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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第56話 王都から逃げなくちゃ。

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******フリスの寝室に案内されたミケ達


 さて、我達3人はユウトとは別室に案内されたわけじゃが……
 なんじゃ? この部屋は。ソファーとテーブルは分かるが、ベッドなんて必要なかろうに。誰かの部屋なのか?

「わ~! ふかふかだ~」

 アニタはベッドでピョンピョン跳ねて楽しそうに遊んでおるが……
 それに、メイドや護衛を装った騎士達に、それとなく出入り口を塞がれておる。

 メイドがテーブルに何やら運んでくる。

「お茶をお入れしました。お菓子もどうぞ」
「――お菓子とな!? 食う!」

 い、いや、そうではない。アニタに《テレパシー》を使うように伝えなくては!

「――? ミケちゃんどうしたの?」

 さっきから身振り手振りで伝えようとしておるが、一向に伝わらん! あの鈍感娘め!

「ミケさん、お茶とお菓子どうぞ。私がアニカを連れてきます」

 おお! アニカが勘付いてくれて、伝えてくれそうだ。

“ミケちゃん、なーに?”
“早く気付かぬか! 無言で身振り手振りするのは恥ずかしかったんじゃぞ!”
“へへっ! 面白かったよ、ミケちゃん”
“それはもうよい! これから何があるか解らんから、一応アニカにも繋いでおくのじゃ”
“わかった~”

 傍から見れば、3人で黙々とお菓子を食べ、お茶を飲む奇妙な光景じゃったろうな。

 しばらくして、アニタはまた跳ねに戻っていきおった。

“むっ? 誰か近づいてくるぞ!”
“だね~。早足でくるね~”

 ダーーーン!!

 痩せっぽちのジジイが扉を蹴り開けてズカズカ入ってきおった。

「服を脱げ!」

 は? 何を言っておるんじゃコイツは。

「ぐふっふふ! ど・れ・か・ら・い・こ・う・か・な~~?」

“ミケさん、このお爺さん気持ち悪いです!”
“きもい~”
“アニカよ、もしもの時は我に合わせて《ライトドーム》を張るのじゃぞ”

「よし! 貴様だ獣人娘!」


 ドッッッッガーーーーーーーーーン! ガシャーン!! ドカドカッ!



 ジジイはもちろんメイドや騎士共も吹き飛ばされて倒れておる。

「ありゃ? やりすぎたか? 2人とも無事か?」
「はい、ライトドームが間に合ってよかったです。……あれ? アニタがいない!」
「――いた! あそこじゃ」

 アニタは、我の雷に飛ばされて尻餅をついておるジジイの両目に、1本ずつナイフを寸止めしておった。
 ジジイは……、ア~、やっぱり漏らしておる。

「ひ! ひぃ~~、た、たすけ……」

 バタンと白目をむいて気絶しよった。

「ようやったぞアニタ。埃っぽいが、ちょうど出口も出来たことじゃし、飛んで出るか!」


******ユウト


 ……ミケぇぇぇぇ! なんて事をしてくれたんだよ~。

「御二方、申し訳ありませんが、用事が出来たので失礼します。《トランジション》!」

 シュンッ!

「へっ?」「えっ?」


 とりあえず上空に出てきたがー……いた!
 ミケ達も空に出て来ていたので合流する。

「お~い! 派手にやっちゃって~、何があった?」
「なんかジジイがいきなり部屋へ入ってきおって、『服を脱げ』だの『どれからいくか』だの言い出しおってのぅ」
「気持ち悪かったです!」
「だからこらしめたの!」
「誰も死んでおらんと思うぞ? 雷は、壁や天井に撒き散らしたからのー」

 フリスだな。あのジジイめ~!

「それじゃ仕方無いな。奴の自業自得だ。うん。――となると、王都からは離れた方がいいな。……ちょっとここで待っててくれ」

 認識阻害をかけて、ゴーシュを探しに行く。
 城外には、大勢の騎士や文官が駆けつけたり、城内から避難してきていた。
 ――見つけた!

“ゴーシュ、聞きたいことがある”

 流石ゴーシュ、念話に一瞬ビクッとはしたが、出所をキョロキョロ探したりしないな。

“答えるが……これ、ユウトがやったんか?”
“俺じゃないよ、ミケだ。俺には証人がいるからな。――ところで、これのせいでここから離れなくちゃいけなくなったんだが、どこかいい街ない?”
“う~ん? それでは――”

 ここから南東へ行くと宗教国家ディステ、北東へ行くとマッカラン大公国があるので、大公国方面へ行くといいと教えてくれた。

“ありがとうゴーシュ。これから向かうよ”
“待つんじゃ! どこかの街のギルドで必ず冒険者登録をするのだぞ、身分証になるでの。身体に気をつけいよ!”



 暗い中ゴーシュに教えてもらった通りに、だいぶ大公国方面に飛んで、大きな街の近くでキャンプする。
 よくよく考えたら、この世界で使える現金を持っていないんだった。換金できるような店も閉店してる時間だろうしな。


「夕飯も食べたし、ケーキは当然食べさせた。寝床も設置できた。……で、今後どうするか、だ」
「どうするとは何をじゃ?」
「魔王を倒しに行くか、アムートの手掛かりを捜すか、だな」

 寝床でアニタを寝かしつけたアニカも呼んで話し合う。

「魔王の方は、この大陸の領土を放棄していたりして、思ってた感じと違って時間的に余裕ができた感じだし……」
「ふむ」
「――アムートやミーナは年齢の事もあるから、出来るだけ早い方がいいだろ?」
「そうですね。……もし、ユウトさんが私達のパパの仇討ちの事を考えて下さっているのなら、気にしないで下さい。もっと強くならないとお2人にご迷惑をかけてしまうって痛感しましたから……」

 アニカも“自分とアニタで”仇を討ちたいのだろうな。

「……ゴーシュがいつか大公と会って話をするべきだと言っていたし、マッカラン大公国に近づいたし、アムートを捜すか!」
「それでよいぞ」
「はい」

 これからの方向は決まった。ほとぼりが冷めるまでマッカラン大公国を中心にアムートを捜す。 ……冷めるかな? ほとぼり。

「いずれにせよ、明日はこの世界に来て初めての街だ! ギルドってところで冒険者登録して、何か換金して――あっ! ……」

 大変なことに気付いてしまった。ヤバい。ちょっと血の気が引いている。

「どうしたのじゃ?」「――ですか?」

 ヤバいなー。ヤバい。……なんであの時に考えなかったんだ!! 俺のバカ!

「……あ、あのな」
「なんじゃ」「はい」

「王都に行く時、《アナライズ》対策でステータス偽装しただろ?」
「そうじゃ」「はい」

「レベルやスキル、ミケは年も種族もイジったろ?」
「そうじゃ」「はい」

「な、名前も偽名にすれば良かったーーーーーーー!」
 かったーーーー ったーーー たーー

「――すまん!」
「しておらんかったのか!?」「してなかったんですか!?」

 半ば呆れられながらも、偽名については俺に任せるという事で、明日までに考えておくように仰せつかった。
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