記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

幕間 アルのブラシ屋 その３ 下のネタ部分あり。（注意）

アルがブラシ屋で毛の汚れを浮きだたせるのと、血行をよくさせようと、油をぬった黒猫獣人のサンの全身をブラシしていると、仰向けになったサンの下半身が反応していることに気づく。

サン本人も少し驚いたように気まずそうに下半身から目をはなして、笑う。
「たまにそういう気分でもないのに、条件反射とかべつの心地よさで、下半身たっちまうことがあるんだよ」
すまんなと、黒猫獣人のサンは笑う。

「そうなんですか」
アルも男のはしくれだ。べつにそういう気分でもないのに、別の心地よさで下半身が反応してしまうことを聞いたことがあるような、ないような。

「はは、たっちまった。アルさん、しごいてくれるかい？なんちって」
げらげら笑いながらサンがいう。
「………」
アルは死んだ目を、サンに向ける。

それ以降アルは死んだ目でサンのことを見るようになった。サンはその視線に耐え切れず、アルに土下座で謝ってくれた。
この世界にも土下座文化というものはあるらしい。

その出来事が噂になって、伝言ゲームみたいにはしり、途中で間違った噂に変わってしまい、アルのマッサージで下半身が反応したものは、出禁だということがつたわった。

ある日アルのブラシ屋に、虎獣人の大柄の男の人が現れた。（頭の上には獣の耳はついているが）やはり人間の姿をしているが、どこか虎の顔に似ている。

黒猫獣人だけではなく、なぜか最近虎獣人の人もブラシ屋にくるな？と、アルは内心首をかしげる。

その日もアルは丁寧に虎獣人の男性の全身をブラッシングする。すると、その獣人は「う！くぅうっ。ほあぁああ」とか不思議なうめき声をあげる。
自然と虎獣人の下半身にアルは目が行く。
そこは反応してしまっていた。

アルの視線に気づいて虎獣人さんはすぐさま起き上がり、下半身を隠す。
「あ、アルさん。すみません、わざとじゃないんです！俺ここのマッサージが本当に好きで、俺」
顔を覆って泣き出す虎獣人に、アルは首をかしげる。
「時々反応してしまうのは仕方がないですよ。出禁にはしないですよ」
「アルさん！！」
叫んで虎獣人がアルに抱き着いてくる。
すると、ごりと、下半身がアルの腹にあたる。虎獣人は本能とつい下半身を、アルに押し付けてしまい、そのまま低いうめき声とともに欲望を開放してしまった。
「あ」
アルは静かな視線を向けると、虎獣人の人は俯いていた。

それから後日、男の匂いをさせているアルのことを、嗅覚の鋭い別の虎獣人がアルを押し倒し、そのまま行為に及ぼうとして、ジルの護符の力によって家の外に吹っ飛ばされて、そのまま本当の出禁になった。（警察沙汰である）
その話が出回り、アルを押し倒すと二度とブラシはしてもらえないということが、今度は正しく伝達されて、アルを二度と押し倒そうとする者はいなくなった。

それ以降下半身を発散させ、きちんとアルのもとにやってくる虎獣人と黒獣人の人々？だった。

しかし仮面をつけたままなのに、なぜあの時押し倒されたのか謎だなと、いまだにアルは首を傾げた出来事である。世の中不思議なこともあるなと、しみじみ豆茶をすする。

それでもたまに下半身が反応してしまった場合、アルにたいして泣きながら土下座してくれる獣人たちに、アルは死んだ目で許した。

やめようかな？ブラシ業
そんなことを思う、今日この頃だった。
たまに。