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第68話 朝のミーティング
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あれ?そにあさん、どこへいくんですか?
ソニアが雑踏の中、アルの元を離れてどんどん先へといってしまう。
慌ててアルはソニアの後を追いかける。
けれどアルは必死に走るのに、ソニアには追い付かない。
「ソニアさん!待って」
大声でアルは叫んで、目を開ける。
目を開けるとそこはいつもの家の天井で。
どうやら夢だったらしい。目から涙があふれ出している。
アルの隣にはスノーリーが赤ん坊を連れて寝ていた。
朝からげっそりするアルである。
ほぎゃほぎゃ猛烈に泣いている赤ん坊の頭をなでて、起きる。
目からこぼれ落ちている涙をぬぐい、考える。
このままではソニアが毒で死んでしまう。どうしたらいいのだろう?魔法がつかえたら、ソニアを助けることもできるのだろうか?
アルの夢の中に現れた美しい少女はそんなことを言っていたような。そう考えるとアルの頭がずきりと痛む。
だめだ。あの少女のことを考えると、アルは頭が痛くなる。
魔法ってどうやったら使えるようになるのだろう?
「魔法!!」と叫んでみたが、なんか恥ずかしくなって赤面したアル。その様子をにやにや笑いのスノーリーが見ていた。
は、恥ずかしい。
「おはようございます!!」
と声を上げて慌てて朝ご飯づくりに向かうアルだった。
「おはようございます!クワイエットさん」
台所にはにこにこご機嫌そうなクワイエットがいた。
クワイエットはアルに気づくと、にっこり微笑んでやってくる。
「おはよう♡アル先生!!」
「どうしたんですか?ご機嫌ですね、クワイエットさん」
「新しい彼氏ができたの」
「彼氏さんですか?」
「うん。とっても優しい彼でね。シズクも気に入ってくれるといいな♡」
「そうですか」
お子さんにとって再婚は重要な問題だ。アルはシズクの支えになりたいと思う。それにクワイエットの支えにも。
「クワイエットさん」
「何?」
不思議そうにクワイエットの顔がアルを見る。
「クワイエットさんには私がいることを忘れないでください。困ったことがあったら、私はシズクちゃんとクワイエットさんの支えになりたいと思います。自分の中で抱え込まないでください」
「やだ!アル先生ったら、アル先生も恋人みたい!」
げらげらクワイエットは笑う。
「まぁ、私はクワイエットさんのおばあさんみたいな存在みたいな感じですかね?」
冗談めかしてアルがそういうと、クワイエットは俯いてしまう。アルは慌てる。
「すいません。嫌でしたか?」
「ううん。違うの。私の家族いないようなもんだから、なんか嬉しくて!」
そう言ってクワイエットは滲んだ涙をぬぐって笑った。
「そうですか。よかったです。あの、クワイエットさん、先生ではなくて、名前呼びでもいいですよ」
クワイエットは何故かアルのことを、アル先生と呼ぶ。先生呼びは、なんか気恥ずかしい。
「ううん。アル先生は、アル先生だから!アル先生って呼ぶね」
そうよくわからないことをクワイエットは言う。
内心アルは首をかしげる。
「そうだ!クワイエットさん、午前中私ジュラさんの薬屋さんに行く用事があるので、午後から子供会議を開こうと思います」
「こどもかいぎ?」
「はい。お子さんに集まってもらって、こうしてほしいなどお子さんの要望などを聞こうと思いまして。全部お子さんの要望を聞けるわけではないんですが、引っ越しとかお子さんの気持ち置いてけぼりに大人が決めることが多いですし、お子さんの色んな気持ちを聞いて、お子さんの心のケアをしていければと思いまして」
「心のケア?」
「お子さんの心に寄り添った対応ですかね。二週間に一度ほど考えているんですが」
「アル先生」
クワイエットはため息をつく。
「だ、だめですかね?」
「いい考えだと思うけど、要望を聞く前に人数が足りないわ」
げっそりするクワイエットに、アルもげっそりする。
「確かに」
アルは子供預かりに食事作りにブラシ業務やらてんてこまいだ。あとルナルさんの介護もある。スノーリーにいたってはあまり手伝ってはくれていない。
「目つきの悪い虎さんとか黒猫さんとかブラシをしてくれってくるのだけど、私できないし、断るとなんか怖いし。
子供預かりの方も人数制限をしても、みんな強引に子供預けていっちゃうし、私このままだとシズクと話す時間も減っちゃう」
「すみません。新しい人を雇おうと思ってます」
子供預かりも食事処も低価格でやっている。皆の薬代とかをかんがえるときつきつのかつかつだ。
「あ、そうだ。月々食事費と保険制度もやろうとおもってまして」
「食事費?保険制度」
「食費と保険金を月々いただいて、お子さんが病気とかのときにそのお金から、お子さんの病院費用を出そうかなと思っていまして」
「そう。いいと思うなぁ。ああ、そうだ、アル先生、私のお友達とか仕事なくて困っている人がいるのだけど、その人にここで働けるか聞いてもいい?」
「そうですか?ぜひお願いします。詳しいことはこの後のミーティングで話します」
「わかった。今日の献立何にしましょうか?」
「そうですねぇー」
アルとクワイエットは朝の献立の話し合いを始めた。
子供の好きなもの嫌いなものを親御さんから聞いたことを、踏まえて考えていく。
アレルギーがあったら困るが、アレルギーでもなく体にいい食べ物の好き嫌いの場合、子供が食べられるような工夫をしているのだが、なかなか難しい。
嫌いなものは、アルは甘い蜂蜜とかに入れて、クッキーにしてしまっている。バターみたいな食べ物を見つけるのは一苦労だが、よくわからないいい匂いの油や、バターによくにたルララという獣のミルクを代用として使っていた。
ルララは獣人の子供に母乳代わりに与えることもある獣らしい。
「アル、水を汲んできたから、全員分茶を入れるんだが、いいか?」
ソニアの声に、アルはどきんっと、する。
アルはすぐさまソニアの顔色を確認する。
「無理しないでください!今ソニアさんに体にいい蜂蜜茶もっていきますから、安静にしていてください!」
「アル、俺は大丈夫だ」
ソニアはそういうと、アルの頭をなでてお湯を沸かしに行く。
ソニアさんの馬鹿。
アルは俯く。
「アル先生は本当にソニア先生が好きなのね」
にこにこクワイエットさんが言う。
「大切な人ですから」
「あら!あら?!」
クワイエットさんが驚いて微笑むのに気づかずに、アルは俯く。
早くソニアの体をむしばむ毒を解除したい。アルの心は焦燥感でいっぱいだった。
今日はジュラの店によって、その後男娼の仕事がある。夜はソニアやジルで新しい家をどうするかの話し合いがあった。その時に魔法のことを聞いてみようと思った。
ソニアが雑踏の中、アルの元を離れてどんどん先へといってしまう。
慌ててアルはソニアの後を追いかける。
けれどアルは必死に走るのに、ソニアには追い付かない。
「ソニアさん!待って」
大声でアルは叫んで、目を開ける。
目を開けるとそこはいつもの家の天井で。
どうやら夢だったらしい。目から涙があふれ出している。
アルの隣にはスノーリーが赤ん坊を連れて寝ていた。
朝からげっそりするアルである。
ほぎゃほぎゃ猛烈に泣いている赤ん坊の頭をなでて、起きる。
目からこぼれ落ちている涙をぬぐい、考える。
このままではソニアが毒で死んでしまう。どうしたらいいのだろう?魔法がつかえたら、ソニアを助けることもできるのだろうか?
アルの夢の中に現れた美しい少女はそんなことを言っていたような。そう考えるとアルの頭がずきりと痛む。
だめだ。あの少女のことを考えると、アルは頭が痛くなる。
魔法ってどうやったら使えるようになるのだろう?
「魔法!!」と叫んでみたが、なんか恥ずかしくなって赤面したアル。その様子をにやにや笑いのスノーリーが見ていた。
は、恥ずかしい。
「おはようございます!!」
と声を上げて慌てて朝ご飯づくりに向かうアルだった。
「おはようございます!クワイエットさん」
台所にはにこにこご機嫌そうなクワイエットがいた。
クワイエットはアルに気づくと、にっこり微笑んでやってくる。
「おはよう♡アル先生!!」
「どうしたんですか?ご機嫌ですね、クワイエットさん」
「新しい彼氏ができたの」
「彼氏さんですか?」
「うん。とっても優しい彼でね。シズクも気に入ってくれるといいな♡」
「そうですか」
お子さんにとって再婚は重要な問題だ。アルはシズクの支えになりたいと思う。それにクワイエットの支えにも。
「クワイエットさん」
「何?」
不思議そうにクワイエットの顔がアルを見る。
「クワイエットさんには私がいることを忘れないでください。困ったことがあったら、私はシズクちゃんとクワイエットさんの支えになりたいと思います。自分の中で抱え込まないでください」
「やだ!アル先生ったら、アル先生も恋人みたい!」
げらげらクワイエットは笑う。
「まぁ、私はクワイエットさんのおばあさんみたいな存在みたいな感じですかね?」
冗談めかしてアルがそういうと、クワイエットは俯いてしまう。アルは慌てる。
「すいません。嫌でしたか?」
「ううん。違うの。私の家族いないようなもんだから、なんか嬉しくて!」
そう言ってクワイエットは滲んだ涙をぬぐって笑った。
「そうですか。よかったです。あの、クワイエットさん、先生ではなくて、名前呼びでもいいですよ」
クワイエットは何故かアルのことを、アル先生と呼ぶ。先生呼びは、なんか気恥ずかしい。
「ううん。アル先生は、アル先生だから!アル先生って呼ぶね」
そうよくわからないことをクワイエットは言う。
内心アルは首をかしげる。
「そうだ!クワイエットさん、午前中私ジュラさんの薬屋さんに行く用事があるので、午後から子供会議を開こうと思います」
「こどもかいぎ?」
「はい。お子さんに集まってもらって、こうしてほしいなどお子さんの要望などを聞こうと思いまして。全部お子さんの要望を聞けるわけではないんですが、引っ越しとかお子さんの気持ち置いてけぼりに大人が決めることが多いですし、お子さんの色んな気持ちを聞いて、お子さんの心のケアをしていければと思いまして」
「心のケア?」
「お子さんの心に寄り添った対応ですかね。二週間に一度ほど考えているんですが」
「アル先生」
クワイエットはため息をつく。
「だ、だめですかね?」
「いい考えだと思うけど、要望を聞く前に人数が足りないわ」
げっそりするクワイエットに、アルもげっそりする。
「確かに」
アルは子供預かりに食事作りにブラシ業務やらてんてこまいだ。あとルナルさんの介護もある。スノーリーにいたってはあまり手伝ってはくれていない。
「目つきの悪い虎さんとか黒猫さんとかブラシをしてくれってくるのだけど、私できないし、断るとなんか怖いし。
子供預かりの方も人数制限をしても、みんな強引に子供預けていっちゃうし、私このままだとシズクと話す時間も減っちゃう」
「すみません。新しい人を雇おうと思ってます」
子供預かりも食事処も低価格でやっている。皆の薬代とかをかんがえるときつきつのかつかつだ。
「あ、そうだ。月々食事費と保険制度もやろうとおもってまして」
「食事費?保険制度」
「食費と保険金を月々いただいて、お子さんが病気とかのときにそのお金から、お子さんの病院費用を出そうかなと思っていまして」
「そう。いいと思うなぁ。ああ、そうだ、アル先生、私のお友達とか仕事なくて困っている人がいるのだけど、その人にここで働けるか聞いてもいい?」
「そうですか?ぜひお願いします。詳しいことはこの後のミーティングで話します」
「わかった。今日の献立何にしましょうか?」
「そうですねぇー」
アルとクワイエットは朝の献立の話し合いを始めた。
子供の好きなもの嫌いなものを親御さんから聞いたことを、踏まえて考えていく。
アレルギーがあったら困るが、アレルギーでもなく体にいい食べ物の好き嫌いの場合、子供が食べられるような工夫をしているのだが、なかなか難しい。
嫌いなものは、アルは甘い蜂蜜とかに入れて、クッキーにしてしまっている。バターみたいな食べ物を見つけるのは一苦労だが、よくわからないいい匂いの油や、バターによくにたルララという獣のミルクを代用として使っていた。
ルララは獣人の子供に母乳代わりに与えることもある獣らしい。
「アル、水を汲んできたから、全員分茶を入れるんだが、いいか?」
ソニアの声に、アルはどきんっと、する。
アルはすぐさまソニアの顔色を確認する。
「無理しないでください!今ソニアさんに体にいい蜂蜜茶もっていきますから、安静にしていてください!」
「アル、俺は大丈夫だ」
ソニアはそういうと、アルの頭をなでてお湯を沸かしに行く。
ソニアさんの馬鹿。
アルは俯く。
「アル先生は本当にソニア先生が好きなのね」
にこにこクワイエットさんが言う。
「大切な人ですから」
「あら!あら?!」
クワイエットさんが驚いて微笑むのに気づかずに、アルは俯く。
早くソニアの体をむしばむ毒を解除したい。アルの心は焦燥感でいっぱいだった。
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