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第1章 突入! エベレストダンジョン!

第47話 最下層到達! ( 1/3 ) ブルードラゴン戦開始!

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 昨日はゆっくり過ごすことができて、今日はみんな普通に起きた。
 事件は起きていない。

 朝食を済ませて準備を整え、ステータスを確認する。

 名前 : ユウト ババ
 レベル: 75
 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐ B・探知〈5〉 

 名前 : アニカ クマル
 レベル: 73
 スキル: A・言語理解 A・強靭〈10〉 C・槍技〈10〉 C・光属性魔法〈9〉
      C・察知〈9〉
              
 名前 : アニタ クマル
 レベル: 73
 スキル: A・言語理解 A・感知〈10〉 C・短剣技〈10〉 C・無属性魔法〈9〉

 ミケはレベルが76に、【探知】が〈6〉から〈8〉にそれぞれ上がったそうだ。


 71階層の扉を抜けてスロープを下りる。
 やっぱり、また扉があった。

「……やはり近づいているんだな、最下層に」

 ミケ、アニカ、アニタに目で合図を送ると、みんな頷いた。

 扉が重い音を立てて開く。
 71階層より更に広いと思われる空間。奥には小高い陸地が見える。敵は見えない。周囲の音もない。
 地面は一面の水。波紋1つない鏡面の様な水面。

 全員に《フライ》を掛けて浮遊する。

 水深を探るために刀の鞘を差し込む。

 ミケ達も水面を注視している。

 水面に波紋が広がる。

 コツッ……浅い。

 扉が閉まり始めた。

 ゴゴゴゴゴゴ


「とりあえず、あの陸地まで行くか」
「うむ」「「はい」」


「ユウトよ!」

 途中でミケがみんなを手で制止した。

「あれは陸ではない!」
「だね~」

 たしかに自然物というより、“生命の艶めき”の質感がある。血の通った生き物だ。
 上も下も前も後ろも右も左も、とにかく全方位を警戒してゆっくりと前に進む。
 さっき刺した鞘の波紋が追いかけてきている。

「……あれがボスに違いない」

 自然と小声になり、ミケ達も無言で頷く。
 波紋が俺達に追いつき、追い越していった。


 青い肌だ。
 骨と膜の様なものが見える。折りたたまれた翼か?

 ここで俺はある事に気付いた。

「おい、あの奥に見える扉、大きすぎないか?」
「デカイの~。それに随分と禍々しい。山頂の穴よりも何倍も禍々しいぞ」
「ニア、もしかして……あれが?」
「はい、あれこそ魔王軍が作りだした禁忌の門、次元転移門です」
「「「「――!!」」」」

 その時、波紋が陸地のように大きな生き物に触れた。
 波紋は水面を乱反射していき、少し波打っている。

「グルルゥ」

 ズ、ズ、ズズ、ズズズッ

 生き物が少しずつ動き出した。

 ズズッ、ゴゴゴゴゴゴ

 生き物が横たえていた首が少しずつ伸びて、立ち上がっていく。
 肌だと思ったのは鱗だった。青い鱗が見える。

 その生き物を見つめる俺達の首が徐々に上を向く。
 でかい! どデカイ!

 全貌が明らかになる。
 ドラゴンだ!!

 白い鱗の胸から腹の部分以外、腕も脚も頭も青い鱗で覆われている。
 そして、青く光を帯びた瞳がギロリと俺達を捉えた。

「こいつはブルードラゴンだっ! くるぞ! 距離をとれ!」

 俺自身と俺の言葉に身構える3人に、《ストームフィルム》《フィジカルブースト》を掛ける。
 ブルードラゴンは背中の翼を開いて、思いっきり前方に羽ばたいた。

 暴風とともに、水しぶきがまるで針や釘のように襲いかかってきた。

 チ! チュッ! チ! チュイン!

 無数の水の刃が俺達を襲い、ストームフィルムを抜けてくるものもあった。

「ブルードラゴンは水を操れる! ここはこいつに有利な戦場だ! 水面に近づかずに高さを保って戦うぞ!」
「「はい!」」「了解じゃ!」

 ……こいつにはまだ干渉系の魔法は効かないだろう。物理攻撃と攻撃魔法で削るしかないな。

 ピカッ! ドッシャーーン!

「グルルグァーーーー!」

 暴風と水の刃をかいくぐってブルードラゴンの後ろに回り込んだミケの、強烈な雷が炸裂した。
 ブルードラゴンは、自分に僅かながらでもダメージを与えた、その攻撃の主に気を取られる。
 チャンスだ。

「頼むぞ、先生! 《ロックウォール》!」

 ゴゴゴゴゴゴ ググググググ
 ブルードラゴンの真下から立ち上がった岩壁が、天井と水面の中間までその巨体を持ち上げていく。

「俺も行くぞ! アニカ! アニタ! 臆せず続け!」
「――《マルチプルロックランス》!」

 ミケに気を取られて、振り向いて露わになった首筋を5本のロックランスが狙ったが、鱗にはじかれた!!
 でも、そんなことは織り込み済みだ。
 俺の狙いは翼。
 センスブーストは使っていないが、グリフォン戦での感触を思い浮かべて刀を振り下ろす。

 ガギンッ!

 グリフォンとは体格も、体表を覆う魔力の膜も桁違いなのは解っている。
 かすり傷程度しかつけられない事も。
 だが、こちらにも二の矢がある。

「アニカ! いけーー!」
「はい! ダブルスラッシュ!」

 俺の後ろを付いて来ていたアニカが、俺のつけた傷にスラッシュを2つ叩き込んだ。
 かすり傷が、立派な傷になる。もう少しで骨が露出しそうだ。

 アニタはロックランスがはじかれた首筋を乱切りで攻めている。
 だが、ブルードラゴンは腕でアニタを振り払い、翼をばたつかせて俺とアニカを掃き飛ばした。

「うわっ」「きゃー!」「いた~い!」

 俺は飛ばされながらもなんとか体勢を持ち直したが、アニカとアニタは、飛ばされて水面に叩きつけられた。

「ユウト! 我の2発目がいくぞ! 2人を拾って水から離すんじゃ!」
「おう!」

 俺達が攻撃している間に、白狐姿になっていたミケが2発目の体勢に入っている。
 
 アニカとアニタを拾い上げて、天井まで急上昇する。

 ピカッ! ――ドッゴーーーーーーーーン!

 部屋全体が揺れたような衝撃が伝わってきた。
 水面もパチパチと弾けている。

 直撃をくらったブルードラゴンは、首を大きくグラつかせている。
 効いている。
 俺はアニカに、自分とアニタの回復をしたら反対の翼の膜を狙う様に指示を出して、もう一度向かう。
 今度こそ骨を断ってやる。

 不本意だが《センスブースト》を使う。
 感覚が研ぎ澄まされて、翼の根元の傷の具合や近辺の骨格のイメージから、どこに刀を振り下ろすべきかが解る。
 解った場所に、刀の重さや今の自分の筋力等諸々勘案して導き出した、最適な動作と振り下ろし速度で無心で叩きこむ。刀を。

 シュパッ! 

「グワーーーーー!」

 バサバサッ、ドッシーン! バシャバシャー

 片翼が水面に落ちて水しぶきが上がった。
 アニカ達が回復を済ませて、もう片方の翼を潰しにかかる。
 俺は、センスブーストによって“冴えている”状態の内にブルードラゴンの頭を狙う。

「3発目いくぞ! 離れるのじゃー!」

 アニカ達が引くのを確認して、俺も移動する。ドラゴンの頭の真上に。

 ドッゴゴゴーーーーーーーーン!

 ミケの雷の直撃に合わせて、俺もブルードラゴンの眉間に狙いを定めて刀を突き刺す。

 プスッ! ゴリッ! ズズズーッ!

 頭蓋を突き破って深く突き刺さった!

「グルルルルァァァァアアアアアア! グォォオオオオオオオオオ!」

 それは痛みに悶える悲鳴では無い。もちろん断末魔の叫びでも無い。
 ――咆哮だ!

「なんかヤバいぞ! みんな距離をとれ!」


 ブルードラゴンの目が青く強く光り、咆哮が続いている。

「グォォォォォォオオオオオオオオオ!」
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