記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第40話 病室でのこと  

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第40話 病室でのこと

ハウナに留守を頼み、アルはソルとシルカとライを連れて病院に向かった。

病院についたころ、ソニアは奇跡的に助かったと、犬獣人の先生に告げられて、アルは腰を抜かした。



目を覚ましたソニアにソルとシルカは抱き着いて、泣いていた。

「心配かけてすまない」

そう申し訳そうにソニアはしていた。



そして夜遅かったので、幼いソルとシルカとライは眠ってしまった。

家をなくしてしまったとしても、ソニアさえ無事ならいいと、不思議となんだか家がなくなることがどうでもよくなっていた。家がないことは相変わらず困るが。



「アル、すまない」

ぽつりとソニアはつぶやく。

切なそうなソニアの横顔に、なんだかアルは悲しくなる。

「謝らないでくださいよ」

「俺はお前に噓をついた」

「嘘?」

「アル、お前が神のみ使いだといったとき、俺は嘘を言った。

神のみ使いはひどい目に合うと、俺はいった。確かにそういうこともあるが、神のみ使いは国で保護され、丁重にもてなされることもある。……俺はお前にどこにも行ってほしくなかったからだ」

「ソニアさん」

「お前をずっと家に押し込めて、閉じ込められるわけでもないのに。すまない」

しゅんっと、耳と尻尾を下げるソニアさん。

 いやそんなに耳や尻尾をさげなくてもいいのにと、思う。ソニアさんは可愛く見える。だからアルは手を伸ばして、ソニアの手を握った。



「いつもソニアさんが言っているように、私はいたくてこの家にいるんです。今は怪我を治すことだけを考えてください。家は私が守るんで」

「すまない」

「謝らないでください」

そう言ってアルは微笑んだ。

照れ臭そうにソニアの顔は赤らんでいた。まるでそれはすこし幼い青年の顔に見えた。



何故だろうと、アルは不思議に思う。

それは長らく一匹狼で幼いころから過酷な環境で生きてきたソニアの、心が緩んだ様子だった。
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