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第2章 エンデランス王国の王権奪還を手伝う。

第82話 ドラゴン襲来と3人の侵入者。

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 俺が王城に書状を持った騎士を落としてから数10分。
 キース達と合流し、返事を待っている。

 すると、見張りに出していたミケとアニタが何やら叫んでいる。

「おーい! ユウトよー、何か来るぞ! 北じゃ」
「あそこー、なんか来てるよー。バサバサしてる~」

 バサバサ?

 アニカにも《フライ》をかけて、一緒にミケ達の元へ向かう。

「ん~? 何が来てるって?」
 
 まだ遠くてよく見えない。小さな粒が複数あるかなって感じだ。

「バサバサしてるよ~」
「ワイバーンじゃろか? いや、もうちっと大きいな」
「アニカ、見えるか?」
「はい。ドラゴンじゃないですか?」
「ドラゴン? ……大変じゃないか! 数は?」
「14~5と言ったところかの」

 ダンジョンのドラゴンサイズだったら洒落にならないぞ。

「ちょっとキース達に伝えてくる!」
「あ~! そんなに大きくないかも~」
「わかった! 一応伝えてくる」



「キースさん、アムートさん、ちょっと面倒事が起きたかも……」
「なんです?」

 2人はそれぞれの手を止めて、俺の方を向いた。

「まだ確定ではないですけど、こっちにドラゴンが向かって来てますね。14~5体」
「「ドラゴン!?」」

 周囲の人間も色めき立った。

「じっ、14~5体も……」
「いや、そんなに大きくないそうなんで、大したことないかも」
「た、大した事です! ドラゴンなど! たとえ小型でも町一つは軽く破壊されてしまいます。……それが14~5体なんて」

 キースとアムートは、自分の目で確認しようと、北の方角を確認する。

「ユウト、はっきり見えたぞ」

 ミケもやってきた。

「15体じゃ。小さいドラゴンじゃな。ダンジョンの最後のドラゴンの半分以下の大きさじゃ」
「じゃあなんとかなるか」
「なるんですか?」

 アムートが驚いて聞いてきた。

「俺達はダンジョンでブルードラゴンを倒して来たんで、その半分の大きさの奴らなら大丈夫でしょう。問題は数なんだけど」
「何?」
「ぶっ! ブルー!?」

「――数だけでは無いやもしれん。誰かが乗っておるぞ。ドラゴンの背に1人」

「い、いずれにしても迎え撃たねばならない! 今は包囲どころではない!」

 キースは、そう叫ぶと瓦礫がある通用口に最低限の見張りだけ置いて、ドラゴンを迎え撃つべく軍を編成した。
 俺達もドラゴンを迎え撃つ。
 ミケには、ドラゴンに乗ってる奴は魔王軍かも知れないから、雷を控えるように伝えた。
 まぁ、今まで散々ギルド内とかで撃ってるけどな……

 キース達が地上で隊形を整えている内に、ドラゴンが近づいてきたので、空中の俺達が、俺とミケの火魔法で撃ち落としを狙う。

 その時、俺達よりもはるか上空で、何かが王城方面に移動した影が目に差した。

「ん? なんだ? いや、今はドラゴンが先か」
「いや、何かいやな予感がするのぉ~。ユウトよ、ここは我らに任せて見て来てくれ」
「いいのか?」
「大丈夫じゃ。我も気になるから、こちらが済んだら行くからの」
「わかった。俺も何かヤバそうな気がしてきた。ここは頼むな?」
「おう!」


******王城


 ドラゴン襲来の報せ以降、謁見の間には、フリスの護衛のための騎士数人以外、武力を持たない人間しかいなくなった。
 騎士達は、ドラゴンの王城侵入を阻止すべく動き出していた。

「き、貴様らはいざという時、余の盾となるのだ! よいなっ!」

 返事をするものは誰もおらず、皆あきらめの表情をしている。

「何者だ!?」
「とまれ!」
「ぎゃー」

 開け放たれていた扉の奥、通路から叫び声が聞こえてきた。

「曲者だー」
「ひっ! こっちに来るな!」
「あ~!」

それは徐々に近づいてきている。

「な、何事だ! い、一番奥の貴様! 見て来い!」

 不幸にも扉に近かった文官が、仲間にも押し出されて、見に行くハメになった。

 ジャラジャラ 

 ジャラッ

 その文官が恐る恐る廊下を覗く。
 少ししかいない騎士が、フリスを囲んで何者かに備える。

「うわぁー!」
 
 文官は叫び声だけを残し、床に倒れた。

 ジャラジャラジャラ

 現れたのはマントを羽織った男。手には鎖を持ち、その鎖は後ろに続いている。

 ジャラッ! ジャラジャラ

 マントの男はフードを被っていて、更に白い仮面をつけている。
 男は、お構いなしに歩いてくる。

 ジャラジャラ

 男の後ろには、男よりも小さい者が2人続いている。それらは男の持つ鎖につながれていた。
 2人もまた、男と同じ仮面をつけフードを被っている。

「きゃー!」
「く、くるな! あっち行け!」

 男が鎖を持っていない方の手を軽く上げると、一番後ろの者が杖を掲げて魔法を唱える。
 すると、フリス以外の全員がバタバタと倒れていった。
 騎士達も倒れている。

「ひぃ! な、何者だ! 余を、こここ国王だと知っての狼藉か!」

 1人になったフリスが、恐怖を押し殺して強がった。
 男達は一言も発せず、フリスの言葉も無視して近づいてくる。

 ジャラジャラ

 鎖は、後ろの2人の首輪に繋がれていた。それが解かるほど近くに来たのだ。

「それ以上近づいてみよ! よ、余のこここ攻撃がああ当たるぞ!」

 フリスは自身の杖を身構える。

 ジャラッ!

「ふっ! 貴様がこの国の王だな。さっきからうるさいぞ」

 男が歩みを止めたと思ったら、初めて声を発した。

「何者だ! な、何が望みだ!な、何でもく、くれてやるから去れ!」
「貴様、今、助けが必要か?」
「何?」
「外の連中に囲まれているのであろう? 助けが必要か?」

 予想もしていなかった言葉に、フリスが戸惑っていると、男は更に言葉を続ける。
 後ろの2人は黙ったまま立っている。

「貴様が国ごと我が軍門に下るというなら、助けてやるぞ?」
「な、何?」

 男は繰り返す。

「貴様が国ごと我が軍門に下るなら、この状況から助けてやると言っている」
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