上 下
12 / 18

11

しおりを挟む
ついさっきの事だ。
テディはなんだかんだと一人で必死に片づけて、終わったとたん僕の荷物を軽く持って勝手にさっさとテディの自室に持って行ってしまった。
一瞬意味がわからなくて頭の中で?マークが飛び交ってしまったが、直ぐにテディの家の玄関外廊下まで行って抗議した。
「僕の荷物を返せ!!!」
近所迷惑も考えず普段あまり大声も出さない僕が久々に声を張った。
慣れない事をしたので何故か胃が少し痛み出した。
せっかく避難させて安全な箱へ移動させた僕の荷物は、テディの家の中に持って行かれたのだ。
無残な僕の部屋の隣にある全くの綺麗で無傷なテディの部屋に!
僕の荷物をしっかり奥に置いたのだろう、玄関先からは僕の荷物が見えない。
そしてテディが荷物を取らせまいと立ちはだかるように玄関前にいる僕の前に立っている。
「修繕が終わるまでここで暮らせば良い」
「は?」
どんな嫌がらせだ!意味が解らない。
いや、何度もそっちで仮眠してるけど…
でも一緒に過ごすとか……???
想像が出来ない…いや、怖いんですけど?
なんか自殺行為にしか思えないだろ!!!
「ふざけんな!……タワーに暫く泊まるから大丈夫だ!てか、荷物返せよ!」
「……………」
また無言かよ!!!
テディはくるりと体の向きを変えて家の中へ再度入って行った。
ドアは閉まっていない。
僕が部屋の中に追いかけてくると思っているのだろうか。
お前の思うとおりに動くと思うなよ!!!と心の中で悪態をついてやった。
脳内妄想では殴り蹴ってはごめんなさいと謝るテディの姿を妄想しながら、僕は僕でスマートパッド以外何も持っていない状態で寮棟を降りてタワーに向かった。



ガイド専用フロアに有る仮眠室を数日借りる為上長にお願いしに行く途中でズウォンさんに会った。
「あれ?帰ったんじゃねぇの?」
「数日仮眠室を借りようと思って。」
「ん?あ、あぁ、…今から?」
そうだという前に首を上下に振ったら少し気まずそうにズウォンさんの表情が変わった。
「そうか…」
「何?なんかあるんですか?」
「いや……お前の王子様がガイド室長の部屋に入ったの見かけてしまったというか………」
「は?」
予想もしていないことを聞いた僕は話途中のズウォンさんを置いて急いでガイド室長の所へ走った。
後ろから声がしたが聞こえない振りをして走った。
嫌な予感しかしない。何故そう思うのか理由はわからないがとにかくそう感じてしまう。
くそ!僕より先にタワーに来るとか…これだからセンチネルはズルい!!

ガイド室長のいる部屋の前で息を整えノックしようとしたその時
室内から知らない人の楽しそうな声がした。
特に争っているとかそういう声は全くない。
和気あいあいとした感じの空気がドアの向こうに流れてる感じがする。
少しでも気まずそうな雰囲気の声がしたら堂々と開けて入れる自信があったが、今入って良いのかどうか迷ってしまった。

ノックをするかどうかを悩んでいる間にドアが開いた。
「あっ」
急に目の前に人が現れてぶつかると思って動けないでいると「危ないですね」と優しい声で僕の肩を掴んでよろけない様に支えてくれた。
その手はセンチネル室長だった。
直接話をしたことは無いが広報関連でよく写真や映像を見かけていたので一瞬ドキリとして急いで離れた。
「すいません!」と頭を下げて少しして顔を上げると、思ってもみない組合せにびっくりして「なんで!」と声が出たが、センチネル室長はニッコリとしただけだった。
センチネル室長の後ろに不機嫌に僕を睨んでいるテディが居たのだ。
「あ!すいません!室長に言ったわけではなくて…」
「オールデン君のガイドさんですよね?今回からは私の息子のガイドとしてもよろしくお願いします。」
そう言ってセンチネル室長は僕に軽く頭を下げた。
「え!いや、こちらこそ!よろしくお願いいたします!」
ちょっと緊張してしまって変な返事をしてしまった。
何を宜しくするんだよ!僕は!!!

センチネル室長はニコニコしながらガイド室長を出て去って行った。
テディも一緒にそのまま消えると思っていたが、ここにいた。
センチネル室長の姿が見えなくなるのを確認してテディの方に向いた。
「なんでここにいるんだよ!」
「俺も一緒にここに泊まる」
「バカか!お前から離れる為に僕はここに泊まるんだから来るなよ!!!」
僕はガイド室長室の前ということを忘れて大声でテディを拒否った。
言ってやった感が凄い。ドキドキした。はっきり伝えればさすがに理解するだろう!!
と思っていたが、テディはさっきまで僕を睨んでいた表情と違いいつもと変わらない無表情に近い…飄々とした感じで僕を見て言った。
「特別室で待ってる」
テディはそれだけ僕に言ってセンチネル室長が向った方向へ去って行った。

特別室?え?何?それ何?
特別室ってなんだ???
しおりを挟む

処理中です...