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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第83話 逃げられ、捕まえ。

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 ……あの影は何だったんだ?
 王城には苦労無く入れた。
 城内の騎士達が、ドラゴンに対応するために慌ただしく走り回っていて、俺には目もくれない。
 この騎士達は、俺以外の何者かが城に侵入したのにも気づいていないようだ。

「《ディテクトマジック》」

 俺達が感じた怪しい気配の奴を探す。
 周りにいる騎士達の微弱な魔力も捉えるが、それは無視していい。

「……いた」

 大きい魔力反応が3つ。 
 この反応を追って、城内を移動する。

 途中から、経路の途中に人が倒れている様になった。
 ……死んではいないようだが、意識はない。

 魔力を辿らなくても、倒れている人間を辿れば追いつくんじゃないか? というほど、倒れている者が増えてきた。
 広い通路と開け放たれたままの大きな扉の前に着いた。
 中を覗くと、人が大勢倒れている。ほとんどが武装していない。

「ここは……謁見の間か?」

 広いホール状の室内、奥には台座? ステージのように高くなった場所があり、1つ置かれている豪奢な椅子にはフリスが座っている。
 その近くには3人、マント姿の怪しい人物。
 大柄な男と小柄な2人。鎖? に繋がれている。
 しかも、みんな白い仮面をつけている。

「アレだな。怪しい気配の元は……」

 3人を警戒するように身をよじって座っているフリスに向かって、大柄な仮面男が何かを言っている。

「貴様が国ごと我が軍門に下るなら、この状況から助けてやると言っている」

 なんかマズイ感じがする!

「《フライ》」

 俺は刀を抜いて、男に向かって一直線に飛んで行く。
 一番背の小さいマスク野郎が、俺の魔法に気づいたようだが、俺の方が早い!

 もらった!

 ガギンッ! ジャラッ!

 中マスク野郎に金属製? のゴツイ杖で止められた。

「なにっ!? 止めやがった?」

 中マスク野郎が、鎖をジャラジャラさせながら、俺と大マスク野郎の間に立ちはだかる。

「き、貴様は!! あの時の!」

 フリスは、俺に気づき、震える声で話しかけてきた。

「フリス! こいつらは何者だ!?」
「し、知らぬ!」

 俺の言葉使いにキレる様子もないほど、追い詰められているな。

「貴様ぁー、俺様の邪魔をする気か? お前達! やるぞ!」

 ジャッ!
 大マスク野郎が鎖をグイっと引き、2人に命令した。

「1対3か!」

 中マスク野郎が金属杖で攻めてくる。小マスク野郎が何やら魔法を発動しそうだ。
 中マスクの攻撃に対応しながら、小マスクの魔法を消して、更に魔力阻害をかける。
 それでいいと思っていたら、大マスクの方から何かが飛んできた。

「うおっ!」

 俺の顔めがけて投げられたソレは、俺の頬をかすめていった。
 ナイフか?

 大マスクの飛び道具に注意を払いつつ、中マスクの物理攻撃と小マスクの魔法攻撃に対応していく。
 すると、視界がグラグラと揺れ始めた。

「チッ! 毒か? 《デトックス》!」

 身体強化無しではきつくなってきた。

「《フィジカルブースト》! ついでにお前らに《シャドウバインド》《パラライス》《スロウ》!」
「な! 何だこいつは!? 無・光・闇! 3属性を操るのか?」

 大マスクが、驚いている。
 そう言えば、中マスクと小マスクはしゃべらないな?

「ふん! それだけじゃないぞ? ロックウォール先生!」

 大マスクの下から、先生に出てきてもらうと、大マスクが持ち上げられ、鎖に引っ張られた2人がバランスを崩した。
 中マスクを袈裟斬りにし、返す刀で小マスクに横なぎを食らわせる。

「浅いか!」

 致命傷にはならないが、2人のマントがはだけて、フードも取れた。

「――女!? 角?」

 魔人族だったのか!

 大マスク野郎は手から糸のような物を飛ばして、天井や壁に付けてバランスを取り戻した。
 スパイダー男か!

「くそっ! 退くぞ! メルティナ!」

 大マスクが、俺に大量のナイフを投げつけ、俺が避けている隙に3人はシュッ! と消えた。
 謁見の間には、俺とフリス、大量の気を失っている人間が残された。

「転移しやがったか……。だが、メルティナだと? 確か魔王の妹じゃ無かったか?」

 ソイツがなんでこんな所に?


******城外のミケ


「《マルチプル・フレイムランス》! ほれぃ! 《フレイムブレード》! お~い、次が落ちるぞ~」
「「はーい!」」「おーーーーーー!」

 15いたドラゴンも大抵撃ち落とした。あと少しじゃな。
 落ちたドラゴンは、アニカとアニタ、それにキース達の軍が攻め立てておる。

 ……じゃが、1体だけ厄介なのじゃ。
 ドラゴンの背に人間が乗っておるヤツ、アレだけ他より大きいくせにすばしっこいの~。

「アニカ、アニタよ! 落としたドラゴンは、任せてよいかの~?」
「大丈夫でーす!」
「い~よ~」



 よし、飛んでおるのは人を乗せておるあの1体だけじゃ。
 じゃが、すばしっこい。我のかっこいい火魔法が避けられてしまう。どうしたものか……

「ミケちゃ~ん! お姉ちゃんがいいって言うから来たよ~」
「おう、アニタ。いいところに来たな。あ奴がすばしっこくての~、アニタよ、あ奴の後ろに転移して挟み込もうではないか?」
「わかった! 行くね!」

 シュンッ!

 アニタがドラゴンの後ろに転移したら、気を取られおった。

「今じゃ! 《マルチプル・フレイムブレード》、ついでに《マルチプル・フレイムランス》!」

 ギュォォオオオオオオ!

 よしっ! ちゃんとドラゴンに当たった。一気にゆく!

「むっ!?」

 ドラゴンは落ちてゆくが、あの人間は飛びよった!
 翼があるではないか! どんどん上へ行きよる。……逃げる気か?

「アニタ! 追うぞ!」
「うん!」


 何度かアニタに《フライ》をかけ直してもらいつつ追っておるが、追いつかぬ!

「アニタ、奴の魔法を消せるか?」
「やってみる! 《デリートマジック》」

 効果が無いようじゃ。

「あれ~? あの飛んでるの、魔法じゃないね~」
「そうじゃな、純粋に翼で飛んでおるな……」

 仕方ない、ユウトには控えろと言われておったが、こんな高さで誰も見ている気配はない……ちと遠いが、使うか。

「アニタ、奴を落とす故、見失うでないぞ?」
「わかった!」

「ん~~~! ほれっ!」


 ピカッ!  
 稲妻が走り、奴を捉える。

 バーーーーーーン!

「ぐわぁぁああああ!!」

 よし! 錐揉みしながら落ちていく。
 アニタはちゃんと奴を捉えておる。

 無事捕まえる事ができたようじゃ。

「アニタ、こ奴を縛る物はあるか?」
「うん! でも……魔力が少なくて、もう1回くらいしか《フライ》使えないよ?」
「何ー!? 戻るのに結構な距離があるぞ? 1回しか使えんとなると大変ではないか!」

 縛り方が解らぬから、とりあえずこ奴をグルグル巻きに縛って……後はどうするかじゃのう。

「……仕方ない。我が白狐になる故、アニタは我に《フライ》をかけて、お主は我に乗れ!」
「えっ? いいの? やったー!」


 結局我は、アニタを背に乗せ、縛った奴を咥えて飛ぶ事にした。
おえ~~~~~。
 我の背には、本当はユウトしか乗せたくなかったのじゃが、やむをえまい。アニタも仲間じゃしの……

 地上に下りて、我の姿に驚いておるキースに捕まえた奴を渡す。
 おえ~~~~~。ぺっぺっ!
 早うジュースが飲みたいのじゃ。

 おえ~~~~~!
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