記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第61話 強制的に捕まえます。

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あとは残るはクワイエットさんのことだ。

「あの、クワイエットさんという女性知りませんか?」
念のため、アルは、サンとスピネルに向かって聞いてみる。

そうすると、サンはにやりと笑う。アルは複雑な心境である。

「もちろん。月見の草の売人を捕まえることができて、俺らには行幸だな。バカな奴らが、俺らのしまを荒そうとしなくなるからな」と、サンはまったく似合わない、ウィンクをアルによこした。そしてまた言う。
「すぐにクワイエットとやらを連れてきてやる。アルちゃんは家で待ってな。俺らはこれからパーティーだぜ」
「馬鹿なこと言ってないで、行くぞ。ボスが待っている。俺らは今日は大忙しだ」
スピネルが、先を歩き出す。
黒猫獣人二人の瞳は暗闇の中、壮絶な光を放って見えた。

アルはげっそりする。
皆がアルに子供を預けて消えてしまう。アルがいるということで、安心してくれているのだろうが、このままではいけない。
厳しくいこうと、背後にいるスノーリーに静かに目を向けた。

その後クワイエットさんは縛られた簀巻きの状態で、アルの元へ戻ってきた。
クワイエットをどう逃がさないか、アルは考える。

シズクは帰ってきたクワイエットに、泣きながら抱き着く。クワイエットも盛大に泣き出した。
「もしまたクワイエットさんが、月見草を買おうとするなら、シズクちゃんはうちの養女にします。もう二度とクワイエットさんには逢わせません」
そういうと、クワイエットは泣きながら、幼女のように「ごめんなさい」と叫んだ。

「お母さんをいじめないで、アル先生」
きっと、シズクはアルの方を睨む。
なんだかアルは泣きそうなたまらない気持ちになって、シズクの頭をなでて、「ごめんね」と謝った。

アルはクワイエットの方を見るという。
「早く、明日の朝にすぐに教会に行きましょうね」
「うん。行く」
「またシズクを置いて、ママどこかへ行っちゃうの?」
不安そうなシズクのことを、「どこにもいかない」そう言って、クワイエットはシズクをもう一度抱きしめていた。


余談だが、スノーリーは家事もできず、子供の面倒を見ないというか、何も子育てのことを知ろうとしないので、アルは疲労で倒れそうになり、ハウナに連絡を取り、一年ではなく一か月で戻ってきてほしいと、泣きついた。
それまで必死でアルはスノーリーの自身の教育、いや、子育てを手伝うことになった。

スノーリーさんは、ソニアさんやジャファールさんを見習ってほしいと、赤ん坊が夜中に長く泣きだしたら、健やかに眠ろうとするスノーリーさんを叩き起こすのだった。
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