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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第55話 惨劇。

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 フリスが口火を切った。

「皆の者! 聞いたであろう。この男は、余の王国の領土に出た門から出現した。よって、この男の取り調べは余が主導する。よいな?」

 異論は出なかった。みんなフリスの態度に辟易へきえきとしているようだった。

「おい! 貴様は余の国のどこの領民だ! 嘘偽りなく答えよ!」

 なんて答えればいいんだ?
 ゴーシュを見ても、助け船は出せないとばかりに微かに首を振る。

 フリスが自分の杖で思い切りテーブルを叩いて、バーーン! という音が部屋中に響いた。

「答えよと言っている!! 言葉が解らぬ間抜けか?」

 何だこいつは? 世の中全部自分の思い通りになるとでも思ってるのか? ……王様だからそうか。

「俺はどこの領民でも無い」

 フリスの顔がどんどん紅潮していく。

「なっ! 何だ貴様!! その言葉遣いは!! それが余に対する言葉遣いか!」

 そこ!? まずそこに怒る~?

「ねぇ~~、そんなトコにいちいち怒ってたら、話が進まないじゃな~い。いい加減にしなさいよフリス坊やったら」
「そうですよ。一国の王たる者、度量の大きさを民に示さねばならぬ時もありましょう。今がその時ですよ。ディスティリーニア様もそうお考えのはずです」
「ぐっ! わ、解っておる!」

 両隣の美女に諭されて、フリスが質問を続けてきた。

「あの門は何だ! 中はどうなっていた!」

 こんなに大声で喚いていて、よく声が枯れないな。

「あれはダンジョンの入り口で、中はダンジョンだった」

 また俺の言葉遣いが気に入らないようで、顔を真っ赤にしている。

「そ、そうか。ダンジョンだったという事はモンスターがいたはず。倒したモンスターの魔石や、中にあった物は全て王国の物である。王国の物は余の物! 全て差し出せ!」

 よく我慢して話を続けたな。また怒り狂う前に答えてやるか……

「出せと言われても、1層しか無いダンジョンだったからな」
「う、嘘を申すな! 門は巨大で、大型のドラゴンでも通れるほどだと聞いておるぞ!」
「大型? ふん! そこの扉よりも小さかったぞ?」

 俺が入って来た扉を指差しながら笑う。

「――よほど小さいヤツに調べさせたんだな?」

 くっ! ぐっ! と、笑いを堪えているであろう声が、周りから漏れ聞こえてくる。

「い、いいから出せ! 余が出せと言ったら出せばいいんだ! 全部!」
「出せと言われてもなー」

 ポケットに手を入れて、ゴブリンの魔石を1つストレージから取りだす。

「――ほれっ」

 ポイッと前に投げ捨てると、ほとんど音を立てずに石床に転がった。スキルが無いと見つけるのも苦労しそうだな。

 フリス以外は笑いを堪えるのに必死のようだ。みんな下を向いて肩を震わせている。
 フリスの怒りが最高潮に達して、今にも杖をテーブルに叩きつけようとした時、奴の側近が何か書かれている紙を渡した。
 それを奪い取るように受け取り、一瞥したフリスがテーブルを叩いて立ち上がった。

「今日は終いだ!! あいつは牢にでもつないでおけ! 明日にでも処刑してやる!!」

 それだけ言い放って、側近たちを杖で叩き伏せながら部屋を出ていった。

「《アナライズ》の結果だろうて」

 ゴーシュが俺にだけ聞こえるようにささやいた。

 他の代表者達も席を離れ始めた。

「ハッハッハァ!! 気に行ったぜお前! この国にいられなくなったら特別に受け入れてやるぜ!」
「肝の据わった男である。うちにもいつ来てもいいのである!」
「ウチもいつでも歓迎するで! あんさんなら、商人になってもやっていけますやろ」

 ライゼルとゴダン、そしてエティゴーヤが俺を称えながら出て行った。
 ゴーシュは、キースのお付きの者と話す振りをして、まるで薬物の取引のように何やら手渡す。
 その受け渡しを確認したキースが、俺をチラッと見てから出て行く。

 俺が突っ立っていると、リーファとローレッタが小走りで寄って来た。

「お話しましょ~」「――があります!」

 ――!

「アタシが先よ~」「私が先です!」

 2人はお互いに目を合わせ、バチバチと火花を散らしているようだ。

「アタシが先よ~」「私が先です!」



 いつまで言い合っているのか……、4、5回は繰り返しているな。

「あのー、お2人とも、どういったご用件でしょうか?」
「あのね!」「あのですね」

 ……埒が明かないので、落ち着いて話そうと言おうとしたその時――


******フリス


「あの男~~~! どこまで余を愚弄ぐろうすれば気が済むのだ! クソッ! クソッ! クソォ! クソクソクソクソクソクソクソくそがーーーーー!」

 あの言葉遣い! ふてぶてしい態度! ニヤけた顔も!! ムカつくムカつくムカつく~~~~~~~!!
 余の下僕共を殴り倒してもまた足りぬわ!! 余が直々に斬首してくれる!
 ――! そうだっ! 娘達がいるじゃないか! 今日のところはそれで許してやるか、くっくっく。

 ふふふ、娘共の事を考えるだけで心が弾むわ! どうしてくれようか?
 く~~っ! 寝室までの距離がこれほど恨めしいことは無い! 

「はぁっ、はぁっ、待ちきれんの~」

 歩くのも自然と早くなってしまう。

「陛下! お待ちを!」
「何だ! こんな時に! 余の邪魔をする気か!」
「い、いえ! 娘共の《アナライズ》結果です!」
「そうか! 早くよこせっ! このウスノロめ! どけっ!」
「ぐわっ!」

 どれどれ? ほう! 全員魔法スキル持ちか! 使える奴らだな~。全員俺の傍に置いてやるか!



 ようやく寝室に着くな。あ~待ちきれん!

 ダーーーン!!

 おもわず扉を蹴り開けて中に入れば、おるではないか! 3人揃って! ぐふふふふ!

「服を脱げ!」


******ユウト


 ――夕暮れに差し掛かった窓の外がピカッと光った。

 ドッッッッガーーーーーーーーーン! ガシャーン!! ドカドカッ!

 轟音がとどろいて、俺達のいる部屋もガタガタと揺れ始めた。
 結構遠くの部屋の壁が吹き飛び、屋根も吹き飛んで、そこからモクモクと土煙りが上がっている。
 外にいる連中の悲鳴も聞こえてきた。
 この部屋に残っている連中は、俺以外床に手を付いて揺れに耐えている。

「な、なに~今の?」
「――神鳴りです! これは、伝説の神鳴りです! ディスティリーニア様のお怒りに違いありません!」

 ミケです。これは、ミケのお怒りの雷に違いありません。
 ……ミケぇぇぇぇ! なんて事をしてくれたんだよ~。
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