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第1章 突入! エベレストダンジョン!
第48話 最下層到達! ( 2/3 ) ブルードラゴン、アイスドラゴンに成る!
しおりを挟む「グォォォォオオオオオオオオオオ!」
ブルードラゴンが青く光る眼を見開き、両腕に力を込めて開き、片翼になってしまった翼も目一杯開いて咆哮をあげている。
本当なら、無防備に見える今が攻め込む絶好のチャンスなのだが……近づけない!
放出された魔力なのか、プレッシャーなのか、そういったものがビリビリと伝わってくる。
ピキ、ピキッ! パリ、ピキピキッ!
ブルードラゴンの体表が薄い氷で覆われていく。
ピキピキピキ、パキパキッ! ピキピキッ!
薄かった氷が、どんどん厚みを増していく。
バキバキッ! ゴリッ! ビキン! ガリ! ゴリッ!
眉間に突き刺さったままの刀もそのまま凍っていき、目と鼻、口を残して頭部が氷に覆われ、徐々に胴体、脚も覆われていく。
翼も氷で覆われて、斬り落とした方の翼も、まるで最初からあったかのように氷の翼が作られていく。
「……おいおい、せっかく斬り落としたのに」
水面も全て凍りついた。
ロックウォール先生も凍った。
「……ニア、こいつはアイスドラゴンに“成った”のか?」
******キマイラ戦後、風呂上がり。
みんなで風呂に入り、女子チームは髪の手入れなど、諸々あるので、俺だけ巣の淵で涼んで(実際は涼しいわけではないが)いる。
少し気になることがあったので、ニアに出てきてもらう。
「ニア? 今日のキマイラもそうだったが……リッチも咆哮してから強くなった気がするんだが、あれって普通なのか?」
バハムートの記憶でもそうだった。もっともバハムートの場合はもう少し多いメンバーで高火力の攻撃を叩き込み続けたり、【聖剣技】で圧倒していたが……
「はい。強力なモンスターは、戦闘中に追い込まれると咆哮をあげて、攻撃手段が変わったり一段階強くなる事があります」
「そうか……じゃあ、次に戦うモンスターもそうなるんだな。今日のキマイラは、全員で畳み掛けたから良かったけど、厄介だな」
「もっと厄介なパターンがありますよ」
「えっ?」
ぼぉーっと前を眺めて会話していたが、意外な答えに驚いてニアを見た。
「それは……ごく稀にですが、あるんです。“成る”ことが」
「“成る”?」
「はい。追い詰められたモンスターが、同系統の一段上のモンスターに変化するのです。それを“成る”と表現します」
「まっ! マジか?」
「ごくごく稀な例ですが、マジです」
俺はごくりと息をのみ込んだ。
******現在
「……はい。こんな場面で遭遇するとは……。ですが、ダメージは蓄積されているはずです。悲観することは無いと思います」
「そうだよな。……それに対抗策が無いわけでもないだろうし」
全員の《ストームフィルム》を解除して《フレイムフィルム》を張り直す。
俺の刀はアイツに刺さったままだから、もう1本の刀をストレージから取り出して――いや、グンダリデの斧にする。
刺さった刀の状態が解らない今、もう1本も壊されて両方失うリスクは避けたい。
「《マテリアルブースト》! 《エンチャント・フレイム》」
アイスドラゴンが咆哮を終えて、氷の翼を一振りする。
ブゥワサッ! ググッ――キィィイイイン!
氷の地面から無数の棘が生えて、俺達に襲いかかってきた。
凍ったロックウォール先生が砕け散る。
「アニカ! アニタ! 大丈夫か?」
「はい!」「よけたよ~」
飛んでいたから何とか避けられたが、降りていたら危ないところだ。
「小癪な奴じゃ! くらえぃ!」
ピッシャーーーーン!
ミケの放った雷がアイスドラゴンに直撃した。
――が、直撃部分にヒビが入った以外、大半がアイスドラゴンの氷の表面を這って地面に抜けていった。
「――なぬっ?! 効かぬのか?」
一瞬の動揺を見せたミケを、アイスドラゴンの噛みつき攻撃が襲う。
「いかん!」
「《エクスプロージョン》!」
ドバーーーーーーァァァァァアアアアアアアアアン!
俺の咄嗟の魔法が、アイスドラゴンを捉えた。
爆発と、それによる閃光、音、熱、衝撃がヤツの顔に直撃して、視界を奪い、顔面を覆う氷が弾け飛んだ。
グァギャァァァァーーーーーーーーーーアアアアア!
「ユウト! 助かったのじゃ」
「おう! それよりも、効いたぞ! また氷が張る前にみんなでいくぞ!」
「「「おー!」」」
「ぅうぉおおりゃー――!」
「これでも食らうのじゃ!」
「トルネードショット」
「すくりゅーしょっとー」
俺は火炎を纏った大斧を、アイスドラゴンのむき出しの目に振り下ろし、ミケは鼻筋から鼻に爪撃、アニカ達はアゴを両サイドから突き上げた。
グルルォォォオオオオーーーー!
よし! 片眼は頂いたし、顔面の鱗にも傷が入り、嫌がっている。
パリッ! ピキピキピキ、パキパキッ! ピキピキッ!
アイスドラゴンの顔に、もう氷が覆い始めている。
「ダメージは入っている。粘り強く繰り返すぞ」
「「「おー!」」」
それからも、俺の《エクスプロージョン》を契機に攻撃を繰り返し、確実にダメージを与えていった。
……だが。
ドンッ
「きゃ!」「――あっ! ごめんお姉ちゃん」
攻撃に集中し過ぎたアニタが、勢い余ってアニカにぶつかってしまった。
アニタが弾かれたアニカの手を掴んで、落ちないように抑えた。
この一瞬の隙を、アイスドラゴンは逃さない。アニカ達に向かって腕を振り上げる。
アニカ達にはそれが見えていない。
マズイ! 防御膜があっても、あれが直撃したら2人の身が危ない!
俺は全力でアニカ達の元へ飛び、2人を突き飛ばした。
アイスドラゴンの腕は振り下ろされ、鋭い氷の爪が俺に向かってくる。
「ユウトーーーー!」
「ユウトさん!」
「お兄ちゃん!」
「くぅ~~、ピンチ! 間に合ってくれ《ロックウォール》先生!」
ゴッゴゴゴゴ
――ギリギリ間に合いそうに無い! 食らってしまう!
「《マルチプルフレイムランス》!」
ヒュッヒュン! ボッボッボッボッボッ! ドスドスドスドスドス!
5本のフレイムランスがアイスドラゴンの腕に連続してぶつかり、数本で氷を砕き最後の1、2本が腕に刺さった。
アイスドラゴンの腕の振り下ろしが鈍った。
ゴゴゴゴッドン!
それによってロックウォール先生が間に合い、アイスドラゴンの腕を弾き上げた。
「フレイムランス?」
俺は、安堵しつつフレイムランスが放たれた方向を見た。
そこにはドヤ顔のミケがいた。白狐だったが、俺には判る。確実にドヤ顔だった。
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