだが、アルに近づこうとするライの行動をソルはことごとく邪魔をしようとする。ソルの口癖は「俺がこの家のボスだ」だ。兄ちゃんが一番だけどと付け加えていたが。

おとなしく何の抵抗もしなくひかえめだったライだったが、ある時ライはソルに切れて、首の噛みあいに発展した。慌ててアルは止めようとしたのだが、ソニアがそれを止めた。
「オス同士、それは最初に必要なことだ」とかなんとかわけわからないことを言っていた。
シルカの方はといえば、なにやっても抵抗しないでぼんやりしているソルに、たいそう気をよくして好き勝手に遊んでいる。
仲良くなったのか?と疑問を覚えつつも、まぁ、いっか。と思ったアルなのでした。

遠くから何か割れる音と、「お前らいい加減にしろ!」というソニアの声が聞こえてくる。きっとソルとライがなにかやらかしたなとアルは思いながら、スープの味見をした。
今日は鳥みたいな肉でだしをとったスープに、調味料といい匂いがする葉っぱを入れて、伸ばした麺を入れて完成だ。
今日は時間があったので、麺料理に挑戦してみた。
ソニアは今日も山に行くので、弁当を一応作る。山で食材をとって適当に食べるとソニアが言っていたので、雑穀を多めのココナッツ油で炒め、蜂蜜を混ぜて丸く形作り、表面にココナッツの粉を振りかけ固めたものを、袋に詰めていく。簡単に山で食べれる携帯食カレーとかできるといいなと、思う。
やはりアルが作った雑穀蜂蜜ボールを一応味見してみる。味は微妙だった。うん。いや微妙なものを人に出すなと思うのだが、料理の研究があまりできていない。前回街にいって店で食べて味の研究しようとしていなかったが、できなかったし、また街に行かなければと、思っている。

アルの作った朝ご飯はおかわりの嵐ですぐさまなくなった。よ、よかった。

「行ってくる」
ソニアを玄関まで、アルと抱っこしたシルカとで見送る。ソルはやはり隠れて見送っている。なんでだろうか?
「いってらっしゃい。これ、小腹空いたら食べてください。甘いものなんで、まずかったらすいません」
「いや、助かる」
アルが差し出したものを、ソニアは受け取ると、出ていった。

食後アルは子供たちに記憶にある話を聞かせていると、「すいません!」と男の声が聞こえてきた。
アルは仮面をつけて玄関に向かう。
「はい?どなたですか?」
そこにはにこにこ笑っている胡散臭そうな黒髪の男がいた。黒髪久しぶりに見たなと、アルは嬉しいような懐かしい気分になる。
「少しお話を聞かせてほしいのですが」
「話?」
話って何だろうと、アルが不思議に思っていると、男は笑みを消していった。
「子供のお話を聞かせてほしいのですが」
「子供?」
その瞬間アルは背後から伸びた手に口元を押さえられ、首筋に細い針が突き刺さった。アルの意識はなくなり、地面に倒れこもうとしたアルの体を、前にいた男は受け止めた。
背後の室内からは悲鳴が聞こえてくる。
しばらくして部屋の中からは背の高い筋肉質の男がでてきた。
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