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第3章 カストポルクス、真の敵。

第94話 魔王城突入! ( 2/2 )

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******魔王城内


「今度はヒトと獣人が来たぞー! 扉も壊しやがった!」
「こいつらが門を爆破しやがったのか!?」
「どうでもいい! やっちまえっ!」

 俺とミケが突っ込んできたはいいが……
 城に入ってすぐは、大きな空間だ。エントランス大ホールって感じだ。
 長方形の大空間には太い柱が4本あり、その近くには魔人族の部隊が隊列を組もうとしていた。

 当然だが、どこに何があるか分からないし、想像以上に魔人がいる。
 むしろワラワラいると言ってもいいくらいだ。
 
 破って来た扉を《ロックウォール》先生で塞いでしまう。


「ぎゃー!」
「うわぁ!」
「こいつら強えぞっ!」

 俺とミケは、真ん中は適当にどっちがやってもいい事にして左右に分かれ、俺は手当たり次第魔人を斬り伏せている。
 同じ魔人でも、ガンダー軍の連中より手応えがないな。
 ミケも、火魔法や爪撃でバンバン倒しまくっている。

 怯えている魔人を1匹捕まえた。

「おい! 魔王とやらはどこにいる?」
「おおお、お、教えるかぁああ!」
「あっそ」

 ひと思いに死なせてやろうとしたその時、奥の方から矢が飛んできた。
 この間の大マスク野郎の投げナイフみたいに、毒付きかもしれないので、捕まえている魔人を盾にする。

「ぐふぅ! ……ううっ!」

 様子を見ると、口から泡を噴きながら息絶えた。
 やっぱり毒か。こいつらはこんな手しか使えないのか?

 このホールには中央奥に大階段、左右に細く曲がった階段があり、いずれも2階部分に続いている。
 1階の階段の裏にもまだまだスペースがあるらしく、魔人どもが「なんだなんだ?」とぞろぞろ出てくる。

「く~~~っ! キリがない! どこにこんなに潜んでたんだよ! 《ストップ》! 《マルチプル・ストームブレード》」

「うわぁー! あっちぃ!」
「いでぇっ」
「く、クソッ! 誰か! アレを呼べ!」

 魔人の1人がそう言うと、奥の方で「ピィッピィッ」と指笛の音がした。


******アニカ


「えいっ! ふぅ~」

 こっちは大体片付いたわ。アニタの方は?
 うわ~! ユウトさんが言っていた第3軍以外の魔人達もアニタに襲いかかっている!
 しかもアニタの足首に闇魔法の《シャドウバインド》がいっぱい絡みついている!

 アニタは上体で敵の攻撃を上手く避けたり、ナイフで捌いているけど、余裕はなさそう。ピルムも穴から飛んで戻って来て加勢しているけど、アニタとの連携はできていない!

「アニタ! 今行くからねっ!」
「お姉ちゃん!」
「アニタ、アレいくよ。ピルムは目をつむって!」
「うん!」
[えっ?]

「《フラッシュ》! ついでに《ライトフィルム》! 《ヒール》!」

 フラッシュの瞬間、アニタはちゃんと目をつむってくれた。

「あ゛~! 目がー!」

 魔人族には効いたようね!

[あ~! 目が~!]

 ……ピルムにも効いちゃったみたいね。
 アニタは弱まったシャドウバインドを、自分のデリートマジックで消して、無事に抜けられたみたい。

「アニタ、ピルム、いくよっ!」
「うん!」
[目ぇ~!]

 ピルムには目が治るまで空にいて貰って、私とアニタで数を減らしていくわ!

「くそー! たった2人! しかもガキだぞっ! 何やってんっだ!」
「おい! アレを呼ぶぞ?」
「ああ、頼む!」

 魔人達が何か話したと思ったら、その中の1人が指笛を「ピーー!」と鳴らした。
 ……何か呼んだの?

 ブブブブ……ブーンブーン……ブブブブブブ――

 穴の底の方から物凄い数の羽音が聞こえてきた。
 暗い穴から、黒い何かが……大群で、リッチのモヤのようにうねうねと形を変えながら飛んできた。
 もしかして……あれは……私の苦手な?
 そう思っている間にも、ソレはどんどん近付いてきた。

「ギャーーーー! ゴキブリ~~~~! 来ないでーーーーー」
「お姉ちゃん! アレ、ゴキブリじゃないよ!」
「へっ!?」

 アニタに言われて、恐る恐る見ると、ゴキブリじゃなかった!
 私はゴキブリが恐いだけで、別に他の昆虫は大丈夫なのだ。

「《ライトドーム》!」

 ライトドームで虫の大群の突進を受け止めていると、ピルムが翼の風圧で、虫を吹き散らした。

[アニカ様! アニタ様! これはスタブタートルと言って、尖った角で刺してきます! 大軍のままだと押し切られてしまいますよ!]
「……確かにカブトムシだ。 ありがとう! ピルム」
「ピルムちゃん、グッジョブ!」
[ぐじょぶ? ――それより、魔人達にいばらを出します! こちらに来て下さい!]


 ピルムの棘で魔人達も減らせた。
 カブトムシ達がまた集団になろうとしていたので、ピルムの風圧やアニタの初級風魔法で、吹き飛ばして、個別に数を削って行った。

「この調子でどんどん減らしていこう!」
「おー!」
[はい!]


******ユウト


「ピィッピィッ!」

 指笛?

「ミケ! コイツら、なんか呼んだっぽいぞ!」
「うむ! 何か来る!」

 矢をさばきつつ魔人の相手をし、辺りをうかがっていると、階段を上った先や、ホール奥の魔人族が出てきた辺りから嫌な音が聞こえてきた。

 チチチチチッチュチュチュチュチチチッ! ドドドドドドドドド――!

 この音……
 俺がまだ小学校の低学年だった頃、幼い可愛い俺は家に1人でいて、リビングで横になりながらおやつのドーナッツを食べていた。
 それをどっかから出てきた1匹のソイツとの、長時間の睨み合いの末に奪われ、泣かされた苦い記憶がフラッシュバックする。
 それ以来俺は、そいつの事が大嫌いになり、未だに恐怖心がある。


 チュチュチチチッチチチチ! ドドドドドドド――

 単体では軽いはずのソイツが、ドドドと音を響かせながらやってくる。
 そう! 奥から床を埋め尽くすように駆けて来て、今まさに姿を現したそいつは!

「ギャーーーーー! ネズミ~!!」

 ネズミ共は、2階からも現れ、階段を使わずにそのまま飛び降りて来る。
 黒や灰色の身体! 口を開き強靭な前歯を俺に向け! 額には真っすぐ伸びた角!
 ――ん? 角?

「角があるならモンスターだ。モンスターなら恐くないぞ。《フレイムフィルム》! 《フレイムウォール》!」

 俺の炎の防護膜や、炎の壁に、次々とネズミ達が突っ込んで燃え上がって行く。
 ミケも魔人を巻き込みながら、ネズミを燃やしていっている。

「ヒャッハァー! 燃えろ燃えろ~!」

「ユウトよ! いい感じに燃やしているところ悪いが、コイツ等の数は未だに多い。これでは時間がかかってしまう。じゃから、お主は先に行け!」

「は? 大丈夫なのか?」
「当たり前じゃ! 1人になって、敵に囲まれた方が、我がやりやすくなるわ!」
「ああそうか! じゃ頼むぞ?」
「うむ」

 1階をミケに任せ、俺は2階に行く。
 1階の奥からは魔人が出てきているのに、階段を上った先にいる魔人は下りてこない。
 何かを守っているんだ!
 魔王の城で守ると言えば……魔王しかいない!

 2階に向かった俺の背後には、さっそく雷の音がとどろいていた。
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