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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第50話 連行されてるんだが?

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 パカラッ! パカラッ! パカラッ! ガタゴトガタゴト――

 エベレストダンジョン最下層でアイスドラゴンを倒し、転移門を抜けた俺達。
 今は馬車に揺られている。
 エンデランス王国騎士団の捕虜運搬用の馬車に!!


******ユウト達が門を抜けた時


 綺麗な青空、2週間ぶりの外、新鮮な空気。
 スーッハ~、スーッ
 
 ――ん?

 人がいる。……遠くに。何人も。
 認識阻害でも掛けとけば良かったかな……

 みんなに《テレパシー》を繋ぐ。

“アニタ、自分のナイフ2本ともと、アニカの薙刀をストレージに仕舞ってくれ”
“うん? どうして~?”
“みんな聞いてくれ、気付いてると思うが、人がいる。様子を見るから大人しくな? 対応は俺がする”
“はい!”“わかった~、しまうね~”
“なんじゃ、殲滅せんのか?”

なんでこう物騒なのかね、ミケさんは。

俺は自分の刀をストレージに収納し、ゆっくりと前に進む。

“ニア、この門は壊すべきだな?”
“はい。黙っていてもいつかは消滅しますが、その時は中の物も全て消滅します。生きた人間でも。ですので、誰もいない今の内に破壊すべきです。”
“みんな聞いたな? アニカ、一応俺達にライトドームを掛けておいてくれ”
“はい”

 魔法で作られたのなら……、と《デリートマジック》を試すが一発では消えない。だが、ちょっと小さくなった気がする。
 これもボスみたいに弱らせれば効くのかな?

「おい! 貴様ら! そこで止まれ!」

 遠くから叫んでいる。
 ……武器も見えるし、鎧も着けている。騎士かな?

 アニカの《ライトドーム》発動を確認したので、《メテオライト》を門に撃ち込む。

「おい!! 聞こえているのか! 止まれと言っているんだ! 」
「貴様ら! いい加減に――な、何だアレは!」
「た、退避! 退避だ!」
「逃げろー」

 俺達を止めようとして出てきた数人が、上空に現れた隕石に驚いて、慌てて走っていく。

 ドドーンッ! ドンッドン! ドスドスドス!
 ゴワ~ン! ガンッ!! ゴンッ!! グチャ! ゴンガンガン!

 隕石群が門を叩きつけ、ボコボコにした。
 門は自己修復のように少しずつ直っていくが、サイズは縮んでいく。

「《デリートマジック》!」

 ……出来そうなのに出来ない。でも、また門は縮んだ。

「《マルチプル・フレイムランス》!」

 ――ミケ! ……やっちゃった。

 ドスッ! ドスドスドスドス!!!

「《デリートマジック》!」

 ミケの魔法で更に小さくなった門が、徐々に薄くなり、消えていった。
 ミケを見ると、またドヤ顔をしている。
 ……はぁ。

「も、門が消えた!」
「何が起きたんだ?」
「あ、あいつらはなんで無事なんだ?」

 門を遠巻きに取り囲んでいた騎士らしき連中がつぶやく声が、そこかしこから聞こえてくる。

 周りを見渡すと、魔人族のものとおぼしき死体が転がっている。昨日今日死んだ遺体では無く、少なからず傷んでいた。
 その死体には、騎士連中の槍が突き立てられているものもある。
 そして、件の“魔人族の角”が切り取られていた。……金目当てか?
 騎士だとしたら、相当風紀の乱れまくりな隊だな。


「と、止まれ!! 我々はエンデランス王国遠征騎士団である!」

 ――遠征騎士団!? ……それって!
 バハムートが団長をしていた騎士団だ! バハムートの記憶だから間違いようがない。
 その騎士団がなぜこんなことを……


******現在


 俺達は――と言うか俺が、バハムートが団長をしていた騎士団がなぜあそこにいて、あんな蛮行をしていたのか気になったので、わざと捕まったのである。
 そして、俺達を取り調べる為に王都へ移送する部隊が組まれ、移送中なのだ。

 捕虜運搬用の馬車と言っても、高位捕虜の運搬用馬車で、格子で囲われて晒されているわけではない。かと言って居住性があるわけではない。木箱の様なものだ。
 それに、馬車の両サイドの天井周辺の板1枚分ずつの明かり取りの隙間しかなくて、外の景色などまるで見えない。

「ゆゆゆ、ユウウトよよぉぉ」
「《フローティング》」

 馬車の揺れでまともに会話もできないので、浮遊して衝撃が伝わらないようにする。

「ありがたい。ユウトよ、こ奴はいつまで眠らせておくのじゃ?」

 箱の中には、俺達4人と見張り役の老騎士が1人いるのだが、老騎士には箱に入った直後に《スリープ》で眠ってもらった。
 ニアはスマホの中に入ってもらっていたが、老騎士が眠ってからは姿を現している。
 俺達は最初から縛られていない。その代わり箱自体が、鎖を使って物理的に厳重に封じられているが……
 実質この老騎士も閉じ込められているのだ。

 老騎士が俺達の見張りとして箱に乗り込む際には――

「おい! 老いぼれ! 中でションベンもらすんじゃねえぞ!」
「テメェの顔をしばらく見なくていいなんて、清々するぜ!」
「揺れで死ぬんじゃねぇか?」
「ギャハハハハハハハハハハハ」「それもいいなっ! けっけけけけけけ」

 なんて、聞こえているこっちがムカムカする程の出来事があった。

 俺達が箱に封じられた後は、ここに残る部隊に《インダクション》を掛けて、魔人族の遺体と奪い取った角を埋葬するように仕向けた。
 もちろん穴は深く掘らせて、埋めて戻す。奴らが我に返った時に、面倒くさくて掘り返すのを諦めるほどに……

 今、唯一の情報源が眠っているので、俺達は歩みを進める馬車を余所に、外の崖の上で勝手に昼飯を食べている。

「味気無いな……」
「我なんぞひと口で終わりじゃぞ?」
「甘さがくどく無くていいですね、日本のは」
「おやつみたい~」

 中途半端な時間だから、バランス栄養食の棒型クッキーとペットボトルのお茶がランチである。
 せめて外で食べたいと、《トランジション》で転移したが、遠くに高山が見える以外、水墨画に出てくるような切り立った崖が乱立しているだけだった。
 言うまでも無くケーキが要求され、支給させられた。

 箱に戻る前に、みんなでステータスを確認する。

 名前 : ユウト ババ
 種族 : 人族
 年齢 : 24
 レベル: 77
 称号 : 世界を渡りし者 英雄
 系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商
 スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
      A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐  
      B・探知〈6〉

 名前 : ミケ
 種族 : 白狐
 年齢 : 0
 レベル: 78
 称号 : 世界を渡りし者 異界の神の眷族
 系統 : 武〈拳・爪・獣〉 農 
 スキル: SS・操雷〈10〉 A・言語理解 A・感知〈1〉 C・火属性魔法〈7〉
       
 名前 : アニカ クマル
 種族 : 人族
 年齢 : 10
 レベル: 76
 称号 : 世界を渡りし者 
 系統 : 武〈長柄〉 知識 魔〈光〉
 スキル: A・言語理解 A・強靭〈10〉 C・槍技〈10〉C・光属性魔法〈10〉
      B・探知〈1〉
       
 名前 : アニタ クマル
 種族 : 人族
 年齢 : 7
 レベル: 76
 称号 : 世界を渡りし者 
 系統 : 武〈短剣・弓〉 農 魔〈無〉
 スキル: A・言語理解 A・感知〈10〉 C・短剣技〈10〉 C・無属性魔法〈10〉

 ブルードラゴン・アイスドラゴン戦だけで、レベルが2~3上がっている。
 ミケも隠す必要が無くなったと、久しぶりに0歳のステータスを見せてくれた。

「俺達に隠して火属性魔法を〈7〉まで上げるの大変だったんじゃないか?」
「そうじゃぞ。お前達の目を盗んで練習するのは大変じゃった。ようやったじゃろ?」
「ああ、凄いぞミケ! アニカ達も適性表示のない魔法でも頑張って覚えていこうな?」
「はい! ミケさんみたいに頑張りますっ!」
「ミケちゃん、アニタにおしえてね~?」
「そうか? ぬ~とやってほい! じゃ」
「わかんない!」

 あははははははは


「さて、箱に戻って爺さんから情報を聞き出すか!」

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