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第1章 突入! エベレストダンジョン!

第49話 最下層到達! ( 3/3 ) 決着! そして、外へ……

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 ミケが火魔法?
 ――ミケが火魔法??

 白狐ミケはまだドヤ顔を崩していない。

 ……いや、今はそれどころじゃ無かったな。

「ミケ! サンキュー! だが、話は後でなっ!」
「うむ!」

 ロックウォール先生を消すと、アイスドラゴンは翼を広げて氷の棘を出そうとしていた。

「ちっ! させるかよ! 《エクスプロージョン》!」

 ドッバーーーーーーァァァァァアアアアアアアアン!

「グギャャャァァァァアアアアッ!」

 すぐさまミケ達が攻撃を叩き込むパターンを繰り返していくと、修復される氷が薄くなってきた。
 アイスドラゴンは、手も足も出ない状況になりつつある。

 今だな。

「《ロックウォール》先生!」

 再びロックウォールを発動する。
 しかし、今回は地面からではない。
 ロックウォールが天井から勢いよく伸びてきて、アイスドラゴンの頭部を直撃。
 氷が弾け飛び、頭部が露わになり、ロックウォールがそのままアイスドラゴンを押さえる形になった。

「ミケ! 俺の火魔法にお前の雷を合わせるんだ!」
「おう! 任せーぃ!」

「火属性高等魔法!《フレイムストーム》!」

 ボワ!ボワッ! ボワァァアアアアアアアア!

 火炎の嵐がアイスドラゴンに向かっていく。

「ほれ!」

 ミケから放たれた雷が、火炎の嵐と合わさる。

 バチバチ! ブワッ! バリバリ! ボボボピシピシ! ボワァァアアアアアアアアアアアア!

 雷炎がアイスドラゴンの全身を包み、バリバリバリッと氷を砕き、身体を焼き回っている。

 グギギャァァァァーーーーーーーーーーゴバアアアアア!

 アイスドラゴンは、堪らず悲鳴をあげた。
 雷炎が消えると、今度はアニカとアニタが斬りかかり、ふらつくアイスドラゴンにダメージを加える。

「アニカ! アニタ! 次がいくぞ! 離れるのじゃ!」

 ドッゴゴゴーーーーーーーーン!

 アイスドラゴンは、すでに悲鳴を上げる気力も無くなり、腕も翼もダランと垂れ下がっている。――が、容赦はしない。

「地属性高等魔法! 《メテオライト》!」

 ロックウォール先生の親戚! 食らえ!

 ドドーンッ! ドンッドン! ドスドスドス! 

 魔人族に食らわせたロックレインよりも大きな隕石がアイスドラゴンを打ちつけ、鱗を飛ばし、皮を剥ぎ、肉を削いでいった。
 アイスドラゴンが一瞬光を放ち、魔石を残して消えていった。

 不思議だが、水面が凍った氷も棘も一緒に無くなった。


「ふぅ~、終わった……」
「ゆ、ユウトさん! 助けて頂いてありがとうございました」
「ごめんなさい。アニタがよく見てなかったの……」

 2人がシュンとしているので、気にするなと頭を撫でてやる。

「礼なんていらないさ。みんな助け合ってるんだから。……でも、さっきみたいに人を――特にお姉ちゃんを巻き込んでしまったら大変だから、気をつけるんだぞ?」
「うん!」

 ミケが巫女姿に戻って、はっきりとしたドヤ顔でこちらにいらっしゃった。

「我も別に礼はいらんぞ? ユウトよ」
「そうか? ケー」
「――要る! それは要るぞ! ケーキは礼には含まれないのじゃ! べ・つ・も・の・じゃ!」

 ふふっ! はははははははははは

「ところで、あれはどういう事だ? ミケ? 火属性魔法が使えるなんて」
「お主らを驚かせたくてな。結構練習したのじゃぞ! のう? ニア」
「グスッ、はい。ずっと内緒にして頑張っておられました。こんな大事な場面で役に立つとは……ぐすん」

 ニアは、感動で目を潤ませている。

「そうかぁ、本当に助かったぞ。ミケ」
「ミケちゃんかっこよかったよ~」
「うん! かっこよかったです!」

「――か! か、かっこよかった? そ、そうじゃろそうじゃろ~、火はかっこ良いのじゃ~。それを使える我はもっとかっこ良いのじゃ!」

 “かっこいい”に反応したのか、ミケはかなり上機嫌になった。


 そして、ミケやアニカ、アニタ、ニア達4人の次に大切な刀を探す。

「お兄ちゃん! あったよ~」
「無事みたいです! 良かった~」
「おー、メテオライトの直撃は避けられたみたいでよかった。心配してたんだ! 後で綺麗に手入れしてやるからな」

 とりあえず刀身に付いた汚れを拭き取ってやると、キラリと艶めいて、喜んでいるように見えた。


 今回もお世話になったロックウォール先生の残骸に腰掛け、一息つく。
 ちょうど昼時だが、……まだ食べなくても大丈夫そうだな。

 魔石を回収し、門に目をやる。

「……門、か」

 みんなも門に目を向ける。

「数えたんだが、アニカ達と出会って、その日にダンジョンに入って2週間。ちょうど2週間で、ここに辿り着いた」
「ん? そんなものか? もっと一緒にいたような気がするのう」
「わ、私はあっという間でした……。毎日必死でしたから……」
「アニタは毎日たのしい~」
「……。ニアは?」
「私ですか? 私もあっという間でした。皆さんと一緒に美味しい物を食べて、お風呂に入って、怖い思いもして、いろいろ体験できてよかったです。これからも何があるのか楽しみです!」

「これからも……か。そうだな、現時点でもやるべき事は2つあるしな」

 アニカとアニタのお父さんの仇討ちと、バハムートの息子のアムートを探すこと、……奥さんのミーナはどうなったのだろう? これも調べるか。

「他にも、色々見て回りたくないか? 俺達の知らない種族がいるんだ。その人達とか、どんな暮らしをしてるのか、……あと名所とか」
「ケーキもじゃな! どんな甘味があるのかのぅ?」
「見たいです! 知りたいです!」
「アニタも!」

 みんなの目が、まだ見ぬ世界への好奇心で輝いている。……俺もそうだ!

「よし! 門を開けるか! お昼御飯は本物の空の下で食べよう!」
「「「おー!」」」

 ギギギギギィィィィィィィイイイイイイイイ!

 門が開いた!
 ……期待していた景色とは違ったが。
 エベレスト頂上の入り口と同じ様に、漆黒の幕が張ってあるかのようにゆらゆらと揺らめいている。
 外は見えない。
 アニカとアニタが息を呑む。

「どうしたどうした? 俺達にはやるべき事がある。やりたい事もたくさんある!」
「そうじゃぞ? 外がどのような景色か、余計楽しみになったではないか! 焦らしよるの~、この門め!」
「さっ! 行こうか」
「おう!」
「はい!」
「れっつご~!」

 俺達は漆黒の幕を抜けていく。

第1章 完

第2章へ続く
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